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「現代短歌パスポートシュガー1しらしら号」の感想(#文学フリマで買った本の感想 #4)

「現代短歌パスポート1シュガーしらしら号」は、2023年5月に発売された歌人10名による書き下ろしの新作短歌アンソロジー歌集。

あとがきも解説も作者コメントもないストロングアンソロジー。

最高。

以下、それぞれの作品で気になった歌を。

レコードに針落とすとき生き返る時代を選ぶような目つきだ/榊原紘

「Classic」

お互いの一番じゃないことくらい明確なことがほかにもほしい/伊藤紺
家族とは宇宙と思う思うけどそれは大豆くらいのサイズ/同
「男なんて」って思ってしまうのはすごく悲しいことだと思った/同

「雪の匂い」

緊急停止ボタンを押さずに済んでいるたくさんの人生で混み合う/千種創一
目を閉じていても線路の轟音で河だとわかる眠りの浅瀬/同

「White Train」

着膨れた私が一番うつくしい笹かまぼこのような影して/柴田葵
シーリングライトの下でパンを買う世が世ならマンモスを狩る/同

「おさしみ」

親族の墓のあいだで踊っても陽光それはそれはまぶしい/堂園昌彦

「春は水さえとろけさせる」

ぬいぐるみを抱いて夜道を走るのに理由も結末もないんだぜ/谷川電話

「夢を縫う、たき火を保つ」

終点で降りると夜のバス停で、夜のバスがそこから引き返す/吉田恭大

「フェイルセーフ」

春闘も夏闘も秋闘も冬闘もしてるのに戦後のわたし/菊竹胡乃美
レイア姫の戦う絵柄が頼もしい生理ポーチ・イン・マイ・バッグ/同
自己肯定感を他人に求めちゃう口裂け女の口角炎/同
かさかさの唇でたどる今までの努力と選択への愛撫/同

「火のぬいぐるみ」

寺の門ばりに大きな親切に小さく小さくサンキューを言う/宇都宮敦

「羊毛期の到来(ウール、ウール、ウール)」

とんでもない手品で地球が消えるとき笑ってくれそうで好きだった/初谷むい
また会おう。遠くへ行ってもだいじょうぶ。道ってそういうふうにできてる。/同

「天国紀行」

まさに「現在の」現代短歌を知るためのパスポートとなる、ラインナップも内容も濃厚な一冊だった。

シリーズということなので、今後の展開にも期待したい。

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