中森温泉

ex.中型犬。温泉になりました。

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  • 短歌五十音

    • 36本

    「短歌五十音」は、中森温泉、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇるが五十音順に歌人を紹介する記事です。毎月第一〜第四土曜日に更新予定。 画像は桜庭さんよりいただきました。

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    歌人・中森温泉が短歌とエッセイと秘密にしたいほどとっておきのお店をご紹介する連載。不定期更新のため、マガジンのフォローを是非。

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自己紹介

はじめまして、中森温泉と申します。 プロフィール1984年、新潟県生まれ。東京都在住。 2021年から短歌を作り始める。2022年から塔短歌会所属。 2022年、第2回あたらしい歌集選考会木下龍也さん10人10首選。 2023年11月、筆名を「中型犬」から「中森温泉」に変更して、人間になる。 連載中短歌五十音 初夏みどりさん、桜庭紀子さん、かきもち もちりさん、ぽっぷこーんじぇるさん、中森温泉の5人のメンバーが週替りで、五十音順に一人の歌人、一冊の歌集を紹介。 秘密麺

    • 塔2024年10月号気になった歌10首③

      雨上がりで湿気の含んだ空気を通して差し込む朝日。爽やかな初夏の朝に素朴で爽快な菖蒲の香りが漂ってく。平易な言葉を使った丁寧な描写で誰でも実景が立ち上がってくるのが巧い。上の句の「あ」音の頭韻も心地よい。 「石段」→「鯛焼き」→「二人」→「夕立」というカメラワークがおもしろい。「夕立」は、予想外の雨で雰囲気が台無しになってしまうネガティブなものとしても、夕立が降ることで二人の時間が長く続くというポジティブなものとしても存在しうる。描写に徹したことで解釈のゆとりができていて、味

      • 短歌五十音(ゆ)雪舟えま『たんぽるぽる』

        ふきとぶ『たんぽるぽる』は、この4首から始まる。 この4首を読んだとき、意識だけでなく、身体ごと吹き飛ぶような感覚に襲われた。 パーツごとの言葉の意味はわかるのだが、それが組み合わさったときに、とたんに論理的ではない世界に迷い込む。 その世界は、どうも今いる世界と構成する物自体は同じようだ。 「空港」「帽子」「東京」「江東区」、それぞれ実際にあるものだし、それぞれに附随したイメージや実感もある。 読者である私は、歌の世界の主体の思考の流れに身をまかせて、別の世界を浮遊していく

        • 塔2024年10月号気になった歌10首②

          「さびしき語感」という率直な表現が、「乾燥花専用」という言葉の印象を強くする。乾燥花そのものが乾いているだけでなく、カ行サ行の多い言葉に確かな寂しさがある。一首全体を包む静謐な雰囲気も内容と合っている。 西新井大師に参拝をした一連。車のナンバーで遠方から参拝していることがわかる。遠方にある寺院にわざわざ通っていることに何か重い祈りがあるのではと勘ぐっている主体の発想に、そうしたことを考えることも含めて旅情がある。 楽天のジェット風船は、プロ野球チームの楽天イーグルスの試合

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          「茂吉を新しく読む」覚え書き

          「茂吉を新しく読む」(間瀬敬著、不識書院、2021)を読みました。 印象に残ったところを書き残します。 「むきむき」は「ムキムキ」だと思って、茂吉には、電車がいっぱい集まってくるのが、筋繊維が集まるマッチョボディに見えてるとか、アララギ、エクストリームすぎるぜ、と思っていたら、「むきむき」は「めいめいにさまざまな方向を向いていること」の意味のようだ。でももう、マッスル短歌にしか読めない。そして、超かっこいい。 単純化されることで余情を生むという指摘がとても興味深い。 む

          「茂吉を新しく読む」覚え書き

          塔2024年10月号気になった歌10首①

          軽妙な話し言葉が定型にぴったりはまっている。自動販売機にライトがつく瞬間がさほど暗くなる前の時間であったことへの小さな感情の動きを過剰にも過少にもならないように詠んでいるところに歌に対する真摯さがある。四句目の句割れによって印象的なリズムが生まれている。 大胆な妄想の妙。車掌ではないわたしが車掌になることと、現実の電車ではありえないティラノサウルスの通過を待つことという、二重に妄想を重ねられることで妄想の飛距離が大きく出ている。大きく字余りしている上の句が壮大な妄想に似合っ

          塔2024年10月号気になった歌10首①

          塔2024年8月号気になった歌10首③

          農家の高齢化などにより耕作放棄地は増える一方。そうした中で、農地にソーラーパネルが設置されている光景を見ることが多くなった。ソーラーパネルの人工的な光の反射に対して、農地本来の使われ方である水田のきらめきは、まさしく自然の美しさを象徴するもの。都市からの侵攻に負けない農村の力強さも感じる。 アーティストやアイドルのコンサートは通常「見る」ものだが、その行為に「会う」という言葉をあてがっている主体は、寂しさを埋めようとしているよう。一般的に孤独を感じやすい夜だけでなく、昼にも

          塔2024年8月号気になった歌10首③

          短歌五十音(む)紫式部『紫式部集』

          紫式部集とあわせて読みたい現代短歌9選!大河ドラマ「光る君へ」、見てますか? 紫式部の一代記が描かれている大河ドラマでは、一見華やかな宮中を中心に平安時代を生きる人々が、とても人間臭く描かれています。 物語の中心となる紫式部(まひろ、藤式部)は、とりわけ魅力的で、現代を生きる私たちにもたくさん共感できる場面があります。 紫式部は、『源氏物語』を作者であるとともに、和歌の名手。 そんな紫式部の和歌には、人間味あふれた歌がたくさんあります。 本記事では、時代を超えて私たちの

          短歌五十音(む)紫式部『紫式部集』

          この夏ずっと考えていた歌のこと

          Xでこの歌がタイムラインに表示されて、ブックマークしたのが今年の6月。 それ以来、ことあるごとにこの歌の意味をずっと考えていたのだが、そうこうしているうちに、夏が終わってしまった。 「コロッケを温めて寝る」が気になって仕方がない。 一度温度が下がってしまったコロッケを美味しく食べるために、電子レンジで温める光景が浮かぶ。 コロッケを温めたあとは、そのあとすぐに食べるのが筋だが、主体は寝てしまう。 後半のやりきれない独白と合わせて読むと、あまりにも疲れてしまって温めたことを忘

          この夏ずっと考えていた歌のこと

          塔短歌会下位2.7%歌人、都内No.1家系を食う。(秘密麺歌倶楽部#2)

          おそろいのアメリカ国旗のTシャツで砂場を走る鬼の兄弟/中森温泉 はんせいぶんはんせいぶん 3ねん1くみ なかもりおんせん ぼくは、2022ねん1がつから、とうたんかかいにかよっています。 とうたんかかいでは、まいつき、10このたんかをつくっておくります。 そうすると、せんじゃのせんせいが、そのなかからよいものをえらんで、ほんにのせてくれます。 こないだの2024ねん9がつごうでは、ぼくのうたが3このっていました。 10このうち、3こしかよいものがなかったことはとてもよく

          塔短歌会下位2.7%歌人、都内No.1家系を食う。(秘密麺歌倶楽部#2)

          うっすらとした虚無感(くろだたけし歌集『踊れ始祖鳥』書評)

          うっすらとした虚無感(くろだたけし歌集『踊れ始祖鳥』書評)歌集全体にうっすらとした虚無感が漂う。 そして、その空気感は、本書に収録された短歌が制作された二〇二〇年前後の日本社会全体の雰囲気である。 当たり前のように仮定される「日常に刺激を求めなくなる」という態度は、二〇一〇年代半ばごろからブームになった「ていねいな暮らし」の延長線上にあるが、刺激を求めなくなるのは、自由意思によるものなのか、低賃金などにより刺激を求め「られ」なくなったのか、はっきりしない。ただし、刺激の象徴

          うっすらとした虚無感(くろだたけし歌集『踊れ始祖鳥』書評)

          塔2024年8月号気になった歌10首②

          植物の植えてある鉢の底には、根がびっしりとつまっている。鉢ではなく、農地や庭で育っていれば長く伸びていた根が、行くゆてなくがんじがらめになってしまっている光景が印象的。その根に「きみ」と呼びかける主体は、その姿に自分の姿を投影しているよう。 一見裏表がないようなトイレットペーパーだが、表面は若干なめらかで、裏面は若干ざらっとしているという違いがある。「犯罪について考えているとき」にそのことが気になっているのは、犯罪を犯してしまうに至った過程には、いくつもの分岐があって、だれ

          塔2024年8月号気になった歌10首②

          短歌五十音(へ)辺見じゅん『水祭りの桟橋』『天涯の紺』

          父母を詠む情念辺見じゅん(1939-2011)は、歌人であり、ノンフィクション作家。 映画化された『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』や『男たちの大和』の著者としても有名である。 辺見の父は、角川書店を設立した角川源義(1917-1975)。 源義は、自身も俳人であり、短歌総合誌『短歌』の創刊者でもある。 辺見の母は、辺見が小学校4年生のときに離婚し、その2年後に再婚した照子が辺見の育ての母となる。 この3人の関係性については、源義が、師事していた民族学者・国学者の折口信夫に破

          短歌五十音(へ)辺見じゅん『水祭りの桟橋』『天涯の紺』

          塔2024年8月号気になった歌10首①

          ウドは独特な食感と風味のある山菜。自生しているもののほか、栽培することも可能。栽培したウドの収穫前には、畑から株をいったん掘り下げて、もみ殻の中に移植することで、柔らかく食べやすいウドとして栽培が可能。「掘り上げる」という言葉に、手間をかけつつ丁寧にウドを収穫する様子がうかがえる。和え物に天ぷらにウドを楽しむ姿から、春を迎えた喜びが伝わってくる。 なかなかインパクトの強い歌。やどかりは、自ら背負う殻に一人で住んでいるわけで、主体はやどかりに生まれ変わったとしても、同じ家に住

          塔2024年8月号気になった歌10首①

          楽天モバイル哲学と基準ラーメン(秘密麺歌倶楽部#1)

          深海にほどけた身体ただよって遠くひろがるクレヨンの青 楽天モバイル哲学楽天モバイルはつながらない。 飲食店で、地下鉄で、都会の真ん中で、突然つながらなくなる。 そんな楽天モバイルに、けしからん!使えない!解約だ!と騒ぐのは、修行が足りない。 なぜつながらないのか、どこならつながるのか、なんてことを考えるのも、浅はかである。 ここで、考えるべきことは一つ。 私は、二十四時間三百六十五日、通信回線がつながる必要のあるほどの価値のある人間だろうか、ということである。 「おれっち

          楽天モバイル哲学と基準ラーメン(秘密麺歌倶楽部#1)

          『たんたん拍子vol.6』の感想

          たんたん拍子が発足して5周年! 毎回、連作と連作評を合わせて読めることがとても楽しく、そして勉強になります。 今回も、短歌も企画も興味深かったのですが、その中でも気になった歌を1首ずつひかせていただきます。 花屋の前を通ったときに花の匂いがすることは当たり前のことだが、そのことがことさら強調されるのは、当たり前のこと、いつもと同じことに主体の心が動いたからだろう。下の句から、主体がずっと「さみしさ」を抱えて生きてきたことが明かされ、さらにその「さみしさ」がずっと続くことを覚

          『たんたん拍子vol.6』の感想