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第5回 野生納豆菌の「つと(わらづと)納豆」と納豆菌(後編)

(後編です)
 前編では市販納豆菌の凄さと野生納豆菌によるつと納豆の作り方をお話ししました。
 後編では、前編を踏まえた納豆菌そのものの説明と、納豆の機能性について簡単にお話しします。

前編はこちら


納豆菌について

 納豆を製造する際に使われる「納豆菌」は、グラム陽性細菌で桿菌の枯草菌(バシラス ズブチリス:$${\textit{ Bacillus subtilis }}$$)に属する微生物です。日本では特に、大豆の上で繁殖してネバネバした糸を引く(=糸引き納豆を作れる)特徴的な菌株を「納豆菌($${\textit{ Bacillus subtilis }}$$ var. $${\textit{ natto }}$$)」と呼んで区別しています。
 ただし、納豆菌と枯草菌の遺伝子レベルでの違いは見つかっておらず、「納豆菌は枯草菌の一種」とする説もあります。

 枯草菌は名前の通り、自然界では枯れ葉の上などに広く分布しており、培養すると枯れ葉に似た独特の匂いがします。
 つまり、「糸引き納豆を作れる枯草菌を特別に納豆菌と呼んでいる」と考えるのが正しいです。

「納豆キナーゼ」はなにもの?

 納豆には「納豆キナーゼ」という血栓を溶かす成分が含まれていると言われますが、名前に若干の誤解があるかもしれません。キナーゼ(kinase)リン酸化酵素のことで、血栓を溶かす酵素はプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)に分類されます。

 納豆菌が分泌するタンパク質分解酵素「ズブチリシン(Subtilisin)」は、試験管内($${\textit{ in vitro }}$$)の実験では血栓を溶解する効果が確認されています。しかし、体内($${\textit{ in vivo }}$$)で同様の効果があるかどうかは、現時点では明確に証明されていません。

 また、納豆キナーゼはズブチリシンと深い関連がある酵素であり、そのアミノ酸配列には高い類似性が見られます。ただし、完全に一致しているかどうかには議論の余地があり、研究によるさらなる検証が必要です。

 さらに、ズブチリシンが腸から吸収されて血液中に到達する可能性が示唆されているものの、これもまだ研究段階であり、体内での作用については解明が進められている状況です。

 現段階では、納豆菌由来の酵素に血栓溶解作用がある可能性はあるものの、体内での具体的な効果については引き続き研究が必要とされています。

 つまり、「納豆キナーゼズブチリシン」であることは確かですが、体内で血栓を溶かすかどうかはまだ科学的に確定していないのです。

納豆と薬の相性

 納豆には血液凝固を防ぐ薬「ワルファリン(Warfarin)」と相性が悪い場合があります。ワルファリンはビタミンK依存性の凝固因子を抑えることで効果を発揮しますが、納豆にはビタミンK2が多く含まれているため、薬の効果を弱めてしまう可能性があります。

 そのほか、一部の免疫抑制剤や抗生物質との相性も注意が必要です。これらの薬を服用している場合、納豆の摂取については医師に相談することをお勧めします。

納豆の健康機能

 納豆には以下のような健康効果が期待されています:

1. カルシウム(Ca)の吸収を助ける

 納豆のネバネバ成分である「ポリグルタミン酸」は陰イオン性で、カルシウムイオン(Ca²⁺)を包み込む性質があります。このため、腸内でカルシウムが吸収されやすくなると言われています。また、ビタミンK2もカルシウムの吸収促進に役立ち、骨の健康に寄与します。

2. プロバイオティクス効果の可能性

 納豆菌の芽胞は小腸上部と下部の微好気的環境で発芽し、乳酸菌のようなプロバイオティクス効果をもたらす可能性があります。

3. 大豆由来の栄養素

 納豆には大豆由来のイソフラボン、サポニン、納豆特異的イソフラボンなど、さまざまな健康成分が含まれています。

納豆と納豆菌まとめ

 納豆は、その独特な発酵プロセスや栄養価の高さから、健康的な食品として愛されています。ただし、薬との相性や体質により注意が必要な場合もありますので、自分の体に合った食べ方を選びましょう!
 私は、なんでもバランスよく食べることが大切と考えています。


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