歌いたい歌をうたえ
スタッフの接待も無事終わり、
土日は家でゆっくりしていた。
ごろごろしていると、突然、
「おまえのカラオケは、修行が足りない」
と夫からダメ出しをくらった。
なんだと?
二次会のカラオケで、
わたしが歌ったのは、
美空ひばりの「愛燦燦」だけである。
うちのスタッフは、30歳から70歳までの
年齢で構成されており、30代の子たちは
今時の流行りの、早口の歌をうたうので、
わたしは年配の方たちのために、
「昭和枠」
を貫いている。
あと、気をつけていることは、
「懐かしの御本人映像」
を見ながら歌える、というところで
選曲している。
あくまで接待カラオケなのだ。
「愛燦燦、だめだった?」
と聞くと、夫は、
「愛燦燦はだめじゃねえ。
でもあれは口先だけだった。
これを歌うなら、普段から練習しておけ」
と、言われたので、まあ、うん、そうだ。
と思う。愛燦燦はすきな歌だけど、
確かに普段から聴いてはいない。
夫は、接待だろうがなんだろうが、
「歌いたくねえ歌は、俺は歌わない。
心がこもらないからな」
というのがポリシーだ。
彼は、流行りの歌を好んで聞かないので、
選んだ歌は、みんなの知らないうた、
になる場合が多いのだが、
「みんな知らなくても、人を魅了させる歌」
をちゃんとセレクトする。
今回は、レキシの「狩りから稲作へ」を
歌い、スタッフ30代から70代までの
腹筋を崩壊させていた。
この歌は、笑って泣ける、名曲なのだ。
いとうせいこう(レキシネーム:足軽先生)は
やっぱりすごい。
「タカユカシーキ ネズミガエーシ」
とコール&レスポンスしている時、
人類は、何もかもがどうでもよくなる。
年長のスタッフ(うちの会社の実質のドン)に
「夫婦で、なんかデュエットできないの?」
とリクエストされ、おのののの、とたじろぐ。
夫と、デュエットなんて、したことないし、
したいと思った事もない。
夫も、めっちゃ嫌そうな顔をした。
しかし、接待接待。
夫は真顔で、何やら選曲し、わたしはマイクを
持たされる。
画面に、
「日本の人」
と映し出された。
ああ。
ロンリーチャップリンや、銀座の恋の物語
を、たぶん期待されていたと思うが、
ごめんなさい。
この男は、自分が歌いたい歌しか、
歌わないので、そのどちらも歌えません。
しかし、この歌、デュエットだったか、
と高速で思い返す。
そうだ。サケロック時代の星野源と、
寺尾紗穂が、デュエットしていたな。
わたしと夫がすきな歌だ。
昔よく、車で聴いていたので、
子どもたちも歌えてしまう。
この歌は、昔、細野晴臣と、忌野清志郎、
演歌歌手の坂本冬美が、一時期3人で
組んでいたユニット、「HIS」の歌で、
作曲は細野晴臣、作詞は忌野清志郎。
いわずもがな、の名曲である。
それを、サケロック時代の星野源と、
寺尾紗穂が、カバーしたのだ。
一度だけ、HISが歌番組に出たのを見た。
3人とも学生服を着ていた。
セーラー服の、坂本冬美。
だれのうた?しらなーい。
と、みんなは明らかに不服そうだが、
すみません。歌います。
最後は誰も聴いていなかったので、
わたしと夫は、結局、肩を組んで歌った。
でもこの歌、うちの会社っぽくて
いいじゃない。
うちに来ている子ども達のことを
歌っているじゃない。
勝手に社歌認定。