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ウィスキーのお風呂はちょっとむりだわ

「0.5の男」というドラマをみた。
面白かったので、いっきみした。
主演は、松田龍平。わたしはこのひとの
演技がすきだ。

以下ネタばれもあるから、今からみるつもり
のかたはUターンで。

引きこもりのおじさん(松田)と、その家族の
話だ。
おじさんの姿を、4年前に、動けなくなって
しまった、boy(15歳息子)の姿に重ねて
見ていた。
あ、boy、15歳になりました。お陰様で。
ありがとうございます。

おじさんは、昼夜逆転で、
「昼の日差しを浴びると溶ける」
といい、外に出るのは
夜コンビニに、じゃがりこ(サラダ味)と
Monster(ジュース)を買いに出る時だけだ。

母からのポストイットを全て捨てずに
残していて、その内容から、引きこもり期の
初めが、なかなか大変だったことが
伺い知れる。
この生活も、だいぶ長いだろうことは、
その紙束の量からわかる。

同居の父母と一緒に食事もとれない。
そんなおじさんが、両親と妹一家と、新しい
おうちに住むことになって、、、というお話。

boyが一番弱ってしまったとき、つまり
学校に行けなくなった、4年前のことを
思い出す。

boyは、ひとりで何もできなくなった。
着替えも歯磨きも、お風呂も入れなくなった。
かろうじて、食べることと、眠ることが
出来たので、それだけが救いだった。

全て、自発的には出来なくなり、おひさまが
出ている間は外に出られなくなったので、
夜、車通りもほとんどなくなった道路に
一緒に出ては、月明かりの下で、
歩いたり走ったり、スケボーをした。

おじさんが、
「日差しを浴びると溶ける」
と言ったのは、たぶん比喩でなく、
ほんとうに切実なイメージだと思う。

ひとは極限まで弱ると、風呂に入れなくなる。
なんで?風呂気持ちいいやん。
一瞬でも、入るとさっぱりするやん。
絶対入ったほうがいいやん、
と、思うのは、心身ともに健康なひとの
言い分だ。

弱って風呂に入れなくなった当事者の話を
読んだ事があるが、このようなひとにとって
風呂は、「健康な人が、ウイスキーの中に
体を沈めるようなもの」なのだそうだ。
つまり刺激が強すぎるのだ。

boyは1週間はゆうに、風呂を拒否した。
どうしても、入ることができずに、
毎日何十分も、うんうん悩んでいた。
何をそんなに悩んでいるのか、全く
理解できなかった。

わたしだって、ウイスキーの中に身体を沈めて
みろと言われたら、そうなると思う。

ドラマの中で、おじさんが熱心にしている
オンラインゲームがあり、劇中にもよく
画面が登場する。おじさんはそのバーチャルの
中では、英雄だ。
おじさんがゲームをしている場面を観ていると
側にいたboyが、

「あっ 第五人格だ!なんで!?
これ今、俺がやってるゲームだよ」

と、驚いて言った。
そうか。君がよなよな、誰かとお話しているのは、このゲームだったか。
現実にあるゲームが、ドラマの中に
登場するのは、珍しいことだ。
このドラマ、他にも、

じゃがりこ、Monster、zozotown

など、実在するものがそのまま使われている。

このドラマで、おじさんと同居を始めた
中学生の姪と、保育園児の甥っ子がいて、
彼らが、おじさんの生活を変えていく。
否応なしに。

甥っ子のかわいさ、で、だいぶこのドラマが
引っ張られている、と思う。
とにかくかわいいのだ。この保育園児が。

甥や姪に対する愛情、周りのひとへの愛情が、
彼の行動を変える。
というと、急に安っぽいヒューマン
ハートフルストーリーに聞こえるけど、
そこを露骨に感じさせないところが、
このドラマのすごさだな、と思う。

つまるところ、やはり彼を変えたのは、
「愛」だった、というしかない。

ひとがげんきになるにはやはり、
時間がかかるもんだな、と思う。
げんきを失うのにかかった時間が、
げんきを取り戻すのにかかる時間だ、
と言われたりもする。

引きこもってしまうことや、
学校や仕事に行かないことは、
周りが思っているより、たぶん、
たやすいことではない。

boyもあれから4年。
いまはおひさまの下で外出できるし、
お風呂も入れるようになった。
アトピーも完治した。
おともだちと遊べて、食べて寝られる。
とりあえず、そこまではきた。

まだまだ、学校のことは難しいけれど。

4年。長いようにも感じるが、一生のうちの
一時期のことだった、と、振り返れば
思う日がいつか来るんだろう。

boyの冒険の旅はつづく。





おじいちゃんさま
イラスト使わせてもらいました。
ありがとうございました!

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