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びんぼっちゃまのお買い物

だいたい、夫はネット販売で上手にモノが
買えた試しがない。
直近では水筒。

「俺はでかい水筒が欲しい」

と言って、800ml入るでかい水筒を
ポチッと購入した。

届いてみたら、思ってたよりめちゃくちゃ
太かった。
直径が大きすぎて、車のドリンクスタンドに
入りきらなかった。

運転中、足の間に挟んだり、お膝に乗せたり
とにかく置き場に困る毎日に辟易した夫は、

「これはもういやや。もうちょっと小さいのを
買う」

と言って、またポチッと購入。

心配だ。
車のドリンクスタンドの直径を測っていれば
いいが。

届いた水筒はこれ以上ないというくらい
シンプルな、金属の筒だった。
ボタンを押してパカっと飲み口がでてくる
やつではなく、ふつうにフタを手回し式だ。
飲み口とかもなく、開けたら空洞。
ほんとに、ただのフタ付きの筒。

大きさは良さそう、これならドリンクスタンドに入るだろう。

「これ、いくらしたん」

と聞くと、

「5千円」

と夫。
え。
高くない?

「いやいやいやいやいやいやいやいや。
なんでこれがそんなすんの?
水筒なんて、2千円くらい出せばいいの
買えるよ?」

と私。
いやいや言い過ぎて、やいやい言って
しまった。

「ばかすぎる。」

とboy(息子)。

「あたまがおかしい。」

と、babyちゃん(娘)。

この人、物の相場をしらないのかしら。
ブランド物ならともかく、5千円の水筒を
探す方が難しい。

というか、あるんだろうが、
うちの経済状況では、5千円の水筒は
畏れ多い。それを子らも知っているからだ。

確かに、メーカーは天下の老舗日本企業、
タイガー様だ。
タイガーが社運をかけて、製造部門の叡智を
尽くして作った品であろうか。

凝った作りでもなく、使いやすさにこだわった
感じもない、ということは、
材質か。材質にひみつがあるのか。

「なんか、すごいいい材質なのか。」

と聞く。とにかくプレゼンして納得させろ。

「・・・いや、わからない。」

と夫。もうこれ以上話にならない。


だいたい、夫はびんぼっちゃまなのだ。
お金がないのに、高いものを買おうとする。

母子家庭で、お母さんは苦労されただろうが、
お金で苦労させたくない、という思いで
育てはったんやろう。
お金がなくても、無理して高い物を買ってもらっていたのだろう。


おかげさまでびんぼっちゃまの出来上がりだ。

びんぼっちゃまを知らない世代のために
貼り付けておく。
出所は、ギャグ漫画「おぼっちゃまくん」だ。

小林よしのり作 「おぼっちゃまくん」

びんぼっちゃまくんは、昔お金持ちだったが
落ちぶれてしまって、何人もの兄弟たちと
貧乏長屋に暮らしている。

気持ちだけはお金持ちのままなので、気位も
高く、前からみるとおぼっちゃまなのだが、
ご覧のとうり、前だけなのだ。
後ろ姿は、パンツさえ履いていない。

口癖は、
「おちぶれてすみません」だ。

ちなみに主人公、御坊茶魔(おぼうちゃま)
の友達なので、これでも小学生である。

昔はこんな、放送ギリギリの下ネタギャグ
マンガがふつうにテレビで放送されていた
よなあ。学校から帰ったらみんな見ていた。

今ならとても放送は無理だろう。
お父ちゃまとベロベロ舐め合ったりするし、
挨拶は「ともだちんこ」だ。
今の時代ならいろいろ引っかかるところが
満載だ。

いつからだろう、こんな
窮屈な世の中になってしまったのは(遠い目)。

…ではなくて、びんぼっちゃま。
夫のびんぼっちゃまエピソードは他にも沢山
あるから、また小出しにしていく。

何日か、そのすばらしい水筒を使ってみた
夫に、水筒、どう?と聞くと、

「可もなく、不可もない。」

と返ってきた。

うん。まあそうだろうね。

しかし、天下のタイガー様の叡智を尽くした
であろうこの水筒、なにかとんでもない、
よい素材で作られていると、私は信じている。

健康になれる、とか。

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