45、ケトン体の話
結構長い期間にわたってフィトケミカルの話題を取り上げて来ましたので、一旦区切りをつけて別の話題を紹介します。
まず、普段の私たちはグルコース(つまりブドウ糖のこと、糖と略します)を使って代謝をしています。そして体を動かしたりするためのエネルギーを作っているのはご存じですよね。そしてグルコースの量が減ってくると、肝臓や筋肉に蓄えているグリコーゲン(つまり、グルコースが結合して高分子になったもの)を分解してグルコースに戻して、代謝に活用します。ただ、このグリコーゲンの量はそれほど多いわけではありません。
肝臓のグリコーゲンは12時間から18時間ほど糖質をオフにした生活をしていると、枯渇してしまいます(もっと少ない時間で枯渇するという説もあります)。一方、筋肉の方に蓄えられたグリコーゲンは、激しい運動などの時に消費されます。グリコーゲンが無くなると代謝が出来ませんので、その代替エネルギーとしてケトン体を作ります。
臨床で言うケトン体とはアセトン、アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸の三つですが、生体内でのケトン体ではアセトン以外の二つを指します。アセトンは揮発性が高いので、血中濃度というよりも呼気の方から体外に出ていってしまいます。そのため血液中には存在していないので、血液検査での測定対象にはなってはいません。
ケトン体は脂肪酸から作られます。そのもとは中性脂肪なのですが、そのままでは活用できませんので、肝臓で変換されてアセチルCoAという物質になります。ここから更に進んでアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸というケトン体が作られるわけです。そして血液に乗って全身に運ばれて、グルコースの代わりにエネルギーを作り出す材料として活用されます。
こういった一連の反応の流れは、グルコース(この場合は糖質といった方が良いかもしれません)が無い時の代謝として知られているのですが、食事としての糖質の摂取を制限する方法で行うダイエットの場合でも、このような状態の反応が見られます。そのため、当然ですが血中のケトン体の濃度は上昇します。
通常の血中ケトン体濃度は、およそ 100μmoL/Lほどです。この例では「マイクロ(μ)moL/L」で表現していますが、「ミリ(m)moL/L」の表現が使われていることもあります。その場合、数値が1000倍違ってきますので、単位にご注意ください。
このケトン体(アセトンは除きます)ですが、一般に食前は血中濃度が高くなり、反対に食後は低くなるという傾向が見られます。考えてみれば見当がつくと思いますが、食前の空腹時だとグルコース(糖質)は少なめになっていますので、ケトン体が増えて生体を動かす代謝のエネルギーに使われようとしているんじゃないかと予想できます。
また、食後は糖質が十分に補給されたのでそちらを使って代謝のエネルギーを確保できるので、ケトン体の方は使わないので血中濃度が下がってきた、そのように考えることが出来ます。
さらに、深夜の午前0時から1時頃には早朝の数倍近い数値になるともいわれています。この辺りは測定してみないと分かりませんが、もし機会があれば測ってみたいと思います。