【米大統領選挙前特集】現実を無視する者が足元をすくわれた2016年米大統領選挙
はじめに
2020年米大統領選挙も近くなってきたので、改めて前回の2016年米大統領選挙の動向を振り返りたいと思いました。その過程で現実を無視した主要なメディアと民主党支持表明者の楽観的な予測が打ち立てられていたことを思い出したので、そのことも交えての話になります。無料公開内容では、選挙期間中の一連の流れを説明し、有料欄は選挙前の動きや選挙で起きた各方面の動きをより詳しく説明します。
出馬表明
時は2015年6月16日(米国時間)、トランプタワーのエレベーターから舞い降りたドナルド・トランプと妻のメラニア夫人を待ち受けていた群衆は出馬表明をする姿を見に来ていた。過去にトランプ氏は何度か選挙に出る試みはありました(2000年の選挙に出ようとしていた)が、うまくいかなかった。そんなこともあり、主要なメディアは今回も落ちる泡沫候補の扱いで大々的に扱いました。政治のコメディ番組でも、落ちることを面白がって、出るべきだという皮肉まで言う始末です。
当時、民主党のナンシー・ペロシ氏もこのように述べてました。
"Donald Trump is not going to be the President of the United States."
「ドナルド・トランプは米国の大統領にはなりません。」
トランプ氏の出馬表明演説が非常に計算された演説であることを知らずに、主要なメディアと民主党は現実から目を背けてました。トランプ氏は事前に何度も演説集会所を巡り、そこで国民の反応をテストをしてました。その集大成が2015年6月16日の出馬表明演説だったのです。その為、トランプ氏の演説内容を聞いた国民は現在持っている不満を語ってくれたものだと思ったのです。実際に演説内容と当時の米国政治を照らし合わせれば、国民が不満に思っていた要素が多かったのです。
例えば、不法入国する移民に対する言及に関して、隣接するメキシコとの国境を越境して、南米から多くの正規手続きをしていない移民が入国していました。加えて、中東・北アフリカにおける移民と難民の大群衆が社会福祉が整った欧州の国々へ越境しようと命がけの大移動をしてました。米国は海の向こうにあるとはいえ、米国にもくるものだと多くの米国人は考えてました。問題は移民が増加した時に避けられない現住民と移民との摩擦や、社会に溶け込めなかった移民が経済的な理由による犯罪を起こす可能性が大いにあったことです。
当時、主要なメディアは移民歓迎ムードで女性や子供の難民を中心に報じてましたが、SNS上では全く別の状況が映されてました。若い成人男性が「マネー、マネー、マネー」と発狂しながら、ヨーロッパへ向かう映像や船に乗せられた大量の移民が下りる映像などの恐怖心を刺激する映像が多く散見されました。(今はSNS運営側に削除されたコンテンツが多い)加えて、移民関連の問題が発生しても主要なメディアは報じることはせず、問題の発生報告がSNSが先というおかしな状況だったのです。主要なメディアは「ポリティカル・コレクトネス」と呼ばれる政治的に正しいとリベラル派が決めた内容のことしか話してはいけないという風潮を守っていたのです。報道より風潮を重視する主要なメディアに加え、民主党も「ポリティカル・コレクトネス」を擁護してました。
結果として、一般の米国人から主要なメディアと民主党は不誠実な行為を働いている者達に見え、その不誠実な者達を名指しにしたトランプ氏が支持を得るという構図でした。しかし、主要なメディアと民主党は現実から目の背けたこと自体にこの時点で気づいていないのです。気づいた者達は発言をしようとすれば、「ポリティカル・コレクトネス」で意見を封じます。移民に関する議論を展開すれば、人種差別主義者のレッテルを張り、ジェンダーにおける保守的意見を述べれば、性差別的と糾弾されるといったレッテル張りの嵐に襲われます。この徹底した現実から目を背ける「ポリティカル・コレクトネス」こそが最大の問題になります。
注:オバマ政権時の「ポリティカル・コレクトネス」の乱用に立ち向かった草の根保守運動の話は有料欄で紹介します。
共和党指名候補の予備選挙
共和党の指名候補争いでは、常に調査で一位になり、注目度は抜群です。加えて、主要なメディアはトランプ氏も共和党も落ちぶれたと報道し、「ポリティカル・コレクトネス」にしびれを切らした米国人はトランプ氏をより支持していきます。当初、ジェブ・ブッシュ氏が共和党指名候補になると多くの有識者は予想を立て、日本でもハドソン研究所の日本人職員が出版したジェブ・ブッシュの描く米国予想を出すなど、見切り発射もいいところな状況でした。(当時、見切り発車した本を購入した読者は損でしかなかった)
トランプ氏は対抗候補に愉快なニックネームを付け、演説集会で連呼して、支持者はよりトランプ氏を支持していきます。ニックネームを一部紹介すると、
ジェブ・ブッシュ=Low Energy Individual(低エネルギーな人)
テッド・クルーズ=Lying Ted Cruz(嘘つきのテッド・クルーズ)
マルコ・ルビオ=Little Marco(小さいマルコ)
等がありました。トランプ氏は民主党側のヒラリー・クリントン氏に対しても、忘れずにニックネームをつけてました。
ヒラリー・クリントン氏=Crooked Hillary(不正直なヒラリー)
候補者が集まって討論をする共和党集会では、トランプ氏は会場の既得権益者の参加者たちからブーイングを受ける場面があり、その際、「反エスタブリッシュメント」という対立軸を明確にしました。トランプ氏はこのように述べてました。
"The reason why they are not loving me is (Crowd starts to boo), the reason why, excuse me. The reason why they don't like me is because I don't want their money. I'm going to do the right thing for the American Public. I don't want their money, I don't need their money. And I am the only one up here that can say that."
「彼らが私を支持していないのは(会場がブーイングを始める)、理由は、失礼する。彼らが私を支持していないのは彼らの献金を私は必要としないからだ。私は米国民の為に正しいことをやる。私は彼らの献金を必要としていない。そして、この壇上でそれを言えるのは、私だけだ。」
引用:ABC News
引用:ABC News
この発言で更にトランプ氏は支持を拡大することになりました。これは、多くの米国民は共和党と民主党の二党の争いに疲れていて、経済の回復を優先してほしいという切実な思いがあったからです。当時、米国は共和党のジョージ・ブッシュ政権で大きな海外戦争を経験し、金融危機も起きました。一方、民主党のバラク・オバマ政権での経済回復の兆しが見えないまま8年も大統領の座に君臨していました。多くの米国民は経済回復の遅さにとにかく疲れていたのです。そこで、これまでの共和党とも民主党とも違う希望に映ったという訳です。今の日本人は失われた30年と呼ばれる万年デフレを経験している為、理解しにくいと思いますが、海外のどの国でも経済回復が遅いことは国民の不満を爆発させる要因になるものです。
注:反エスタブリッシュメント発言により、陰謀論者のオルタナティブ・ライトの勢力が活気づき、infowarsと呼ばれるインターネットメディアで積極的にあることないことを報道した為、多くの人の目に留まり、トランプ氏を陰謀をたくらむ悪党と戦う正義と思う層が生まれ、現在はQAnonとして派生してます。詳しくは、有料欄で紹介します。
中には、トランプ氏に反対する共和党員による小規模のデモもありましたが、規模が小さい割にはマスコミは反対派の意見を全体の意見のように報道したが、トランプ氏の支持層はマスコミの言うことに耳を貸しませんでした。
民主党指名候補の予備選挙
民主党側では、ヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダース氏の間で対立軸がありましたが、ヒラリー・クリントン氏が指名候補争いで勝ちました。バーニー・サンダース氏の支持層は民主社会主義者と呼ばれる人々で、バーニー・サンダース氏の敗北を受けいられず、民主党支持者層の間で分裂が起きてました。
共和党全国大会
共和党全国大会にて、トランプ氏と副大統領候補マイク・ペンス氏が党の承認を受ける為の投票で正式に承認されました。一部、共和党員がトランプ氏の承認反対工作を計った者もいたが、失敗に終わります。共和党議員のテッド・クルーズ氏もトランプ氏に投票するのではなく、良心に従った候補に投票するように呼びかけを行ったが、効果は皆無でした。共和党全国大会では、選挙スローガンである「Make America Great Again (MAGA)(米国を再び偉大な国に)」にまつわる4つテーマで、駆け付けた著名人による応援演説で
「Make America Safe Again(米国を再び安全な国に)」
「Make America Work Again(米国を再び働く国に)」
「Make America First Again(米国を再び1番の国に)」
「Make America One Again(米国を再び1つの国に)」
といったテーマが話されてました。著名人の中にはペイパル共同総設者のピーター・ティール氏、予備選挙で降りたベン・カーソン氏、保安官のデイビッド・クラーク氏、トランプ家のイバンカ・トランプ氏、ベンガジ領事館が襲撃された事件で死亡した兵の母親パトリシア・スミス氏等が含まれてます。ベンガジ領事館が襲撃された事件は過去に取り挙げたことがあるので、詳しく見たい方は以下のリンクからアクセスしてください。(無料の記事)
政党の全国大会は、米国が将来あるべき姿を発表する場であり、ドナルド・トランプ氏は「Law and Order(法と秩序)」を強調し、米国の治安を改善すると公言してました。選挙以前から民主党が強い州での治安管理が度々問題になり、黒人と警察にまつわる事件も起きており、「ポリティカル・コレクトネス」での人種対立を盾に警察の出動に控えめな姿勢を持っていた。
注:いまだに、民主党の牙城(特にカルフォルニア州)と呼ばれる州では治安の改善ができていないが、次の選挙で何が起きるかはまだわからない。
共和党全国大会にて、マイク・ペンス氏が正式に副大統領候補としてトランプ氏を支えることになりました。マイク・ペンス氏はインディアナ州知事の経験者でトランプ氏の予備選挙で初のトランプ氏勝利の報告が上がった州になります。尚、ペンス氏本人はトランプ氏との協力関係を築くことに好意的であり、必要な場面で冷静かつ、的確な指摘をする謙虚な人物として活躍するトランプ氏の心強い仲間になります。
民主党全国大会
民主党全国大会では、「アイデンティティ・ポリティックス」を使ったマイノリティーをかき集めた形での票集めをしていました。マイノリティーのカテゴリーとして、人種やジェンダー等が中心で、そのマイノリティーグループの票獲得の為に演説をさせていました。他にも、当時まだ現職だったバラク・オバマ米大統領を登壇させるなどもありました。副大統領候補として、ティム・ケイン氏が選ばれます。ティム・ケイン氏は民主党全国大会演説にて、英語だけでなく、スペイン語による演説を披露し、会場のスペイン語理解者には大盛況の状況でした。クリントン家からは、チェルシー・クリントン氏が演説で母のヒラリー・クリントン氏の人物像で好印象を与える為に国立恐竜博物館での思い出について語っていました。
政党の全国大会は、米国が将来あるべき姿を発表する場だが、ヒラリー・クリントン氏はトランプ氏の批判と女性初の大統領として当選する意義ばかりの演説で、米国の将来像がまるでなかった。正直、何のために演説会が設けられたのか疑うレベルでした。
会場の外では、バーニー・サンダース氏の支持者による抗議デモが積極的に行われてました。これは、バーニー・サンダース氏がヒラリー・クリントン氏を応援すると表明して数週間後の話でした。民主党全国大会では、バーニー・サンダース氏の支持層を締め出していた為、民主党内部で支持者層の分裂を引き起こす事態に発展しました。バーニー・サンダース氏本人もこの事態に対し、
"It is my hope we can quickly resolve this in a fair way. If the process is set up to produce an unfair, one-sided result, we are prepared to mobilize our delegates to force as many votes as necessary to amend the platform and rules on the floor of the convention,"
「私の希望としては、事態が素早く公平な方法で解決されることを望む。もし、そのプロセルが不公平で一方的な結果であれば、我々は代議員を導入し、議場で綱領と規則を改正するために必要なだけの票を準備をいつでもできる。」
引用:WikiLeaks
と述べてました。内部での分裂は深刻な問題になり、あまりにもヒラリー・クリントン氏が選ばれたことに不満を持った一部のバーニー・サンダース氏支持者は両民主党候補に呆れ、トランプ氏に入れる事態にも発展しました。党内の分断で勝てた候補は米大統領選挙史上いないので、それだけ分断が選挙で深刻な影響を与えたと言えます。
この分断の原因を辿るとデビー・ワッサーマン・シュルツ氏という民主党全国委員会の委員長の判断が大きく影響してました。元々、ヒラリー・クリントン氏の対抗候補であるバーニー・サンダース氏に加え、マーティン・オーマレー氏がデビー・ワッサーマン・シュルツ氏の2016年のディベートを例年の選挙サイクルより少ない6回だけ行うことを表明したことに対する抗議から始まりました。最終的には、9回のディベートを行うことになりましたが、デビー・ワッサーマン・シュルツ氏の不可解な判断で前民主党全国委員会の委員長を第一回のディベートに紹介しなかったことが問題視されました。その後も、バーニー・サンダース氏の選挙キャンペーンに対する民主党全国委員会のデータベースへのアクセス拒否、バーニー・サンダース氏の支持者を暴力的と糾弾する等して、火に油を注いで大火事にしてしまいました。
Wikileaksによる民主党全国委員会の暴露資料により、予備選挙でヒラリー・クリントン氏を擁護しながら、バーニー・サンダース氏に批判的なスタッフを使っていたことが分かり、デビー・ワッサーマン・シュルツ氏は民主党全国委員会を辞任しました。辞任後はヒラリー・クリントン氏の選挙戦略顧問官として登用されることになりました。
主要なマスコミの不誠実な報道
主要なメディアはトランプ氏に焦点を当て、面白おかしく映し、あたかもボツ候補として扱ったが、共和党の指名候補として選ばれました。今度は、主要なメディアがとった行動は大統領候補としてのボツ候補として扱いました。その為、報道しない自由のオンパレードでした。
例えば、トランプ氏の集会は常に満席状態で注目の的でしたが、民主党候補のヒラリー・クリントン氏の集会は学校体育館を埋めることも出来ず、空席の方が多く、そのことを問題視した主要なマスコミは背景に仕切りのある壇上に立った両候補の映像しか流しませんでした。そこで、トランプ氏は主要ななメディアに対し、
"Show'em how many people come to these rallies. Turn'em. Go ahead, turn'em. Go ahead. (Camera turns and Crowd goes wild)"
「どのくらいの人が集会に集まってるか見せたらどうだ。カメラを回転させるんだ。いいから、カメラを回転させるんだ。いいから。(カメラは回転され、映された会場は大盛り上がり)」
引用:NewsNOW from FOX
引用:NewsNOW from FOX
このように指示されない限り、映す姿を調整するなどのことをしていた為、トランプ氏は背景に人が見える集会会場で開催する等して対抗しました。加えて、トランプ氏の集会開催頻度と開催地域も全ての州を回るようにしていました。一方、ヒラリー・クリントン氏は民主党の牙城と呼ばれる州ばかりで集会を開いてました。
選挙運動で大きなハンデを背負ったヒラリー・クリントン氏ですが、主要なメディアは「ポリティカル・コレクトネス」で女性候補であるヒラリー・クリントン氏を否定することも出来ず、擁護してました。そんな中、ビリー・ブッシュ氏(ジェブやジョージと同じブッシュ家)とトランプ氏の会話の中で例の女性蔑視発言が記録されたオフレコ映像が大々的に公開されました。
引用:YouTube
余りにも大きな問題に発展した為、ビリー・ブッシュ氏の言動も問題視され、解雇されました。ハリウッドでは、「ポリティカル・コレクトネス」が浸透している為、絶対不寛容の姿勢で両者を責め立てました。オフレコ発言は選挙前の10月に公開され、トランプ氏はもう終わりだと主要なメディアと民主党は考えていました。しかし、トランプ氏は公開討論会で過去の行いを謝罪し、過去に起きたビル・クリントン氏の性的スキャンダル被害を受けた女性4人を会場に招く等、しっかりと対策し、立て直しに成功します。オフレコ映像が公開され訳ですが、明らかに選挙結果に影響を及ぼそうとした意図を感じさせる発表時期でしたが、その危機を乗り切ることまでは想像できた者はいなかったと思われます。
補足:この選挙前に起こった女性問題における逆風からの立ち直りはビル・クリントン氏の選挙時を彷彿させる部分があり、非常に興味深い場面と言えます。問題はいつ出てくるかわかりませんが、出た時の対処の仕方で逆転劇を起こせるのが米大統領選挙であることをヒラリー・クリントン氏が一番わかっていたはずだったのに、過去の成功体験から学ばなかったみたいです。
同じ10月にノース・カロライナ州共和党本部襲撃事件が発生しました。
引用:ウォールストリートジャーナル
ノース・カロライナ州の共和党本部が、反対派とみられる人物の手によって、窓から爆弾を投げられ、外壁にグラフィティと呼ばれるスプレー缶で落書きされた事件がありました。メディアは報じることこそはしましたが、特集が組まれることはなく、わずか1、2分程度しか報道しませんでした。副大統領候補のマイク・ペンス氏はこの報道姿勢に対し、こう述べてました。
"I am here to call attention to an act of political terrorism on the Orange County Republican Headquarters in North Carolina. This has gotten very little national media attention. And I can't help but feel that this had been the other way around. Had this been an attack on the other political party's (Democratic Party) County Headquarters in North Carolina, that the level of media coverage and discussion would be significantly different. And I think most of the American people know that."
「私はノース・カロライナ州オレンジ郡の共和党本部で起きた政治テロに関し、注意を呼び掛ける為にここにいます。この件はあまりにも国内メディアが報じていません。そして、私はこれが立場が逆だったら、状況が異なっていたのではないかと思わずにはいられないのです。これがもし、反対側の政党(民主党)のノース・カロライナ州の同郡本部に対する攻撃であれば、メディアの取り上げ方や議論は著しく、異なっていたと思います。そして、私は多くの米国人はそれを知っていると思う。」
引用:NBC NEWS
引用:NBC NEWS
どんなに相手を気に食わない場合でも、文明人であれば、暴力的手法で相手を倒す真似はしてはいけません。この基本的なことを理解できない者が存在していたことも驚きですが、選挙の1か月前に攻撃することはもっと大きな問題です。主要なメディアはこれを特に取り立てて報道しませんでしたが、トランプ氏のオフレコ映像よりも深刻な問題に報道時間をかけようとしなかったことは不誠実としか、言いようがないと思います。
9月11日追悼の日に倒れたヒラリー・クリントン氏
9月11日の同時多発テロ事件の犠牲者を弔う為の追悼式の帰りにて、いきなりヒラリー・クリントン氏が倒れる自体が発生し、護衛に素早く回収され、車に乗せられるハプニングが発生しました。
引用:CNN
この件以来、トランプ氏の支持者層からヒラリー・クリントン氏の健康に関する懸念が指摘され、主要なメディアはヒラリー・クリントン氏が健康であることを証明する為に政治コメディ番組にて、ピクルスの入った瓶を開けさせましたが、開封前の瓶が開けられた時に発する音が聞こえないことから「開封済みの瓶を開けたのではないか?」と疑われ、逆効果になってしまいました。
引用:Jimmy Kimmel Live
米大統領選挙では、自身の弱みを見せることは良くないとされる傾向があり、倒れることは一番弱いところを見せることになった為、各方面から心配の声とともに健康状態への不信感が広まることになりました。
加えて、ヒラリー・クリントン氏は頻繁に咳き込む習慣があり、医師曰く、酸の逆流現象によって引き起こされる咳き込みで、呼吸方法を意識することで改善ができると述べてました。しかし、ベンガジの責任追求の際にもみられるように都合の悪い時に咳き込むことが多い為、どこまで本当かという真偽を疑う声も米国民の間で存在し、懐疑的な目線で見られてました。
引用:Inside Edition
ヒラリー・クリントン氏の各種スキャンダル
一度、ヒラリー・クリントン氏と関連するスキャンダルをリストアップしたいと思います。(過去のスキャンダルはは有料欄で掲載)
過去編(2016年選挙以前の問題)
・1975年に12歳の少女が強姦された事件の弁護をした件(有料欄)
・若年黒人層を「スーパープレデター」呼ばわりした事件(有料欄)
・夫の浮気スキャンダル火消騒動(有料欄)
・ベンガジの責任(有料欄)
2016年の選挙時
・国民批判の失言(deplorable発言)8/25/2016
・2016年民主党全国大会電子メール流出事件(英名:2016 Democratic National Committee email leak)
これら多くのスキャンダルを抱えてるヒラリー・クリントン氏ですが、ここで重要なのは、国民批判の失言(deplorable発言)と2016年民主党全国大会電子メール流出事件になります。
国民批判の失言(deplorable発言)はトランプ氏の支持者を全員オルタナティブ・ライトの一員であり、人種差別的、性差別的等と公の場で発言した内容になります。当然のことですが、特定の候補を支持しているからと言って思想信条が同一もしくは、均質なものではなく、様々な意見を持った米国民が存在し、支持する候補と支持理由も異なります。この特定のグループ化し、悪い印象を与えようとする行為は欧米圏では「labelingやdemonizing」と言った表現がされ、ポピュリストを狙う者が対立軸を煽りたい時に使う手法です。トランプ氏もある程度この手法を使っていますが、一部の例外を除き、米国民を直接人格批判するような愚行はやってません。この国民批判の失言(deplorable発言)は、トランプ氏への支持を高める逆効果になってしまう結果となりました。
次に2016年民主党全国大会電子メール流出事件ですが、こちらはWikileaksへの投稿で浮上した、機密扱いのメールが流出する事件です。この機密メールのやり取りでヒラリー・クリントン氏を勝たせようと画策しようとしたやり取りが記録されており、これが例のバーニー・サンダース氏の支持者を怒らせた要因の一つになります。
注:この件にて、ロシアのハッカー集団の介入の疑いがかけられてますが、その説明は有料欄で紹介します。
投開票日
様々なスキャンダル合戦が繰り広げられましたが、最後にものを言うのは投票結果です。米大統領の選挙システムは国民投票の数で決まる訳ではなく、選挙人の数で決まります。2016年の選挙人数はトランプ氏306人対ヒラリー・クリントン氏232人でトランプ氏の勝利が確定しました。一方、国民投票の数ではヒラリー・クリントン氏が僅差で軍配が上がります。しかし、選挙人の仕組み上、トランプ氏の勝利という訳です。
補足:民主党は投票に行く人数が多い時に有利になり、共和党は投票に行く人数が少ない時に有利になる傾向があり、これまでのヒラリー・クリントン氏の過去やスキャンダルでそもそも投票しない人も多く存在し、分裂したバーニー・サンダース氏の支持者や両者に投票しない者は、トランプ氏にとって優位になる要因の一つだったと言えます。
まとめ
主要なメディアと民主党側はトランプ氏を面白おかしく取り扱い、泡沫候補として扱おうとするも、トランプ氏は攻撃を受ける前提でそれをチャンスに変える為に行動していました。しかし、主要なメディアや民主党の油断はその上を行き、支持を削ぐ報道で致命傷を負わせた後に復活するまでのシナリオを描けませんでした。加えて、「ポリティカル・コレクトネス」により、本来意見を言えたはずのジャーナリストも委縮する事態だった為、現実ではなく、思想信条を報道しているに近い状態で選挙報道がされてました。そんな中、不信感を持たれた主要なメディアの言うことに聞く耳を持たなくなった米国民の間で過去のヒラリー・クリントン氏の行いや策略が追求される場面で厳しい目線でみられることになりました。中には、陰謀論者によって踊らされた人も一定数いることは確かですが、大半は経済状況の改善を望む米国民だったとみています。米国の経済改善を望む全米で広く散らばった多くの国民の思いという現実から目を背けた結果がトランプ氏の選挙人数の多さとして表れたことに加えて、ヒラリー・クリントン陣営の各種スキャンダルと向き合わなかったことが結果的にトランプ氏が米大統領として当選することに繋がったという話でした。
以下より有料項目
以下は各方面で選挙に影響を与えたと言われてるアクターや事件の話になります。項目は以下のものになります。
選挙前の米国政治と言論空間の動向(2008年から2016年まで)
・オバマ政権時代の米国経済と言論空間
・2012年選挙でのオバマ氏の苦戦
・オバマ氏の不可解な行動集
・オバマ氏の夢は米国の夢ではなかった
・「ポリティカル・コレクトネス」と戦った米国保守派
・スティーブ・バノン氏とブライトバートニュースの変貌
・陰謀論者の台頭とSNS
・WikiLeaksが台頭した経緯
・米国の夢と中国(チャイナ)という存在(「Anywheres」と「Somewheres」の話も含む)
・ヒラリー・クリントン氏の各種スキャンダルの解説欄
選挙中(後も含む)動向
・バイブル・ベルトとキリスト教福音派の影響力
・結局ロシアゲート事件とは何だったのか
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