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詩 不可視の膜 どんなに愛おしかった悲しみにも つきまとう吐き気と倦怠 薄く透明にな…
詩 プランクトン 世界のあらゆる要求が 詰まった人魂の血液を 飲み干し 濁流を泳ぐ …
詩 粗暴なてのひら 取っ散らかしてぐしゃぐしゃになった 荒れた河口に踏み入って ただ…
詩 相貌 振り向けばすぐ後ろに かつてわたしが座り込んでいた 暖かい奈落があって …
詩 喉仏 美しい無償の愛で 染められた海原の 背中から流れる 不規則な血飛沫のこと …
詩 視神経 視神経にとって じっと見つめることができるのは ひとの肌の きめ細やか…
詩 報恩性の盟約 役に立つことでしか 居場所を作れない、と 尽くされるたび 思った 存在を許されるために 他人の要求を満たすのが 生存のための条件だと思っていた だから 割腹するような 多量の 報酬を与えられたとき 何と言葉を返せばいいのか わからなかった これは血の盟約 自分の何かのためじゃなくて 腹を裂いたひとへ 欠けた細胞を 返していくための 報恩性の 盟約 時計の針を 流砂の墜落を その代償と引き換えに得られるなにかを 置き去り
詩 さみしさの火 さみしさを磔にする 十字架みたいに きみの大切なものが 燃えてた …
詩 詳らかになったのは いろいろあったな と こぼす先輩の 言葉に 同意しつつも …
詩 火葬場は歩く その不遜と伴にいられなくなった しわがれたわたしを見ても 泣く資格…
詩 波にのる夜 ひとが脱ぎ捨てた古着のかけられた ショーケースのあわいを 多種多様の…
詩 なきがらの海 少女の屍体の海 千切られた肉塊が 糸を引くように浮揚する 波の押…
詩 夜と昼がみえる場所 いましかないものが 生み出す焦燥で 皮膚を零しながら 息し…
詩 棄郷者へ みなしごよ みなしごよ 骨と皮を 集めて拾いなさい それはかつて あなただったものの死骸です その山積です 願いはいくらありましたか どれだけを葬りましたか 夢に詰め込んだ ひかる清水を 流血したまま どれだけの時が経ちましたか 現実に向き合うとうそぶいて 瘡蓋を弄る日々は 満足ですか 夢を置いていったことの 後悔を 自傷で埋めるのですか きっとわたしたちは 現になんて 向き合えなかったのです 逃げ込んだ先で 本当の笑