イタリアの電車がボッコボコだったことについて
夫の夏休みに付き合ってイタリアへランチをしに行った。国境の街のひとつ向こうにある小さくてかわいい海沿いリゾート地。
イタリア側の国境の街まではフランス国鉄SNCFで。そこでイタリアのローカル線に乗り換えてひと駅先の街。所要時間は一時間ちょい。
フランス側は長距離快速電車(TER)を使うので、冷房が効いて快適に移動が出来る。日本の特急や快速と比べるともちろん、乗り心地や清潔さは到底足元にも及ばない。だけど長年フランスに住んでいると、まあこんなもんよねって受け入れられる程度の汚さだ。
で、それが当たり前な状態のままで日本に帰ると、公共交通の乗り物全般がピカピカにキレイで快適なことにおったまげて腰を抜かすほど感動するのであーる。
ま、そんなことはさて置き、今回も床に落ちているゴミ屑やアルコール飲料の空き缶を見て見ぬふりして、冷房が故障していない車両に当たったことに感謝しながら国境の街まで移動をした。
さあここで乗り換えだ。
実はもう何年も南仏に住んでいるのに、その街へ行くのは初めてのこと。夏の間は海沿いの道は混むだろうからと車はやめて、電車に乗ってやってきた。
いざ!イタリアの超ド級ローカル電車へ乗車
乗り換えで指示が出ていたホームへ行くと、なんだか様子がおかしい。時代が逆行したかのような、どんよりとした暗い光景が目の前にあったからだ。
電車がキタナイ。。。ってゆーか、動くのか?コレ?
あまりのことでビックリしたため、写真を撮り忘れてしまった。いや、撮り忘れたんじゃなくて、ポケットからスマホを取り出すことすら躊躇するほど異様な車体がそこにあったので撮らなかったのだ。
客層は、ワチャワチャした人たちが半分に観光客が半分。ワチャワチャした人たちはローカル民らしい。
座席に座ると前席の背もたれが、ベッコベコのボッコボコになっていた。どうやったらこんなことになるのだろう?まるで誰かが金づちで隅々まで連打したようだ。辺りを見渡すと、全席同じようにフルボッコにされていた。
一体誰がやったんだ?
写真を撮らなかったことを今、猛烈に後悔している。だって、私がここでどれだけあの状態を説明しようとも、誰も信じてくれないだろうから。
ひと駅だけ乗る電車だったので、超ローカル線だ。ただ単にさびれているだけならまだ納得がいく。でも私たちが乗ったのは、まるで激戦地を通り抜けてきたかのような戦禍の電車。
今、この時代にイタリアで戦争しているなんて聞いたことない。
だったらなんであんな状態の電車が現役で運行しているのだろう。。。
片田舎の運命なのかもしれない。。。
多分、ローマやミラノへ行けば、最新の電車やトラムが颯爽と駆け巡っていることだろう。田舎に比べて人口も多いし物価も高い。コンパクトな地区にギュッと色んなものが集まっているので、車よりも電車やバスの方が便利で利用者も多いからすぐに採算がとれる。
一方田舎は車社会。都会よりも広範囲で行動することが多いから、車の方が電車やバスより便利だ。
そして、フランス側の海沿いにはカンヌやニース、モナコなど、世界に名立たる高級リゾート地が立ち並び、パリの地下鉄ほどではないにしても利用者が多い。電車やバスも採算が取れて、それなりの状態のものを運行できる余裕があるのだろう。
ところがイタリア側はあまり良く知られていない。地続き海続きで文化的にも似たようなお隣同士なのに、様子が全く違うのだ。
利用者が少ないから電車のメインテナンスにまで手が回らない状態で、長年放置されているからキタナイ?のかもしれない。それにしても放置しただけでボッコボコになるもんかね???
ただ今回私たちが訪れた街は電車のボッコボコ感とは相反して、歩道が新しく整備されていたり、古い建物の修復がされていたりと街をあげて改善を試みているのがよくわかる状態で、のんびりと午後の数時間を過ごすには絶好の場所だった。
美味しいイタリア
私たちは海沿いの端っこにあるビーチカフェで軽いランチを取ることにした。暑い時は食欲が落ちるので、サラダがメインになりがち。ブッファラとトマトのサラダと生ハムのサンドイッチを分けっこして軽い昼食にした。
不思議なのは、フランスでもよく食べる普通の食材なのに、なんだかとっても美味しく感じること。トマトは酸味がなく、口にまろやかでとろけるような食感。クリーミーなブッファラと一緒に食べると暑さが吹っ飛ぶ美味しさだ。
生ハムもちょうどいい塩加減で、舌先でとろける柔らかさ。オリーブオイルがたっぷりと染みた薄くてモチっとしたフォカッチャに挟んで食べると思わずうーん美味しい!と声を上げてしまう。
なんで?普段フランスで食べているものと同じはずなのに、全然違う味がする。イタリアの方が断然美味しい!!
距離的に近い場所なのに、なんでこんなに味が違うのか?国が違うから?それだけ?
不思議の国、イタリア
帰りの電車は行きのそれほどは汚くなかったけど、やっぱり内装がボコボコにやられてた。(何度も聞くけど、一体誰がこんなことしたの?!?)
フランス国鉄への乗り換えに小一時間ほど時間があったので、イタリア側の国境の街を散策することにした。すると、大通りの角のところでアフリカ系の移民らしき人たちが腕いっぱいにカバンをぶら下げて怪しい路上販売をしている。もちろん違法で。
近付いて見たら、それは流行りのディオールのトートバッグ。もちろんパチモンだ。
うわぁ~懐かしい。
昔、私が小さい頃はよくテレビのニュースでパチモン摘発のニュースが流れていたものだ。最近では滅多にお目にかからないけど、あーゆーパチモン屋さんは、隠れてネットで商売でもしてるのかな?それか、そもそもの需要がなくなって廃業してしまったとか?
なのに、今でもこんなパチモン商売を堂々と昼日中、国境の街の大通りでやってのけるなんて。イタリアってすごい!
イタリアって不思議がいっぱい。
フランス国鉄に乗り換えると、フランス側の国境の駅で十五分ほど停車をした。フランスの税関が不法入国者の検査に入ったのだ。
イタリアへ入る時は誰も検査に来なかったのに、フランスではしっかりと強面のおじさん達が今にも噛みつきそうな犬を連れて目を光らせている。
EUとは言え、国境は国境。イタリアは不思議いっぱいの別の国。