常軌を逸した3人のおじさん


私は大きな手提げ袋をぶら下げているおばあさんに席を譲るため席をたった。


「どうぞ」とか「座ってください」など言うと断られた時にこのやりとりが仇となり、その場に居づらくなるため、無言で席をたった。

そのままとなりの車両にでも行こうと思っていた。


しかーし!!


私の想像範囲外のことが起こった。



私は1番端の席に座っていたのだが、
席を立った瞬間、となりに座っていたおじさんがスライドし、その端の席に座ったのである。


ホワイジャパニーズピーポーである。

(ホワイジャパニーズピーポーではない)


私が驚いたのはそのスライドの速さが常軌を逸していることである。

私が腰を上げるや否やのスライダーである。


田中将大の全盛期を彷彿とさせる高速スライダー並みの速さで(今も全盛期)端の席にスライドしてきた。


スライドおじさんの思考はどうなっているのか。


端の席と強力なN極とS極の関係性でないと説明がつかない。


“なぜ周りの状況を考えず端の席を取ったのですか?”と聞けば

「端の席に座りたかったから」


しか言わないようなスーパーわがままスライダーである。




ただもう一席ある。

常軌を逸したスライダーがもともと座っていた座席だ。


ただ残念ながらその空席も、座面が見えたか見えなかったかぐらいのスピードで、元スライダーの前に立っていた棚ぼたおやじが、そのまま空いた席に座ったのである。


ホワイジャパニーズピーポーである。

(ホワイジャパニーズピーポーではない)



私もおばあさんも一瞬の出来事に呆気にとられていた。


これがテトリスなら、

おやじブロックを非常に気持ちよく配置に入れ込めたと喜ぶところだが、これは現実世界である。



しかもスライダーは当然かの如く腕組みをし下向いている。

棚ぼたもすぐ目をつむり、この違和感だらけの空気が過ぎ去るのを待っている。

当の私もこの状況にふさわしい言葉が見当たらず隣の車両に行くタイミングを見計らっていた。



その時である。


ツンツン、、、

ツンツン、ツンツン、、、


もともとおばあさんの後方に立っていた細身のじじいが棚ぼたの肩をツンツンしている。


車内に緊張感が漂う。注意でもするのか!?



「すいません、すいません」



・・・

まさかである。

まさかである。



細身のじじいはスライダーと棚ぼたの間にできた僅かな隙間に自分の体を捻じ込み、座ろうとしていた。



ホワイジャパニーズピーポーである。

(これはホワイジャパニーズピーポーである)



テトリスだったなら反則技であるその強攻策は全く常識外れにせよ、我々の視界を魅了した。


そして完成したのである。



常軌を逸したじじい3人の不味そうなサンドイッチ。




おばあさんもいい思い出になったのではないでしょうか。(なってない)




スライダーも窮屈になり、なにか文句を言いたげだったが、周りの視線を感じ押し黙っている。


3匹の害虫を虫カゴに押しつめた感覚だった。(サイコパス)






おばあさんが重い荷物を持ち帰り、長年連れ添った優しい亭主に今日の出来事を話して欲しい。

そして重かった袋から材料を手に作った美味しい料理とともに、笑顔で食卓を囲んで欲しい。



それが私のたった一つの願いである。(サイコパス)

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