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リーディングin theステイホーム
本日は真面目な書評記事です。「お前に真面目を期待してない」というごもっともなご意見の方々は昨日の「人間のおもんぱかり方」という記事に飛ぶことをオススメします。
クソつまんないですが。
さて、皆さん。
新しいことに突き進む信念、持ち合わせていますか?
コロナ禍にあって、半強制的に変化を求められるこんな時代であっても、動き出せない、変化に漠然と恐れをなしている、そんな人々は私含め、非常に多いのではないでしょうか。
様々なことが急速に進み、形を変えていくこの時代に、安定を求め現状に留まり続けることは果たして可能か。
郵政の民営化によって更なる値下げ競争に巻き込まれた運輸会社をはじめ、信念を持って変化をし、受け入れ、情熱を生み出す数多くの人間たちを描いた2009年発売の「ラストワンマイル」
このステイホーム中に、是非手に取って欲しい。
※ラストワンマイル:事業者とユーザーをつなぐ最後の区間 物流業者
急激に成長したネット通販会社に結果裏切られる運輸・物流会社。
資本主義では当然の原理。ただ果たして下請け最下層の物流業であるから仕方ないことなのか。
いや、最下層の物流業であるからこそのアイデアで光を見いだす。「現状を変える」ことに否定意見の上層部を信念と根拠で突き進める。
さらに急激な成長と共にテレビ局買収をも試みるネット通販会社。古い考えの各界の重鎮たちを敵に回し新たなビジョンで黙らせていく。
どちらも新しいことに突き進む信念と、変化に対する肯定感が非常に気持ちいい。
どちらに感情を入れればいい?立場違えど、信念は同じなのだ。「緊張と苦悩が情熱を生む」
「下請けに過ぎないと思われていた物流業が、実はすべての産業の生命を握っている。まさにラストワンマイルを握っているものこそが絶対的な力を発揮する事を世に知らしめる絶好の機会を目の前にしているんです。」
復讐劇とも下剋上とも違う、明日に向かって変化を恐れない人間たちの、熱くなれる一冊だ。
是非ネットで買って、届けてくれた配達員に感謝して欲しい。
さて、
散々のように「変化に恐れない」素晴らしさを説いてきたが、その場所に留めたい思い出や記録は誰しもにあるのではないだろうか。
もう一冊、2021年の芥川賞候補作であった「旅する練習」を紹介したい。
多くを語らず、風景を淡々と言葉で紡いでいく小説家の叔父と、リフティングやドリブルの特訓をしともに旅をするサッカー少女が鹿島を目指し「練習の旅」をする。旅の思い出としては何気ない、日々の幸福を描き続けている。
「私しか見なかったことを先々へ残すことに、私は少し焦っているかもしれないが本気である。」
「書いたことは無くならない。」
大きな抑揚なく進んでいた旅。あくまで数日間を切り取った風景の記録や描写を優先してきた叔父の記し方から、あからさまな感情が見え隠れする。
「本当は運命なんて考えることなく見たものを書き留めたいのに、私の怠惰がそれを許さない。心が動かなければ書き始めることはできない。そのくせ、感動を忍耐しなければ書くことはままならない。」
その悲しき何かを明かさないまま、明らかな葛藤と、幸せな日常の「記録」が混在をみせる。序盤の抑揚のなさも記録し続ける「平凡な幸せ」も本書においては大きなコントラストを生み出し、結末を想像して、胸がダル痒くなってくる。
平凡なこと、そしてそれを長く記録すること、またそのことが誰かの気持ちや意識を変えること、これらがどれだけ難しいことなのか。
「大切なことに生きるのを合わせてみるよ、私も。」
大切なことは新たな環境で変わってしまうもの。それを変えない、忘れたくないというのは変化することよりも難しいことなのかもしれない。
総数170ページで半日あれば読めてしまうが、2度読むことで完結される物語である。
貴方はこのコロナ禍で、どちらの本を手に取りますか?
「お前のお勧めする本は面白そうじゃない」と厳しめなご意見の方々はこの3つ前の「パイスラッシュ2021」という記事に飛ぶことをオススメします。