療法:催眠では心の病気は治せない

●催眠でできること

催眠は、人をまるで好きなように操っているかのような不思議な現象を引き起こします。それゆえに「何でもできるんじゃないか?」「どんな病気でも治せるのではないか?」と期待を持つ方が多くいます。

しかし、申し訳ないのですが『催眠にも限界がある』ことをご理解ください。催眠は、決して魔法では無いのです。

私は、『催眠療法は医療にはなり得ない』と考えています。理由は後述いたしますが、催眠の生まれは確かに医療"寄り"ではありますが、医療と催眠はスタンスが明確に異なるのです。

催眠の適性利用とは、『生活習慣や思考習慣を改善し、より良い生活を送るために自身の器を変形・整形させるためのツール』であり、それが、私の催眠療法の軸になっています。

人の体は、ナイフなどでスパッと切れば容易に傷つきます。そして、同じく人の心も不意な言動で容易に傷つくものです。そして、傷の回復には、肉体であろうが精神(心)であろうが、一瞬で回復するということは、絶対に無いのです。

そして、心療内科・精神科などの医療のスタンスは「傷ついた心を修復し"元の形に戻す"こと」ですが、催眠のスタンスは『傷ついた心を癒し、痛みを緩和させ、次に同じ刺激を受けた場合に、耐えられるように"環境に適して変形させる"こと』であると理解していただければと思います。

催眠療法士は、上記の違いを正しく理解して、施術にあたってほしいものです。

●うまいことばかりを言う療法士は、だいたい詐欺

先日、どこかのサイトで見かけたのですが・・・

「鬱を2回のセラピーで完治」などとうたっているところがありました。無理です。絶対に治りません。来なくなったのであれば、他のところに行ったか、元々それほど重度の鬱ではなかったと考えるべきでしょう。

「ガンや白血病、リンパ腫が、ウソのように消失ました」とうたっているところがありました。ありえません。それはウソです。早急に病院にいくべきでしょう。

ちなみにガンには、治るガンと治らないガンが存在し、治るガンはがん細胞の性質によって決定されますが、これらを患者さんに伝えることはありません。それは、現在の医療では初期状態でそれらを判断できるレベルには至っておらず、進行速度のタイプ(ゆっくり型やせっかち型)を初期で判断することはできないためです。あと、治らないと分かったとしても治したい、治りたいのが人というものです。なので知る必要は必ずしも無いわけです。

しかし、治るガン(転移や再発の可能性が低い)とは、全体のガンの8割を超えると言われており、極端な話「何もしなくても、結果治っていた」というケースがあります。これらを催眠の効果、トランスの効果、心の力などとするのは言い過ぎです。

「"今"を大事にすることで、新たな気づきが生まれます」とうたっているところがありました。過去、現在、未来のどれを大事にするかということと、新たな気づきを生むことは全く関連性が無い『単なる詐術話法』です。「この黄色い壺を買うと、みんな幸せに気づくでしょう」という論法と同じです。これは詐欺。

その人の健康状態、環境状態など様々な要因を考えた上での言葉なら、もしかしたら意味はあるかも知れません。しかし、一縷の望みをかけてきた方は、かけられた言葉に依存しやすい状態にある方が大半でしょう。いわゆるストレス状況下での新たな概念の埋め込み・・・洗脳です。

催眠療法士は、不用意にアドバイスをすべきではありません。言い切り型で幸せや健康をうたう人は、私は信頼に値しないと考えています。
  ※催眠セラピー1回で改善される方も少なからずいます。それはその人の実力を評価すべきでしょう。

●心の病気ってなんだろう

風邪で病院にいったら「あれ?なんとなく良くなったぞ」ということがあると思います。体は病気を引き起こす菌を、自身の免疫抗体で倒し、その後休息することにより回復していきます。そして、弱い菌であれば、過去の疾病記憶などから抗体は、すぐに菌を倒してしまいます。そして、その時の心の状態が、体調不良に負けない"元気な状態"であれば、抗体の働きは活発になり早く治るわけです。これが『病は気から』と呼ばれる所以です。そして、心の病気はその逆パターンです。

心の病気は、身体の病気と基本的には同じです。そして、その心を患う前の段階で、脳や神経などに何らかの異変が起こり、それによって身体のホルモンバランスや、筋肉に対する指示にコントロールの乱れが生じた結果、心に異変が生じるもしくは心と身体に異変が生じるという相互関連性をもった現象です。

心の病気なのだから、「自分の心に問題があるのではないか?」と思いがちですが、そこまで単純なことではないのです。実例をあげてみましょう。

『嫌いな上司に毎日いじめられていて、鬱になった。』

これは、職場ストレスですが、おそらくこの鬱になる前の段階で「頭痛や胃痛」などが必ず生じていたはずです。それを耐えてしまったがゆえに、脳や神経に対して何らかの問題(傷)が生じ、その後の鬱発症に至ったと言えるでしょう。単純に心だけの問題ではないですよね?

『育児が辛くて辛くて、ノイローゼになった。』

これは、家庭内ストレスですが、育児をしていく段階で睡眠不足や食事時間の乱れなどによって腰痛や肩こり、頭痛などが生じていたはずです。これも鬱と同じですね。

『好きなのに彼とセックスするのが嫌だ。』

これは、人間関係と性の問題ですが、ざっくりいうと、彼が好きなこととセックスは別物なので、「好きなのに」を連結する必要はありません。「彼のことは好きである。セックスするのが嫌だ。」と問題を分離しましょう。そして、「なぜ、セックスが嫌なのか?」を掘りさげることで、問題は解決できるものです。

いずれにしても、「全て自分が悪い、全て他人が悪い」などと、ゼロイチ思考をすることに起因して、『思考・行動パターンの選択肢を狭めている』ことを認識すべきでしょう。

  ※ちなみに『思考するターゲットは異なりますが、クライアント側は関連性を分離し、療法士側は関連性を見つけること』が重要です。

●心の病気をもつ方のクセ

鬱を例にとりましたが、こういった症状を起こしている方の体を押してみると分かるのですが、ある特定の部分が非常に強く凝り固まっています。

心身健康な方は、体のコリをマッサージでほぐすことができるでしょう。しかし、心の病気にかかっている方は、マッサージをしても数分後には、同じ部位がすぐにカチカチに戻ってしまいます。

これは『脳が緊張している』ことによって生じている現象です。脳が緊張していると、体をほぐしてもすぐに同じ「緊張」を体に生じさせる信号を送り続けてしまうのです。体のこわばりと心のこわばりは繋がっているので、どちらから治す方が簡単かを考えてください。楽な方から手をつけていきましょう。

脳の緊張をほぐす方法は、その心の病によって異なりますが、基本は『脳を休めること』にあります。

不眠症などでは、まずスマホを触るのを止めましょう。人は不安になると情報を欲しがり、スマホを見て不安になりを繰り返し、自身を同一化(この人も私と同じだ!)することで、病気になっていきます。

不安神経症などでは、隔離療法ともいいますが、1週間ぐらい休みをとって、テレビやスマホなどの外部刺激を断つなどがあります。不安神経症の方は特に神経が過敏状態になっている脳緊張ですので、これらの脳の緊張や神経過敏を緩和してからでなければ、どんな治療も受け付けません。

適切な医療、適切な投薬処方などを経た後に、初めて催眠療法で『再発しないための準備』、『再発した時の準備』を進めることができる状態になります。

また、思考のクセとして、「自分が聞きたい言葉だけを取込むこと」があります。

心が弱っている方によくある傾向ですが、「その時に欲しい言葉」に共感し、「その時聞きたくない言葉」を、無意識が除外してしまいます。

たとえば、統合失調症などにより幻覚・幻聴が生じている方は、被害妄想や不安などの症状が強く出ており、「前世からの呪いによって●●の幻覚を見ることがある」という情報を耳に入れると、「私が見ている幻覚と一緒だ。きっと、前世になにかあったのだ。そうだ、催眠療法に前世療法というのがあったな、それで治してもらおう。」と考えるでしょう。

ここで「脳が疲労・緊張しているから、この薬を飲んで安静にしてください。」と医師から言われたとしても、それを受け入れることを、無意識で拒絶します。人は「自分が受け入れやすいもののみを取り込む習性がある」というクセがあることを認識しておきましょう。

この状態になっている方に対して『催眠療法は無力』です。集中もできなければ、言語/非言語共にコミュニケーションの齟齬(そご)が生じますので、カウンセリングと通院、必要によっては入院をお奨めします。

最近の心療内科・精神科の処方する薬は、10~20年前から比べ格段に発達しています。薬依存する不安は、大半が気持ちの問題で、副作用と耐性を注意するぐらいでしょう。健康保険適用で安くいただけるわけですし、「やった、ラッキーこれ飲んで治すぞー」くらいの気持ちが必要です。

薬に依存したらどうしよう、効かなくなったら不安だ、と考え『意識が、潜在意識の方向と同じ、内側を向いてしまうことで病気は悪化』します。できるだけ意識を外側に向けていくことを心掛けましょう。

心の病気を持つ方は、まず自分のクセを認識してみるといいですね。

●催眠は不完全なもの

催眠でできることは、限られています。

たまに暗示で「悪い暗示を埋め込まれた」などという方もいますが、あり得ません。それは暗示では無く、「言いくるめられている」だけです。その人は、何らか心身不調を『催眠を理由にしたい』だけです。

人は弱いものです。何か問題が起こると、何かに原因を見出そうと動き始めます。そういったときに、耳あたりの良いものにすがり、一時的な優しさに依存することは、治癒・自律・自律を妨げるだけです。

催眠は、しっかりとした生活サイクルを維持し、よく食べ、よくて寝て、よく動き、太陽にあたることができたうえで、『さてと、催眠でもやって、レベルアップしてみるか』と使うべきものです。

催眠は、歴史においても、研究においても、使用においても、不完全なものです。どんな使い方をするかは人それぞれでいいのですが、私は『明るく、楽しく、気持ちのいい催眠』を提供していきたいと考えます。

ご用の方は、お気軽にご相談ください。(宣伝w)

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