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八木仁平『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』で見つけてみた、やりたいことを

「やりたいこと」を見つける本のひとつだが、流行りの「世界一やさしい」の枕詞がついている。どんな本なのだろう。

「やりたいこと」は3項目の掛け合わせ

「やりたいこと」探しを終わらせる、自己理解メソッドの3本柱とは?
1. 好きなこと
2. 得意なこと
3. 大事なこと

本書50ページより

 「やりたいこと」は、「好きなこと」「得意なこと」、そして「大事なこと」の掛け合わせで決まるという。「大事なこと」というのは初めて聞いた。ここが著者のオリジナル、本書のコンセプトなのだろう。では「大事なこと」とは何か。

働き方を決める上で最も重要な「大事なこと」(価値観)

「何のために働くのか?」という質問に対しての答えが「大事なこと」

本書65, 67ページより

「大事なこと」=「価値観」を知るために

「大事なこと」とは価値観だという。うーん。ちょっとわかりづらい。
 そんな人のために、本書には「5つの質問」が容易されている。最初の2つを引用しよう。

Q1 尊敬する人、尊敬する友人、好きなキャラクターは誰ですか? その人のどんなところを尊敬していますか?
Q2 幼い頃や思春期にあった、今の自分に一番大きな影響を与えている出来事or経験は何ですか? それらが自分の価値観にどう影響を与えましたか?

本書99, 101ページより

 こうして自分の価値観を探し出し、ピラミッド型にランキングしていく。わたしの場合は、「土台」にある価値観は「安心」となった。「安心」していないと何もできない。安心の上にすべてを積み上げるタイプなのだ。
 この上に「約束を守る」「分担が明確」「正確性」と積んでいき、そして「誤解を生まない」が最上位に位置する価値観となった。これが仕事の「最終目的」となる。
 こういう風に、本書はさまざまな質問に答えていくことで「好きなこと」「得意なこと」、「大事なこと」を見つけ出す。

好きなことがとくに見つからないなら

「やりたいこと」は「What(何を)」✕How(どうする)」の組み合わせです。「What=好きなこと」で「How=得意なこと」です。

本書57ページより

 「好きなこと(やりたいこと)」は、本書の質問に答えたのだが、わたしの場合はとくに見つからなかった。こういう人は巻末の「好きなことの例100リスト」からキーワードを選んでいく仕掛けになっている。このあたり、「読者を取り残さない」という意味でよく考えられた本だと思う。
 ここで選んだキーワードに「本」「音楽」「楽器」「お菓子(づくり)」、「文房具」があった。選ぶ過程で、自分の中からも別のキーワードがいくつか生まれてきた。「絵画」「雑貨」「夜に輝くもの(夜景、イルミネーション、星など)」。これが「好きなこと」となる。
 「得意なこと」は毎日noteを書いているのだから「書くこと」しかない。 
 というわけで、「好きなこと」に「本」があり「得意なこと」は「書くこと」、「大事なこと」に「誤解を生まない」「正確性」がある。ということは、わたしのやりたい、やるべき仕事は「誤解を生まない文章を送り出して本のかたちにすること」ということになった。
 じっさいに、自分は校閲者および教材ライターである。校閲者が「誤解を生まない」ために書くコメントは多いし、教材ライターは「誤解を生まない」文章を書くことが仕事である。
 つまり、この本に従って出した結果と、いまの自分とがぴったり合っている。自分がやるべきピンポイントの仕事をしているといっていいだろう。
 自分の仕事選びは間違っていなかったことがわかって「安心」した。この「安心」もわたしの土台をなすキーワードである。それがわかっただけでもこの本を読んだ価値がある。

自分の取扱説明書を作る

 もうひとつこの本の特徴として、長所を深掘りして、自分の取り扱い説明書を作るというワークがある。これで「どんな風に仕事をすればいいか」がわかるという。早速やってみた。以下にその結果を記す。

1. 孤独に強いので、一人で仕事をする。電車は苦手なので極力避ける。
2. 人を裏切らないし、裏切られると相手を許すことができないので、信頼できると思った人とだけ仕事をする。
3. いっときだけ全集中することはできず、毎日休まずコツコツとやっていくタイプなので、日々着実に進めていく仕事をいくつか同時並行する。
4. 曖昧さを排し、自分の分担をはっきりさせて仕事をする。
5. なんでも言語化できるのが売りなので、ほかの人の何かを代理で書く仕事をする。とりわけ、失礼でない文章、人を説得する文章が書けるので、そのやり方で文章を書き、また書き方を伝えていく。
6. 簡潔な文章が得意なので、同じ文字数で濃い内容の原稿が書ける。
7. ビジュアル面では図や絵が描ける一方、写真は苦手なので避ける。
8. 細部にこだわるので、緻密さが求められる仕事をする。
9. 時間と納期と約束を守るので、信頼が求められる仕事をする。電話が苦手なので、メール連絡で信頼してくれる人と仕事をする。
10. 相手が必要なときに素早くまとめて情報を提供できるので、情報提供者を必要とする人と仕事ができる。

本書に従って作った久松の「自分取り扱い説明書」

 これが「自分の仕事のやり方」である。どんな風に、どんな相手と、どういう仕事をしていくのか。ここがわかっていないと、「自分の価値観に則った、やりたくて得意な仕事」をしても幸せにはなれない。
 こういう視点は持ったことがなかった。この本で初めて「幸せになれる仕事のやり方」がわかったということになる。ふつうなら年齢的にもう遅いというところだが、わたしはフリーランス。だれとどんな風に仕事をするか、これからだって選んでいける立場である。
 というわけで、「自分のやるべき仕事」はいまやっているものであったが、やり方という面でギャラよりも大事なことがわかった。次の取引先は、これを踏まえて選ぶ。そのためにはきちんと営業しようと決心したのである。

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