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熱中症厳重警戒の頃 脱水予防!食事からも水分がとれる
地球沸騰の時代が到来、と国連グテレス事務総長が警告した。
汗が急に噴き出る、めまいや立ちくらみがする、意識がもうろうとする等は熱中症のサインですね。
これからは、災害級の熱中症対策が必須です。
熱中症予防には①室内の温度と体温を冷やして調節をする②栄養と睡眠を十分にとる③水分を補給する等があります。
中でも熱中症予防として脱水にならないよう水分補給は重要です。
とにかく水やお茶ばかり飲んでいる人、今回は脱水を予防するための水分補給について書いていきます。
〇普段の食事からも水分を
成人の1日の食事には1000~1200ml程度の水分が含まれています。
つまり、食べ物からも水分やミネラルが摂れますので、まずは1日3食をきちんと食べましょう。
暑い夏でもスープ料理(みそ汁やすまし汁等)は必要です。加えて、水やお茶を1日1200ml~1500ml(食事時のお茶が1日600ml、残り600ml~900mlの水分補給)をこまめにとれば、2200~2700mlとなり無理なく十分な水分がとれます。
激しい運動をする、汗をかく作業が続く等の場合は、もう少し飲水量を増やすことで調整します。
〇体内の水分と収支を知る
<体内の水分>
体の水分は、血液、リンパ液、組織液等の体液からできています。
その成分は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等の電解質とブドウ糖、たんぱく質、尿素等の非電解質からできている栄養のある水分です。
これらは①酸素や栄養を運ぶ②老廃物を運び出す③体温を一定に保つ等の役割がありますが、脱水によってその役割が失われると、体は危険な状態にさらされてしまいます。
成人の体液は体重の約60%、加齢とともに減少して高齢になると50%程度です。
そのため高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、クーラーを嫌う、水分不足になっても気が付かない等の状況が見られます。
私自身も、室内の温湿度計をこまめに確認しないと、体感と実際温度の違いに驚くことがあります。
<水分の収支>
成人の体に入る1日の水分量はおおよそ①食事1000ml②飲料水1200ml③体で代謝する水が300ml、合計2500mlです。
体の外に出る水分はおしっこと便で1500ml、呼吸と汗等で自然に出るのが1000ml、合計2500mlです。
これで体の水分の収支が保たれています。
この収支についても、高齢期には水分量の個人差、基礎疾病の有無などから、乱れがちになることは知っておかねばなりません。
〇脱水予防の大切さ
脱水の原因には気温の急な上昇、高温下における運動や作業、これらによる発汗、嘔吐等いろいろあります。
脱水になると、体内の水だけでなく電解質も同時に失われてしまいます。
体液の量・質ともに不足して循環不全を起こし、命の危険にさらされててしまうのが熱中症です。
適切な水分補給は熱中症予防に重要です。
では、水や電解質が大量に失われるとなぜ体に悪いのでしょうか。
<水分が失われると>
血圧が下がり各臓器の血流量が減少してしまいます。栄養が運ばれにくくなり、栄養の老廃物も体外に運び出しにくくなって、代謝が悪くなり熱がこもることで体に障害が起こります。
<電解質が失われると>
骨や筋肉の成分が不足し、神経や筋肉の活動や臓器の働きが障害を受け(例えば不整脈等が起こる)、生活に支障をきたすようになります。
とりわけ、高齢者は体の水分が減少している上食事量も少なくなり、体液の量と成分の両方が変化して脱水が重症化しやすくなります。
ご自身の体と生活状況に応じた水分補給を、こまめにする必要があります。
〇水分補給と塩分の関係
水分補給というと何が何でも水とかお茶を飲まなければ・・・と考える人が多いと思います。
先ほど書きましたように、体液は水だけではなく電解質、特に多くのナトリウムを含みますので、塩分との関係も重要です。
<塩分補給が必要な場合>
長時間、高温の場所で作業や運動をしていると、大量の汗をかき、体の水分だけではなく塩分などのミネラルも失われてしまいます。
この状態で大量に水だけをとりつづけると、電解質のバランスが乱れて体調を崩してしまいます。
大量の汗をかいたときは、水だけではなく塩分などを補給できるドリンクや塩飴などをこまめに利用すると良いでしょう。
<塩分補給が不必要な場合>
私達は、普通に食事をしていれば十分な塩分をとっています。
普段の生活でじわーっと汗をかく程度では、水だけでも十分に水分補給になります。少しずつ汗をかいたくらいでは、体の中で塩分が再度吸収されて一定を保ってくれるので、ほとんどの場合改めて食塩を補給する必要がありません。
汗をかいて失った以上の塩分をとることは、血圧の上昇や動脈硬化、腎臓病などを悪化させる要因となりますので注意が必要です。
〇スポーツ飲料で注意すること・経口補水液の活用
水分補給は水と塩分だけではありません。
体の中では、塩と糖が水分を運んでくれていますので、塩と糖のバランスがとても重要です。
<水ばかり飲んでいると>
極端に水ばかりを大量に飲み続けていると、小腸から水分が体の中に吸収され、体液全体量が増えてやがて血管の中へ水分が移動していきます。すると体液の成分が薄まってしまいます。
細胞に存在するナトリウムイオンも影響を受けて、低ナトリウム血症として、倦怠感、吐き気、嘔吐などのいわゆる水中毒の症状が現れてしまうのです。
水だけの飲み過ぎはよろしくありませんね。
<スポーツ飲料ばかり飲んでいると>
スポーツ飲料は、水と比較して糖質や電解質が多く含まれています。さっぱりした甘味で飲みやすいため、喉が渇くと多めに飲んでしまう傾向があります。
飲み続けると糖質濃度が高いために血液の浸透圧が上昇し、さらに喉が渇いてスポーツ飲料を飲み続けるという悪循環を招いてしまいます。
ペットボトル症候群の中でもスポーツ飲料を常習しているの人は要注意です。
脱水症が改善するどころか、肥満や高血糖を引き起こし、糖尿病や腎臓病がある方は悪化させてしまうからです。
<経口補水液の活用>
経口補水液といういわゆる「飲む点滴」が市販されています。
運悪く熱中症と脱水が起こってしまった場合でも、体温を下げながら、意識があり口から飲める等軽症の内は、経口補水液は有効です。
健康な人が飲むと美味しくなく、脱水ぎみの人が飲むと美味しいと感じる程度の成分ですから、体に優しくできています。
ただし、塩分制限を行っている高血圧症や、血糖コントロールを行っている糖尿病、心不全で水分管理中の方は、飲み過ぎると影響がありますので主治医にその取扱いをご相談ください。
これからは、炎天下のスポーツ時、災害避難時、室外での作業時などあらゆる場面での熱中症対策を、ご自身の生活スタイルに合わせて検討しておくとよいですね。
今回も、最後までありがとうございました。