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マインドフルネスを促す音声により、チョコレートの摂取量が減少する
健康や美容を維持するためにバランスの良い食事が重要だという事実は、現代ではもはや常識と言ってよいでしょう。
しかし、食事のコントロールは思った以上に難しいものです。
コンビニで余分な一品を買ってしまった、少しだけ食べるつもりのお菓子を気づいたら袋ごと食べていた、という経験は誰しもあるのではないでしょうか。
このような状況の中、マインドフルネスが食行動のコントロールに有効であることを示す論文「マインドフルネス食観トレーニング:Mindfulness Based Eating Awareness Training (MB-EAT)に関する基礎研究」が小山らによって発表されました。
本稿ではその内容を紹介します。
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■ 研究の背景
我々は普段、「おなかが空いたから食べよう」「満腹だから止めよう」「昨日は食べすぎたから今日は少なめにしよう」などと考え、食行動をコントロールしています。
しかし食欲を制御できない、しないこともあります。
肥満者の場合、満腹のときでも食事量が減らず、むしろわずかに増加することが実験で明らかになっていまます。また肥満者は、満腹感や味・匂いに満足して食事を止める機能が低下していることが一因と言われています。
標準体重の人の場合であっても状況によっては同じことが起こります。
多くの人は、テレビ等を見ながら、SNSをチェックしながらお菓子を食べています。普段なら食べないような量を食べきってしまったことがあるのではないでしょうか。
これは、何かに意識を向けていることで満腹感や味・匂いに注意が向かなくなり、食事を止める機能のスイッチが入らないためだと考えられています。
このような食行動の問題に対処するため、マインドフルネスが注目されています。マインドフルネスは「今この瞬間に意図的に、価値判断をすることなく、注意を向けることによって得られる気づき」と定義され、体や周囲の感覚全てをありのまま知覚し、そのまま受け止めることを目的とした行為です。
先ほどのテレビの例とは逆に、五感をフル活用して口の中やおなかの感覚・味・匂い・見た目などを徹底的に意識することで、満腹感や満足感に早く気付くことができ、自然と摂食量を減らすことができると考えられています。
このアイデアを元に開発されたのが、マインドフルネスに基づいた食事の認知療法『MB-EAT』です。
肥満症患者や過食治療のためだけでなく、健康に痩せたい人なども海外の臨床の現場で多く用いられています。
■ 研究の方法と結果
公募により、日本人女性20名(平均年齢39.4±12.2歳)が集められ、10名がME群、10名がコントロール群に振り分けられました。
実験では、ブロックチョコを4個用意し、このうち3個は実食し、4個目は食べても食べなくてもよいことが伝えられます。
「ME群」は、マインドフルネス瞑想の音声を聞きながら食べ、一方「コントロール群」は自分のペースで食べるよう指示されます。
1個食べるごとにそのチョコレートの満足度を調査票に記入してもらいます。
・チョコレートを食べた数
4個目のチョコレートを食べた人は、ME群では10人中1人であったのに対し、コントロール群では10人中7人でした。
![株式会社SEN_20211108_図1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65693834/picture_pc_ce04e19ee701faeea8bb08748a9bf9cd.png)
図1:参考文献より筆者作成
・チョコレートの満足度
ME群ではチョコレートの満足度が最初は高く、その後に大きく下がりました。一方、コントロール群は満足度が持続する傾向にありました(図2)。
チョコレートを食べた個数や、音声指示の有無はチョコレートの満足度に影響しませんでした。
![株式会社SEN_20211108_図2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65693860/picture_pc_1148ffc201bad799f45b3bf39ecab7fe.png)
図2:参考文献より筆者作成
■ 研究の考察とまとめ
この研究では、特にマインドフルネスの経験がない一般的な人でも、短時間のマインドフルネス音声でチョコレートの摂取量を減らせることが明らかになりました。
マインドフルネス瞑想の音声を聞いたグループは、チョコレートの個数が増えるにつれて食べた時の満足度が大きく下がる傾向がみられたことから、マインドフルネス瞑想の音声によって味や香りに対する満足感をより少ない個数で感じられるようになり、それが摂取量の減少につながった可能性が考えられます。
今後の研究課題として、チョコレートを食べるペースも考慮すべきだと考えられます。
ME群のほうがチョコレートを食べるペースが遅かったため、コントロール群より血糖値が上がったことによって満腹感が得られてしまい、摂取量を減少させた可能性も否定できません。
今回は、マインドフルネスが食行動やその満足感に与える影響について調査した研究を紹介しました。
マインドフルネスによる食行動のコントロールは、日本でもレッスンや講習会が行われるようになるなど、少しずつ広がりを見せています。
今回の研究が、そういった試みを科学的に支持するための礎となることを期待します。
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参考引用:小山ら、マインドフルネス食観トレーニング:Mindfulness Based Eating Awareness Training (MB-EAT)に関する基礎研究、福岡県知る大学人間社会学部紀要2020, Vol. 28, No.2, 41-53