#18 映画「千年女優」感想

隠遁生活を営むかつての名女優が少女時代からの恋に酔いしれている物語
『パーフェクトブルー』に続く今敏監督の長編アニメ第二作目。2002年9月14日公開。制作会社はマッドハウスとジェンコ。
作品は現在・過去・未来の入れ子構造になっている。

ジャンル▶︎恋愛
要素▶︎芝居
キャッチコピー▶︎「その愛は狂気にも似ている」

【脚本】
村井さだゆき氏と今敏氏が担当。
▶︎正直、普通だった。どちらかというと、面白くない。その原因は、視聴者を困惑させることができなかったからだと分析する。今監督作品のシナリオは「今、何が起こっているのか?」と常に鑑賞者に考えさせることが醍醐味だと思っている。本作は、過去と現実と未来の入れ子構造」になっている部分は今監督らしさが滲み出ているが、そこに疑問が生じなかった。淡々と主人公・千代子の記憶を辿っていくだけだからだ。そしてこの回想シーンに伏線といえるようなものはない。この作品は今監督作品の中では理解しやすい部類なのかもしれないが、それは同時に作品の魅力が薄れているとも言える。「理解しやすい=頭を使わなくていい」となってしまうため、本作品に自分はのめり込むことができなかった。
▶︎もう一点。残念なのがラストシーン。ラストのセリフでこの作品の「答え」を提示してしまっている。「だって私、あの人を追いかけている私が好きなんだもの」。いいセリフだとは思うのだが、オチに使ってしまったため視聴者が観賞後に考察する必要がなくなってしまった。もっと言えば、余韻に浸る時間を一気に削いでしまうセリフである。私だったら、言い切らない。「だって私、あの人を追いかけている私が…」ぐらいで止めてしまう。ほぼ答えだが、まだ余韻を残せるのではないだろうか。

【演出】
松尾衡氏が担当。
▶︎独特な表現をする。が、『パーフェクトブルー』のような難解さはない。というのも、千代子の回想シーンにおいてインタビュアーの立花と井田が出現するからである。この2人が出てくることで「これは現実ではない。演出の手段なのだ」と判断できる。
▶︎立花と井田が対照的なのが面白い。立花は千代子の「オタク」であるのに対し、井田にとっては昔の人でよく知らない。この2人が対になっているのは明らかだ。

【音楽】
平沢進氏が担当。
今作品の代名詞である平沢音楽が本作品で使用されている。とても良い。気持ち悪いからだ。ボーッと聞いていても、途中から引き込まれてしまい、気づいたら真剣に耳を傾けてしまう、のが平沢さんの音楽だと思っている。本作品も同様で、映像に集中しているつもりだったが、いつの間にか音楽に集中してしまった。どちらかというと曲調は明るい方なのに不気味なのである。

【総評】
監督は今敏
まぁ、悪くはないのだが物足りない。今監督らしさが弱い作品なのかと思う。しかし、昨今のお綺麗な長編アニメとは全く異なる作風は見ていて新鮮だ。今なら、そもそも企画書の段階でボツになりそうだ。

【満足度】
80点

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