長細い木の箱
昼間のバスの中から見た光景は
長細い木の箱を
二人の刑事が抱えて運んでいた
私もあの木の箱の中に
いたのかもしれない
そして大切な人が駆けつけて
泣き叫んだかもしれない
死ぬとは
そういうこと
死ぬってどういうことなのか
ずっと分からなかった
今日初めて知った
死ぬとは
木の箱で運ばれてゆく人のこと
そしてもう二度とその木の箱からは
自力で出られない人のこと
その木の箱にすがり泣き崩れる
大切な人を悲しめること
死ぬとは
私だけが死ぬのではなく
大切な人の心も同時に死ぬこと
だから私は
こんなに死ぬほどの哀しみや
絶望を抱えながらも
死ぬことはできないの
泣きながら
途方に暮れながら
無気力で
何もかも見失いながら
何度も死にたいと
思いながら生きてゆくの
泣きながら泣きながら
生きてゆくしかないの
今の私に残された
唯一の生き方はこれしかないの
だけどいつか
この生き方の先に
涙が消えた私がいたら
涙を乗り越えた私がいたら
その時は大切な人の笑顔を見て
心から幸せだと伝えたい
生きてることは
傷つきながらも
生きてる意味があるんだって
伝えたい