中島美鈴(2016)『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン~「認知行動療法」入門~』の読書感想文
中島美鈴の『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン~「認知行動療法」入門~』を読んだ。2016年に光文社新書から出された一冊だ。
認知行動療法とは
日本では、2010年4月から保険診療適用となった。これはつまり、かなり多くの人に対して効果が認められた診療方法ということになる。もちろん、合わなかった人、効果がなかった人もいると思うが、希望を感じる。
わたしは、フロイトのソファに寝転がって、自分の人生をつまびらかに語ることに、ものすごく恐怖を感じる。そこまで入り込んできてほしくない、という防衛本能がしゃべる前から働いてしまう。
「今、ここ」に集中すること、自動思考は偏っていないか、考え方の枠組み(フレームワーク)を変えよう、というのは、かなり取っつきやすい。それって大事だ。
自分の中にある抵抗感や嫌悪感は無視していいものではない。
たとえば、女性が乳がんや子宮頸がんの検診に消極的なのは、プライベートゾーンを他人に見られたくない、触られたくない、というシンプルなものだ。「女性は怠惰だ」という決めつけは、ただの偏見だ。自分の中にある「やりたくない」「行きたくない」という気持ちも尊重されるべきだし、自分で尊重してやるべきだと思う。
本書は「認知行動療法」の入門書であり、考え方や基本指針が過不足なく書かれており、とてもわかりやすかった。なかでも、印象深かったのは、「自己達成予言」だ。
自己達成予言(自己成就的予言)
英語では、self-fulfilling prophecyと呼ばれ、「自己成就的予言」と翻訳されている場合もある。
心当たりのある人も多いのではないか。嫌われているかもしれないと思った人と距離を取ったり、遠ざけているうちに、本当に仲が悪くなる、というやつである。
引き寄せの法則
この概念を援用したのがスピリチュアル系で言われている「引き寄せの法則」なのではないだろうか。
たとえば、「引き寄せの法則」では結婚したい人の条件を紙に書き出したら、本当にすべて条件が合致した人と結婚できた、というようなことが事例として挙げられる。確かに、それを達成するために行動が変容していく、といったことはあると思う。
わたしの知り合いの女性3人が、28歳になるまえに、立て続けに結婚をして、驚いたことがある。彼女たちは結婚することを決めて結婚した。強い意志を感じた。全員、すぐに出産をした。結婚、出産、子育てが人生に必須だと信じて疑わない。それぞれに事情はあったと思うが、自分自身の年齢をデッドラインにして物事を進めたのだ。成り行きとか偶然には、全然見えなかった。
行動変容を自分に促す
個人の意志ではどうにもならないこともあるが、自分の「意志」次第ということも人生にはある。マイナスの事態を招く思考があり、行動に反映され、どんどん事態を悪化させることを自分自身に奨励していくような悪循環が「自己達成予言」だ。それを防ぐためには、その思考を認知して、行動を変えていけばいいのだ。少なくとも、そのような思考をしている自分を認知するだけでも、状況は変化すると思う。
わたしは、心理的にフラットな状態になり、「何もしない。何も考えない。時間が過ぎるのを待つ」というのも、有用な気がしている。なぜなら、変化が何も起こらない人間関係はないからだ。色眼鏡を外して、その人の話すことに耳を傾け、行動だけ観察する。それだけで、解決することも多いはずだ。(もちろん、鬼や化け物からは逃げるしかないとも思う)
わたしは、うっすら「誰かが助けてくれるんじゃないか」と淡い願望をいまだに持っていたりする。救世主願望というやつだ。
しかし、これまでの人生を振り返ると、変化が起きたのは自分で考えて行動したときだけなのだ。もちろん、そのときどきで、親切にしてもらえたことはあるが、「偶然、〇〇さんが誘ってくれて」というようなうまい話に巡り合ったことはない。
ほぼほぼ、自分で決めて、自分で行動してきた。だから、行き詰ったら、行き詰ったで、自分の行動と思考を変えていくしかない。「自分次第」「自分で決めてきた」と考えられる人は、「自己効力感」の強い人だという話も聞いたことがあるので、そう悪くはないのだと思う。
「認知行動療法」について学んで、セルフケアができればいいな、と思っている。今が人生の底だと思えば、あとは上がるだけ。さらに底があるなら、底の抜けた先でやっていくしかない。