「暗闇の中にいる人」に届きますように
あー、こんなに「誰も置いてけぼりにしない」本には初めて出会った。
この前、『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』という本を読んだ。
これは、不登校・中退・引きこもりなどを経験した人に向けた個別指導塾「キズキ共育塾」を運営されている安田祐輔さんの半生を描いた本だ。
内容紹介にも書かれているように、安田さんは起業までに様々な経験をされている。
発達障害に加え、父のDV、一家離散、家なし、非行……暗闇から抜け出す手段は唯一勉強だった。
偏差値30から一流大学合格、日本初の大規模な不登校・中退者・うつ・ひきこもり・発達障害をもつ若者の進学塾を起業。いま注目の社会起業家が、生きづらさを抱えながらも輝く場所をつくりあげていくまでの記録。(内容紹介より)
きっと本に書ききれないほど、たくさんの努力をされて、今があるのだろうと思う。
それにも関わらず、安田さんの本は、決して自分の努力を押し付ける本ではなかった。
本の中では、発達障害・家族との別れ・うつ・ひきこもり、それぞれの局面での葛藤や切迫感がリアルに描かれている。
本当は「俺も頑張ったから、お前も頑張れよ」そんな風に喝を入れるだけの本にもできたと思う。
過去の経験は、自由自在に編集できるし、困難な経験をした人であるほど、「努力で成功できた」という美しいストーリーにまとめらやすいから。
でも、安田さんは、あえてそれを選ばなかったように見えた。
読んでいるうちに気づいたのは、この本は「様々な生きづらさを抱える人たち」に向けて書かれた本だということだった。
その中には、成功体験が少なく「頑張る」気力が奪われてしまっている人も含まれる。
成功体験が少なく、何度も諦めた経験を持つ人たちにとっては、喝を入れる当事者の声はつらい。「あの人は自分とは違う」と選択肢の芽を摘むことになりかねない。
彼らの道を拓くためには、まずは様々な選択肢を知ることが必要だ。
安田さんの本は、その選択肢の一つに、きっとなる。
この本は、特に子どもたちに読んでもらいたいな、と思う。
学校と家の往復だと、なかなか自分と同じような環境で育って大人になった人の存在を知る機会がない。
そして「知らない」ということが、彼らの未来を奪ってしまう。
どうか多くの何かの渦中にいる人、いた人たちに届いてほしい。
そして、願わくば、この本を読んだ人たちが、
「暗闇の中で走り続ける」ことも悪くなかった。
と、思えますように。
(了)
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本当にいい本なので、ぜひ読んで、広げてください!
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