💐どうして私には「お母さん」が二人いるのか💐
私には、二人の「お母さん」がいる。
義理の母と実の母だ。二人とも存命である。
義理の母=姑は、夫の母なので私と血の繋がりはないし、結婚前に一緒に暮らしていたわけでもない。
でも、結婚してからこちら、離れて暮らす実の母よりも、姑を「おかあさん」と呼んでいるので、文章で書くときも「姑=お母さん」がしっくりくる。
別に、「お義母さん」と書こうが「お母さん」と書こうが、読み方は「おかあさん」なのだけれど。
私が人前で「母」について語るとき、あるいは書くとき、実母を「母親」、義母を「お母さん」とするのが一番しっくりくる。
それは、「家族」という人間同士の共同生活を円滑に維持していくのに、実母よりも義母のほうが、パートナーとして密な時間を過ごしているからかもしれない。
私が嫁入りしたとき、お母さんが住んでいる建物にはまだ、おばあちゃん(義祖母)とお父さん(義父)が住んでいて、二人の介護をお母さんが一手に引き受けていた。
介護と言っても、おばあちゃんはまだ歩けるし着物もきっちり着られるし、お父さんも病気によるオン/オフがまださほどひどくなかったから、私たちも新婚らしい生活を送っていた。
それが、1年ほどでおばあちゃんが亡くなり、子供が生まれ、お父さんの具合が悪くなるにつれて、介護の比重が上がってきた。
若年性のパーキンソン病を患っていたお父さんは、普段の生活で
動ける時=ON の時間と
動けなくなる時=OFF の時間があり、
はじめの2、3年はOFFでも自分でなんとか薬を飲んで対処できていたのが、
そのうち、OFFになるとまるでブレーカーが落ちたように、ぱったり動けなくなるときが増えてきた。
そうなると、庭にいようとリビングにいようと、トイレで用を足していようとお風呂に入っていようと、岩のように動けなくなってしまう。
当然、目を離せなくなり、仕事や買い物も交代で行くようになった。
それに加え、動けなくなったお父さんの岩のような体を、安全な場所へ動かす介助が増えた。
お父さんは3年前に亡くなったが、亡くなる前の2、3年は、幻覚症状が強くなり、言葉が通じなかったり変なものが見えたり、暴力的になって近所の駐在さんを呼びに行ったり、まあバタバタだった。
しかも、お父さんの介護だけでなく二人の子供も育てなければならない。
時には動けないお父さんを放ったらかしで子供のケアに走り、時には泣きっぱなしの子供を放ったらかしでお父さんのケアに走った。
そうしたハードボイルドな日々を、お母さんと私は交代勤務のように乗り切った。
お互いがいなければ、支えきれなかったと思う。
その経験が私とお母さんの絆を深めたし、私にとっての「お母さん=義母」な理由である。
◎◎◎
私はいま、実母をほとんど「お母さん」呼びしていない。
最近だと、母の日の花に添えるメッセージで「お母さん」と書いたけれど、ラインや電話は個別のやり取りだから、改めて「お母さん」と呼びかける機会が意外とない。
そして、わりと名前で呼びかけている。
何というか、「私を育ててくれた人」という意味で呼ぶときは「お母さん」と呼べるのだけれど
一個人として呼びかけるときは、彼女は私の「母」ではなく、「○○さん」という名前の人、という感覚なのだ。
それはかつて、娘の人生と己の人生との同一視が激しかった母に対する、一種の反抗のようなものが残っているのかもしれない。
ところが最近、母が体を傷めてからまた少し変わってきたように思う。
このコロナ禍で、生活習慣が変わったために無理をした母は、これまでにない体の傷め方をした。
このままただ老いていきたいと言う母と、まだできることはあると言う私との間で何度も話し合いが行われ、二ヶ月に一度、私が通院の付き添いをしてきちんと診てもらうことになった。
そうして久しぶりに、間近で母の姿や動きに寄り添ってみると、
気持ちはしっかりしているものの「誰かに付き添われないと危ない」一人の高齢者の姿が見えてきた。
仕事で普段から、危なげな高齢者の介助をしているわけだけれど、目の前でヨロヨロしているのは、かつて私を育ててくれた人であり、20年ほどを共に暮らした人でもあった。
「雨降って地固まる」に近いのかもしれないけれど、お世話になった母に
「お母さん、危ないからこっちへ寄って」
「お母さん、今度は3階の検査室だって」
「お母さん、お昼なに食べる?」
と世話を焼けるうちに、たくさん焼いて親孝行しておこう、と思えるようになった。
まあ、人に話すときは相変わらず「母親が」とか「実家の母が」って呼ぶんですけどね。
どちらの「お母さん」にも、感謝しているし、元気でいてほしいと思う気持ちは同じ💝
※7tsujiさん、ステキなお写真お借りしました!ありがとうございます❤
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