競争させると、どうなるの④
競争は負け組を放置する 中間層を伸ばすほうが効率がいい
ここまではクラスの中の競争を見てきました。ここからはクラス間や学校間や自治体間での競争の話です。
点数を出すということは「一つのモノサシ」で測るということです。そして、それは「比べられる」ことを意味しています。例えば、全国学力学習状況調査をすれば、全国の小学校を一つのモノサシで測ったことになります。全国の教育実践を「比べられる」ということになります。もちろん比べられないような教育実践もたくさんあることは多くの教育関係者が同意してくれるとは思いますが、残念ながら人は「比べられない」ものにはあまり興味が無いようです。実際、多くの学校では全国学力学習状況調査での点数をすこしでもあげるために躍起になっていることが多いようです。
学力テストにおけるクラスの平均点を上げるためにはどうすればいいでしょうか。これには2つの有効な方法があります。それは、「過去問演習の徹底」と「学力中間層の底上げ」です。前者はそのままです。ただただ、機械的に過去問をさせて、その解説を繰り返せばいい。テストといわれるものにはある種の「型」があり、それに「慣れれば」点数は上がるものです。テストと言われるものの多くはこのような「テクニック」でカバーできる部分が多いのです。これがテスト攻略の一番の近道です。
しかし、このような手法では付いていけない層の子どもたちがいます。これまでの学習で基礎基本の定着がなされていない「学力下位層」の子どもたちです。しかし、この子たちにこれまで数年分の基礎基本の定着をさせることは非常にコスパが悪いのです。それは個別支援になっていき、教員一人あたりの子どもの人数を少なくしないといけません。仮にそれで下位層の子どもたちが中位層に近づけたとしても、平均点にそこまで大きな影響を及ぼしません。なぜなら、下位層の子どもの割合は1割から2割です。それに対して中間層は6割ほどいます。これは「2:6:2の法則」と言われています。ある集団における仕事ができる人の割合として使われる法則は、多くの学級の学力分布にも当てはまってしまいます。2割の子の底上げよりも6割の子の底上げの方がコスパがいい。時間も人員も有限ではないのに、目標を設定された場合は、より効率を求めるのは自然なことです。まあ、その感覚が欠如しているからこそ、今の学校現場は悲鳴をあげているのですが・・・。ちなみに、僕が変えたいのは「効率性」でも「時間と人員の確保」という非現実的なことでもなくて、「目標設定」の部分なのですが。
全国学力学習状況調査で隣の学校や自治体平均点よりも一点を高いところを目指すという目標は、子どもたちの学びを「過去問演習の徹底」に矮小化させ、「学力下位層」を放置することで「学力中間層の底上げ」を測るというコスパを意識した学力向上策が取られることを容認していることを学校関係者は自覚するべきなのです。