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道徳教科化に伴って「変わったこと」と「変わらないこと」

前回に引き続き、浅見氏の議論を参照しながら、「特別の教科 道徳」について概観していきましょう。

道徳の教科に伴って「変わったこと」としては、以下の2点挙げられるそうです。
①検定教科書の導入
②児童への評価

①については、文科省の検定により、一年生向け教材の「にちようびのさんぽみち」の文章内の記述が「パン屋」だったものが「我が国の郷土」という要素の不足から「和菓子」に書き換えられたなどの報道でも記憶している方も多いのではないでしょうか。
文科省側から言わせると、「特定の言葉の修正を求めたわけではない」ということみたいですが、教科書会社が検定からの指摘を受けて言葉を変更した事実から考えると、この文科省の発言を素直に聞けない部分もあります。

また、それまでは「副読本」として、地域独自の教材などを活用した歴史ある豊かな教育実践がたくさんありましたが、検定教科書の導入により、それらの地域独自の教育実践をすることができる時間が大きく減ったという側面もあります(してはいけないわけではありません)。

②については、他教科のように「3・2・1」とか「A・B・C」などの数値による評価は「特別の教科 道徳」には適さないということで、多くの自治体では「児童の学習状況を見取って、文章などで評価する」という形が取られていることが多いです。

また、浅見氏は教科化に伴っても「変わらないこと」としては、以下の3点を挙げています。
①道徳教育は全教育活動を通じて行うこと
②道徳教育の要となる道徳科の授業は年間35時間以上(一年生は34時間以上)を行うこと
③道徳教育でも、道徳科でも、その目的は、よりよく生きるための基礎となる道徳性を養うこと

これらの「変わらないこと」というのは、まさに先述の「道徳教育の充実に関する懇談会」が報告した「今までの道徳教育の課題」とリンクしてることは一目瞭然ですね。実際、現場レベルの研修会でも、「道徳は週に1時間は、必ずすること」というのは、本当に「耳にタコができる」くらい聞いた言葉でした。

 さて、以上、専門家である浅見氏の議論を参照しつつ、道徳の教科化の概要を眺めてきました。もちろん、教科化以前より「道徳の時間」は学校にありましたし、教科化以後に「その質」が大きく変容したという実感も少ないです。しかし、一方で、「道徳科」への国の期待の高まりは強く感じますし、それが「運用上」に与えた影響も多々あることは事実です。