リハビリテーション医療で起こるクレーム、トラブル、対立を解決する考え方と方法(Vol.1)
①病院現場全体でよくある事例
医療や介護の現場で起こり得る問題、いわゆるクレームは果たしてどのようなものがあるのだろうか?
よく利用者様から聞くのは
「会計が遅い」
もうこれが一番。
自動会計システムが導入されてもまだこの問題は解決されない。
そもそも予約時間に診察が始まらない事も大きく関わっているであろう。
まだまだこの問題は続きそう。
②リハビリでよくある事例
・外来リハビリを週何回にするか問題
・リハビリ以外の料金(計画書、目標支援管理料)説明問題
・リハビリ卒業(終了)問題
・エビデンスの強制、斡旋問題
・リハビリに対する不適切な説明問題
・セラピストと対象者の方向性の食い違い問題
・新人はやめてくれ問題
などなど
リハビリの中で直接的なクレームは、医療現場では少ない印象である。
医療はリハビリだけを受診しにきている利用者は少ない。
入院も外来もリハビリは”医師からの処方の一つ”に過ぎないからである。
という訳で、クレームの矛先は事務や看護、医師に向けられる事が多い。
しかし回復期リハビリテーション病院(病棟)や介護保険分野ではまったく違う。
今回は回復期リハビリテーション病院を想定し、文字に起こしておく。
利用者様はリハビリテーション医療を受けに入院している。
その為、その矛先はリハビリに向けられる事が多い。
ここから読み取れる事は、当たり前の事であるが利用者様が一体何の為に入院(外来)しているのかが焦点である。
意外にこの当たり前の教育ができておらず、問題に発展する事が多い印象である。
”回復期リハビリテーション病院に入院している理由は、なにか?”
家に帰る準備?
社会復帰の準備?
これを理解しない療法士は、利用者様と対立してしまう可能性が高い。
”担当者変更して欲しい”
このようなトラブルに直面し、後輩教育も行なってきた。
しかし繰り返される。
一体なぜか!?
”やはり人は人。他人の気持ちはわかってあげられない”
入院もした事ない20歳代の新人にわかれと言ってもわからない。
当たり前であろう。
ではどのように教育していくべきなのか?
③人は対立する動物?
ヒトとは、生物学的存在であり社会学的存在である。
ウィキペディアにも関係や社会という言葉が使われている。
我々がヒトである以上、関係や社会は切っても切り離せない事なのである。
これを理解すると、対立やクレームは当たり前である。
④問題解決はこれまでの経験に委ねられる
私は養成校でも、実習先でも、社会人1年目の新人研修でも教育されていない。
始めてバイトしたファミレスでも教えてもらっていない。
たぶん皆さんもそうでないでしょうか?
社会人として新人研修の一貫にクレーム対応、クレーム処理といったものはあったが、それも管理者や責任者へバトンを繋ぐ方法である。
その為、個人間で起こったトラブル、問題、対立は、経験に委ねられる訳である。
エビデンスは全て自分の経験に基づくものである。
例にも記載したが、兄弟や友達また親喧嘩で身に付いてきたものが自然と出てしまう可能性が高い。
おわかりの通り、人も場面も違う為、全てこれで解決できない訳である。
逆に解決できると思って、発信した言動により、さらに問題が大きく発展する可能性がある事は忘れてはいけない。
⑤人の気持ちをわかりなさい
よく親、祖父母、学校の先生に言われた事を記憶している。
自分が経験していない入院や怪我、病気は、わからないものである。
鬱など精神疾患がない限り、怪我や病気、入院していても”幸せでいたい”であろう。
入院している対象者で考えると、病院では非常に難しい。
少しでも幸福を感じるにはどうすべきか?
その為には、対象者と医療者は関係性の構築が欠かせない。
しかし対象者と医療者は互い別の世界で生きている。
医療者は、週5日で働いている。帰ったら主婦する。子育てする。
対象者は、毎日入院している。帰ったら1人。
これだけ状況が違えば、対立や問題は必ず生じてしまう。
ではどのように良い関係を構築して、幸せを感じても貰うか?
それは
”どちらかが我慢する” ”どちらかが演技する”
である。
どちらも必ずストレスがかかる。
これを対象者にさせると、どんどん問題が積み重なり、エスカレーションするであろう。
それが対立や問題、トラブル、クレームに繋がる。
その為、我々医療者は、対象者に対してこれをしなければならないのであろう。
しかし関係性が構築されるまでにかなりの労力とエネルギーを使う。
後述するが、自分の精神や体調管理は最重要である。
対象者は入院であり、医療者は無意識的に上の立場もある。
その為、このような問題を医療者側がキャッチしにくく、表面化せず、潜在化する可能性が高いのである。
⑥医療者と対象者の問題はどれくらい起こってる?
‣25~40%で何らかの問題起こっている
これはあくまでも隠蔽されやすい中での結果である
‣医療者側の態度によって問題が生じる
‣医療者側の病気や障害の理解がない、意見の一貫性がない
‣共感性の低い医者は訴訟リスクが高い
(Weingarten MA, Guttman N, Abramovitch H, Margalit RS, Roter D, Ziv A, Yaphe J, Borkan JM. An anatomy of conflicts in primary care encounters: a multi-method study. Fam Pract. 2010 Feb;27(1):93-100.)
(Levinson W, Roter DL, Mullooly JP, Dull VT, Frankel RM. Physician-patient communication. The relationship with malpractice claims among primary care physicians and surgeons. JAMA. 1997 Feb 19;277(7):553-9)
(Beckman HB, Markakis KM, Suchman AL, Frankel RM. The Doctor-Patient Relationship and Malpractice: Lessons From Plaintiff Depositions. Arch Intern Med. 1994;154(12):1365–1370.)
潜在化されている中で、このパーセンテージはどう捉えますか?
私は高いと感じる。
もちろん100%問題なく、幸せな入院生活やリハビリテーションを受けて、退院していく対象者は少ないであろう。
⑦まとめ
今回は、回復期リハビリテーション病院で生じやすい医療者と対象者の問題、トラブル、対立についてまとめた。
ヒトとヒトの関係構築は当たり前であるが、その方法論や考え方は教育されていない現状がある。
その中、経験ベースと論文から今回のテーマを紐解き、対象者がどのような世界で今を生きているかを考える重要性を記述した。
次回は、具体的な対応について更に掘り下げてみようと思う。
最後まで拝見して頂き、有難うございました。