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雨の中パンを買いに行く

わたしは雨が苦手だ。雨は全てのやる気を削ぐ。大事な予定があっても、当日雨が降ると足を運ぶ気が一気になくなる。可能なら予定をキャンセルしたいくらいだ。雨で服や靴下が濡れることも嫌いだし、雨によって引き起こされる蒸れた空気、べたつき、においなども苦手だ。とにかく雨の日は何もしたくない、出かけたくない。

ただ、特に予定もなく、家で過ごしている時に降る雨に関しては構わない。むしろそんな時は、その雨音を楽しむくらい気持ちに余裕がある。オフの日に雨音を聴きながら惰眠を貪る心地よさと言ったらない。
こんな風だから、わたしがオフの雨の日にわざわざ予定をつくって外出するなんてことは、滅多にないのだ。

話は変わって最近、休日の昼はパン屋で買ったパンを食べるのが習慣になっている。
パン屋は楽しい。シーズンごとにパンのラインナップが変化し、季節の食材を活かした見た目も鮮やかなパンが所狭しと店内に並ぶ。この季節限定パンが出たら、一度は食べるようにしている。

王道の定番パンももちろん美味しい。むしろ定番パンこそ、パン屋の実力が出るのではないだろうか。たとえば、レーズン食パンなんかは、パン屋の腕の見せ所。トーストして、たっぷりバターを塗ったそれを一口齧った時の、香り、しっとり感、甘じょっぱさ…この多幸福感は、市販の食パンからはなかなか得られないだろう。あまりの美味しさに、あっという間に食べ終えてしまうし、完食後はこんな美味しいパンを作ってくれるパン屋スタッフの皆さんに深く感謝をするのであった。

そんな、休日パン食にハマっているわたしだったが、残念なことに、先週今週は台風の影響で、週末は悪天候が続いていた。同時に激しい気圧の変化により、体調もなかなか思わしくない。こりゃ、パン屋に行くのは無理だ。頭ではそう考えているが、パン屋に行けないと思えば思うほど、美味しかったいろんなパンの味や香りが思い出され、ぐうぐうと腹が鳴る。

雨が降っているし、パン屋には行かない。
そう思っているのに、二度寝、三度寝を繰り返し、目を覚ますたびに窓の外を見て天候をチェックしてしまう。そして、何度目かの天候チェック時に転機が訪れた。雨脚が弱まった「いまだ!」という瞬間に、わたしは家を飛び出し、自転車に乗る。あんなに雨が嫌いなわたしが、雨がぱらつく中パン屋に向かって真っ直ぐに走り出した。

しかし、程なくして再び雨が降り始める。「いまだ!」というわたしの直感は大ハズレだった。雨脚はどんどん強まり、パン屋に着く頃にはザンザン降りとなっていた。
とはいえ、パン屋に着けばもうこっちのものだ。この悪天候の影響で客足の少ない店内。じっくりとパンを物色し、好きなだけパンを購入すると、激しい雨の中わたしは再び自転車で走り出した。
帰りもまた、雨脚が弱まったタイミングを見て自転車に飛び乗ったが、結局ものすごく降られた。前髪が額に張り付き、しっとりと濡れたマスクの下には、穏やかな笑顔がたたえられていたと思う。

…というようなことを、わたしは2週続けて繰り返している。雨の日出不精のわたしが、自分から外に飛び出すことなんて滅多にない。そのわたしを、パン屋のパンが突き動かしてくれた。

雨でびしょ濡れになり、帰るとすぐにシャワーを浴びる。あたたかいコーヒーを淹れ、キウイ入りヨーグルトを用意し、パンを切ってお皿に盛る。そうしてパンを食べる。苦労して手に入れたパンは、また格段に美味しい。こうして、今回のわたしの休日も大変充実したものとなった。
パン大好き!

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