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母の表情が曇った日

鋼の様なメンタルを持つ母。

過酷な幼少期を経て、確固たる自我を確立。

「誰も、私を傷付けることは出来んのよ!」

「他人ごときが!」

生まれてすぐに親に捨てられてしまった母は、物心付いた時から、自分で自分を守らねばなりませんでした。

不幸な環境下に置かれた母は、更なるハンディを背負っていました。

神は、類い稀なる美貌を母に授けてしまったのです。

目立つ存在であったことで、絶えず周りの大人達の攻撃を受け続けた母。

しかし、この可愛げの無い子供は、かなり早い時期から悟っていました。

それが、妬みであることを。

「私は、誰もが手に入れられないモノを持っている!」

皮肉にも、そのことは、母の心の支えとなり、厳しい環境を乗り切る力にもなっていたのでした…。

後に、母自身はこのことを反省します。

「私は、ただの天然現象にすがって生きていたに過ぎない!」

大変、気性の激しい母。

幼い頃の私には、少々重荷であったことは、事実です。

母と激しい言い争いをした、ある日の私。

「お母さんは、人の愛情など無くても生きられるんやろー?」

そう、叫んでしまいました…。

一瞬、悲しげな表情をした母。

とても珍しい光景でした。

(母も、人間としての普通の感情を持っていたのか…)

今でも、この時の母の表情を忘れることはできません。

私の心の痛みとなって、一生残り続けることでしょう…。

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