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“概数”って結構使ってますよね?(2024慶大/理工)

現在数学を学んでいる中高生の皆さんの中には、
「こんなこと一体どこで役に立つの?」
と日々愚痴をこぼしている“数学嫌い”の人もいるかもしれません。

確かに
「数学Ⅱ・B以降の課程」
に関しては、分野によっては、今後社会に出てからほとんど使うことのない知識となる可能性もあります。

しかし、本noteで主に扱っている
数学Ⅰ・Aまでの課程
に関しては、結構日常生活で接することの多い内容も含まれ、
社会人としての基礎的素養
といっても過言ではありません。

また、将来自分のこどもを育てるようになれば、そのくらいの素養がないと“ナメられて”しまうかもしれませんね。

何より
論理的思考展開力
を鍛えるには、
ちょうど良いかげんの“難しさ”を課してくる
科目でもあります。

1問ずつで良いので、
ああでもない…こうでもない…
と、何日かかっても
とことん考え抜いて
みましょう。

「数学の問題には必ず答えが存在する」
ので、そこに到達できた達成感を是非味わってほしいと思います。


さて、
“概数”を活用する機会
って、日常生活において結構ありますよね。

「鳥が恐竜の子孫!?」
のような驚きは感じないでしょうが、
数学で学んだことが基礎となっている日常行動」
の一つが“概数の活用”ですね。


どちらの割り引きの方がお得なの?

割り勘するといくらくらいになるの?

このテスト結果はどのくらいのレベルなの?

あとどれくらい並ぶ必要がありそう?


計算が苦手だったとしても、日々の生活の中で何とか概数をはじき出して考えたりしていますよね。
(※ほとんどの人が携帯端末を所持している現在、様々な便利アプリを使えば解決するかもしれませんが、あまりにも“自らの脳を使わなくなる”ことへの危機感はありませんか…?)

数学を学ぶことで体得してほしいことは、
論理的思考展開力を身につける
ことに尽きると言っても過言ではありませんが、
概数を活用する力をつける」
ことの方が、一番身近な成果として実感できるのかもしれません。

以前扱った、
「分母か分子を揃えて分数の大小を比較する」
ことは皆さん普通にやっていると思います。

また、数学の問題っぽさは否めませんが、
「$${2^{27}}$$と$${3^{18}}$$ではどちらが大きいか?」
という比較をしたい場合も、実際に手計算するのは大変ですが、
「$${8^9}$$と$${9^9}$$の大小比較を行えばいい」
とわかるのは、数学の素養があってこそですね。

つまり、
数の大小を比較する原理
さえわかっていれば、簡単に暗算で比較することもできますし、一見込み入った計算が必要になりそうであっても、“概数を活用する”ことで意外と簡単に比較できてしまうこともあります。

そのような
数学を学びながら培った力
は、日常生活では色々と役立ってくれます。


今年のある大学の入学試験の冒頭で、
2024の6乗根に最も近い自然数は?
という設問がありました。

「2024の6乗根」
とは、
「6乗したら2024となる数」
という意味です。

“自然数”という限定条件がついているので、小学生でも取り組むことは可能です。


まず、
概ねどのくらいの数か?
のあたりをつけましょう。

例えば、
「$${5^6}$$」
だと、
「125×125」
なので、2024をはるかに超えてしまうことは明らかですね。

そこで、少なくとも
「$${2^6}$$=64」
よりは大きいことはすぐわかるので、
「“3~4”の6乗あたりだろう」
という見当がつきます。

「$${3^6}$$=729、$${4^6}$$=4096」
であることから、
3<2024の6乗根<4
とわかります。

しかし、
「2024は“$${3^6}$$”の方に近い」
ことを根拠に、
「2024の6乗根に最も近い近い自然数は3」
とするのは早計です。


ニュースなどで、
指数関数的に増える
との表現を目や耳にしたことはありませんか。

「1より大きな数の累乗」
であれば、その指数が少ない段階から驚異的に大きな値になってきます。

わかりやすくするために、
「指数関数y=$${2^x}$$とz=$${3^x}$$」
で比較してみると、
「x=1のときy=2,z=3で“差は1”」
ですが、
「x=6のときy=64,z=729で“差は665”」
とかなり広がってしまいます。

つまり、
6乗もしてしまうと元の数どうしの差とはかけ離れてくる
と心して対処する必要があります。


では、どうすればいいでしょうか。


この設問では
「最も近い自然数」
を問うているので、
“3と4の中間値である7/2”の6乗と2024の比較
を行うことで、
「3と4のどちらに近いか」
を正確に答えることができますね。

「$${(7/2)^6}$$=117649/64」
となりますが、若干計算が面倒なことから
「$${7^6}$$を“概数”で求める」(※)
方法もありますが、
「その方法によっては答えを左右しかねない」
ので、このくらいの計算はしてしまった方が無難でしょう。

但し、
「117649/64」
の計算は、
筆算で2が立たない(つまり2000未満)
とわかった段階まででOKです。

(※「$${7^6}$$=$${49^3}$$≒$${50^3}$$」
を用いる訳ですが、“結果論的”には
「$${50^3}$$/$${2^6}$$<2000」
となるため、概数で検討を進めても問題ないとわかりますが、試験中であれば“手戻り”のリスクを避けるためにも上記の方法をとるべきでしょう。)

つまり、
「$${(7/2)^6}$$=117649/64<2024<$${4^6}$$=4096」
とわかるので、
最も近い自然数は4
となりますね。


因みに、この設問の前段に
【2024の6番目に大きな約数は?】
との設問がありますが、その求め方はわかりますね。

まず、2024を素因数分解して
「小さいものから数えて6番目の約数=22」
が簡単に求められることを利用して、
「2024÷22」
より、
∴6番目に大きな約数=92


(2024慶應義塾大学/理工)

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