過去問集の“模範解答”は最適解法とは限りませんよ!
受験生の皆さんは、志望校の過去問集と向き合う機会が増えてきていることと思います。
その際、“模範解答”をみて、
「こんな面倒な解き方をするんだ…」
「とても自分には無理だから“捨て問”かな…」
などと感じたことも少なくないと思います。
しかるべき塾に通っているのであれば、そこの信頼できる先生に相談してみれば解決しますが、ほぼ独学で挑んでいる受験生の場合、学校に信頼できる先生がもしいなければ、モヤモヤしたまま「手を出すべき問題」を自ら取捨選択せざるを得ないでしょう。
そんな受験生のためにも、
「過去問集の解説には必ず最適解法を記載する」
ように慎重を期してもらいたいものです。
編集サイドにできることとしては、
「信頼できる執筆者を選定する」
ことと、三重までは難しいとしても、せめて「ダブルチェックを完全に機能させる」
ことです。
何らかの作業をしているところに、生徒が、
「この問題、どうしても答えが合わないんですけれど…」
と、初見の問題を持ってきた場合、忙しさにかまけて
「問題をサッと読んですぐ生徒の答案をみる」
ということをしてしまうと、見事に生徒の“誤ったロジック”にはまってしまって、
「あれ?本当だねぇ…ちょっと待ってよ…」
と、問題を読み直して再び解くはめになってしまうことも、難問であればあり得るのです。
こんな場合、どんなに忙しくても、必ず
「まず自分で解いてみる」
ことが、この生徒にしっかり向き合うためには必要なことなのです。
つまり、
「ダブルチェック→フルチェックを2人が行うこと」
であり、
「他人の記述したものを黙読でチェックする」
ような方法だと、どうしても
「“その人のロジック”に流されてしまいがち」
となり、
「新たな視点を見落としたりする」
ことにもつながってしまいかねません。
時間的、金銭的な面から、このような過程を省くことも理解できなくはないものの、
「その過去問集を頼りに日々勉強に励む受験生」
のことを考えれば、決して省く選択をするべきではないでしょう。
さて、今回取り上げるのは、
「四角錘の体積を求める問題」
です。
その求め方は、
「底面四角形の面積×高さ×1/3」
が基本ではあるものの、難関校であればあるほど、
「その方法では計算が大変になるように設定」
されている問題の方が多いでしょう。
とすると、
「時間マネジメントが特に大切!」
な入試においては、
「様々な四角錘の体積の求め方」
の中から、その問題の与条件に応じた
「“できるだけ簡単”な計算で済む方法」
を選択すべきですね。
それなのに、過去問集などの“模範解答”で「“面倒な解法”しか示されていない」
となると、
「解法の様々な選択肢」
をまだ獲得していない受験生にとっては、「そうするしかないのか…」
と愚直に信じて取り組んでいくか、
「こんな面倒な解き方しかないのなら捨てよう…」
というモッタイナイ判断を下してしまうかもしれませんね。
そのような受験生の一助となるべく、次の問題を取り上げることにしましょう。
【問題】
長方形ABCDを底面とする四角錘O-ABCDで、
「OA=AB=1,OD=CD,∠OAB=∠ODC=∠AOD=90゜」
とする。
辺OAの中点をMとし、3点M,C,Dを通る平面で四角錘O-ABCDを切断したとき、点Oを含む方の立体の体積を求めよ。
ある過去問集には
“難問マーク”
がついていましたが、それは
「愚直に求めていくならば…」
の話であり、確かに面倒な計算を要するでしょう。
難関校をめざしている受験生ならば、この時期ならばさすがに皆知っているであろう“あの解法”を応用すれば、簡単に解けてしまいますね。
【解説】
“模範解答”では、
「切断面から点Oまでの高さ」
をわざわざ求めていましたが、
「そんなことをしようとするから計算が大変」
になるんですよね…
このような体積を求める場合の第一選択は、
「三角錐に分割して“体積比”を活用」
する方法で、“模範解答”よりもずっと簡単です。
しかし、
「立体の特性をよく理解する」
ことで、さらに“もっと楽な方法”があることがわかりますね。
「面OAD⊥面OAB,面OCD」
であることから、
「△OMD×(1/2+1)×1/3」
で簡単に求められますね。
(※名称が不穏当なのであまり使いたくはないのですが“断頭三角柱”の求積法を応用する訳です)
∴ 1/4×3/2×1/3=1/8
(2024桐朋・改題)