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【ヨガ哲学】「頑張れない日」の自分を許す方法 - インド🇮🇳の聖者が語る心のバランス
ケロリンは、雨の音を聞きながら、心の中で激しく揺れていた。インドまで来て、ようやく変われたと思っていた。昨日までは早起きして、朝ヨガもできていた。自分を少し誇らしく感じていた。
「でも今日は、身体が重くて何もできなかった……。(安定の三日坊主)」
ただ怠けていたわけではない。それでも、何もできなかった自分が許せない。せっかくここまで来たのに、日本にいるときと同じような無力感に襲われている。
気がつけば、グルのもとへ向かっていた。グルは静かにケロリンを見つめ、微笑んだ。
プラクリティ(変化する自然)とプルシャ(変わらぬ自己)
「ケロリンよ、風が吹けば葉は揺れる。だが、その揺れを見て『この木はダメな木だ』と言う者はいない。精神が揺れるのもまた、自然のことではないか?」
ケロリンははっとした。
「でも、僕はその揺れに振り回されてばかりです。昨日まではちゃんとヨガを続けられていたのに、今日は何もできなくて……。やっと変われたと思ったのに、また落ち込んでしまいました。」
グルは静かに首を振った。
「それは、プラクリティ(Prakriti)の働きによるものだよ。」
「プラクリティ?」
「プラクリティとは、"自然界のすべての変化するもの" のことだ。お前の身体が重く感じるのも、感情が揺れるのも、天気が変わるのと同じようにプラクリティの作用なのだ。」
「でも、それじゃあ僕はただ流されているだけでは?」
グルは目を細め、優しく言った。
「だが、お前の中にはプルシャ(Purusha)がある。」
「プルシャ?」
「プルシャとは、お前の中にある '変わらない本質' のことだ。お前が揺れを感じているということは、それを観察している何かがあるからだろう? それこそがプルシャなのだ。雨の日の木が根を張るように、お前の意識もまた揺れながら根を張っているのだよ。」
グナ(性質)の影響を理解する
ケロリンは少し考え込んだ。
「でも、今日は本当に身体が重くて何もできませんでした。それでも、自分を責めずにいるにはどうしたらいいですか?」
グルは窓の外の雨を見ながら答えた。
「それは 'タマス(Tamas)' の影響だろう。」
「タマス?」
「ヨガでは、この世界のすべてのエネルギーを 'グナ(Guna)' という三つの性質に分類する。
サットヴァ(Sattva):純粋さ、調和、明晰さ
ラジャス(Rajas):活動性、情熱、興奮
タマス(Tamas):停滞、重さ、怠さ
「雨の日は、タマスが優勢になりやすい。タマスが強くなると、身体が重く感じたり、やる気が出なくなったりするのだ。」
「じゃあ、タマスをなくせばいいんですか?」
グルは微笑んだ。
「タマスは悪いものではない。ただ、バランスをとることが大事だ。例えば、夜にしっかり眠るのもタマスの作用だが、それがなければ健康を維持できないだろう?」
「じゃあ、今日は無理に動かなくてもいいんですか?」
「無理に抗う必要はない。ただ、ほんの少しサットヴァ(調和のエネルギー)を増やす工夫をするといい。例えば、温かいハーブティーを飲む、軽いストレッチをする、落ち着いた音楽を聴く。それだけでも、タマスの重さを和らげることができる。」
変わるとは、揺れながらも立ち続けること
ケロリンは少しずつ、気持ちが落ち着いてきた気がした。
「でも、僕は本当に変われるんでしょうか……?」
グルは優しく微笑んだ。
「変わることは、揺れが止まることではない。揺れながらも、なお立ち続けることなのだ。雨が降る日も、太陽が照る日も、木はそこにある。ケロリンよ、お前も同じだ。今日の '重さ' すら、お前が根を張るための大切な時間なのだから。」
ケロリンは窓の外を見た。雨はまだ降っていたが、さっきよりも静かに感じられた。自分の心もまた、揺れながら、ゆっくりと根を張ろうとしているのかもしれない。