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【401/1096】野生動物はトラウマにならない

401日目。また1からの始まりである。100日ごとにくる。一歩一歩ですな。


トラウマの時代と言われる。
80年代から90年代にかけて、徐々に世界がトラウマの時代に入った。

先日の津田真人先生によると、「日本は、95年からトラウマの時代に入った。まさにあの年に肌感覚、身体感覚がかわった」とおっしゃっていて、興味深い。
95年は、阪神淡路大震災が起き、地下鉄サリン事件が起きた。

トラウマの時代に入る前は、ストレスの時代で、ストレスの時代は自律神経系で言えば、交感神経が活性化している時代ともいえる。
モーレツサラリーマンが24時間戦えますか?と歌い、若者は内ゲバや暴走族という大人に歯向かうという行動をとり、親と喧嘩して家出した時代。
交感神経は、能動的に動いて問題を解決する。

トラウマの時代とは、自分では動かないで環境が変わるのを待つ時代である。
自律神経系で言うと、背側迷走神経群の凍り付き状態に入っている。受動的な形で問題を解決しようとする。
サラリーマンは過労死が問題となり、若者はいじめと引きこもりに問題は移行していく。

時代によって、防衛反応の仕方が違うというのが興味深い。
津田先生によると、ストレスの時代とトラウマの時代は歴史上繰り返されてきていて、各トラウマの時代にヨーガや、東洋医学、宗教がはじまってきているそうだ。
次の新しい文明への布石がトラウマの時代なのかもしれない。

トラウマは人間だけが持っている症状である。

野生動物は、危機に直面すると、「闘う」か「逃げる」かを選択する。どちらも出来ない場合にだけ、「フリーズ(固まる)」を選ぶ。フリーズは、ものすごいエネルギーを使って、「仮死状態」になることである。感覚を遮断する。

人間もこの仕組みは同じだが、人間は脳が発達しすぎたため、仮死状態になれない。
仮死状態になると脳に酸素が足りなくなり、戻ってこれなくなるからである。そのため、解離する。

ただし、野生動物は、人間のようにPTSDになったりしない。解離の状態が長く残ってしまうということもない。

野生動物は、安全が確かめられたら、全身で身震いしてフリーズ状態を解除する。そして、何事もなかったかのように歩き始める。

11:00 シロクマの不動反応とそこから抜け出す様子(13:20)

(この動画は、SE™(Somatic Experiencing®)創始者のピーターリヴァインによるSE™の紹介と、デモセッションのダイジェスト、多重迷走神経の説明、動物の凍り付き反応の様子などが紹介されている。)

ところが、人間は、脳が発達しすぎたため、この解除の仕組みがうまく機能しないことがある。
解離が解除されない。
すると、行き場のないエネルギーがそのまま身体に残って様々な不具合が発生する。

この状態は、かなり原始的な状態である。
そのため、高次の脳の機能を使う(思考、意志決定など)ことができない。
脳の情動や身体感覚をつかさどる部分に残っているからである。

だから、身体を使って、エネルギーを徐々に解除していく方法が安全で、身体を使う方法だと、言葉でトラウマ体験を語る必要もなく、その時の感情を再体験する必要もない。
「あの過去の体験は終わったのだ」と身体が納得してくれることが大事なのである。

トラウマは、自分や他者や世界に対して、ネガティブな考えを持ち、自分には価値がない、自分は汚れている、自分はどうしようもないというネガティブな感情が、その人の人格構造全体に影響を及ぼしている。
これが相当根深く、やっかいである。

「自分でやって(思って)いるのだから、自分でやめればいいじゃないか」
と言うのは、意志の力で自己コントロールできる人の言葉である。
トラウマと言うのは、冷凍保存された記憶が根底となって、自己コントロール力を奪っているので、これができる状態にない。

今まで主流だったトラウマ治療は、トップダウンと言われる方法で、トラウマを語る必要があった。単にそのときの事実を語るだけではなく、その時の感情を生々しく思い出して語り、そこを通ってもなおかつ、安全で、コントロール可能であるという体験をする必要がある。
持続エクスポージャー(PE)、認知処理療法(CPT)、トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)、眼球運動による脱感作と再処理法(EDMR)などである。

ソマティック・エクスペリエンシング(SE)や、トラウマ解放エクササイズ(TRE)、ブレインジムなどのように身体や身体の動きに働きかけるものや鍼灸、思考場療法(TFT)、ヒーリング、フラワーエッセンスなどで自然治癒力を回復させるものは、ボトムアップと呼ばれ、今、注目されている。

トラウマには単回性(事故や災害など特定の事象によるもの)のものと、複雑性(虐待、暴力等の日常的に一定期間受け続けているもの)のものがある。
自分に合っているものを複数受けて、時間をかけて回復していくことが多い。

私も、野生動物のように回復できればよいのに、と何度思ったか知れないが、人間はそのようにはできていない。
トラウマ後の傷の回復は、単純明快にはいかないし、「なぜ私がこんな目に・・・」というものである。

それでも、トラウマは、そこまでしても、生き延びようとしてくれた、まさに生かされているチカラであるということ。
そのことに気づかせてもらう機会でもある。

ただし、トラウマが回復しても、スーパーマンになるわけではなく、単に普通の人に戻るだけである。
運動音痴の人が、トップアスリートになるわけではないというのは、知っておくとよいかもしれない。
イヤな感情がなくなったり、嫌いな人を好きになったりはしないのである。

というわけで、今日のところはこの辺で。

では、またね。


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Mayumi INABA
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