映画のはなし:日本での公開中止!私には理解できない『マザー!』
邦画ではなく(こっちの『Mother』も理解できないな、と思ったけど)、ダーレン・アロノフスキーの監督作のほうです。『π』や『レクイエム・フォー・ドリーム』、『ブラック・スワン』の監督なので、観たことのある方は方向性がなんとなく分かるかな、と思いますが、スリラーというかホラーというか、もれなく私みたいな凡人には理解できないキャラクターが登場するような映画を作る人ですね。
『マザー!』も出演者が豪華で、ハビエル・バルデム、ジェニファー・ローレンス、エド・ハリス、ミシェル・ファイファー、ドーナル・グリーソン。ドーナル・グリーソンは兄弟の役なのですが、本当の兄弟で出演。
そして「日本でも公開しますよー」と告知していたのに、結局公開中止になってしまった作品。
そんなことされたら余計に観たくなるじゃん!と、パッケージ化された瞬間に観たのですが、いやいやどうして、いままでのどの作品よりも理解不能でした。
人里離れた場所に暮らす詩人の夫とその妻のもとに、見知らぬ男が訪れてきた。
妻は不審がるが、夫は快くその男を受け入れ、もてなす。そして次に現れたのはその夫の妻、そして息子たち。その後も見知らぬ訪問客が次々と訪れる。妻は気味悪がり、その都度訪問客らを帰すよう夫に頼むが、夫はそれを聞き入れない。
そして妻が妊娠。待望の子どもを授かったふたりだが、妻の不安が現実となってしまう。
ハビエル・バルデムってだけで十分不穏なんですけど(この人、マジで怖いよね!絶対『ノーカントリー』の影響)、まぁとにかく終始気味が悪い。
「あの人いつまでこの家にいるの?帰るように言って」
「なんで?せっかく遠くから来たんだ。もっと優しくしてあげるべきだ」
という妻と夫の会話にはじまり、
「ここは私たちの寝室なの。お願い出てって」
「……わかったよ。じゃぁ別の部屋に行くよ」
という訪問客との会話。
こんな感じのやり取りが終始続くわけです。
アンタら、知り合いじゃないだろう!押しかけ来訪だろう!なんでそんな「自分、正しいですけど」みたいな態度でいられるのよ!!
もうね、終始意味が分からないわけですよ。「不条理」なんて言葉じゃ足りないくらい。
コールセンターで働いたことがある知人に、「コールセンターってクレーマーとか多そうだし大変そうだよね」と言ったら、「クレーマーでも、何に対してのクレームかわかれば対応はできるからそんなに大変じゃない。一番大変なのは、何を言ってるか理解できない人」と返されたのを思い出しました。たぶん、こういうことだったんだろうな。
だってホント、全員が何を言ってるのか、全く理解ができないんですよ。
ラスト20分がマジでカオス(これが原因で日本公開を中止したのでは?と噂された)。ジェニファー・ローレンスが撮影中に過呼吸になってしまったくらいカオス。
キリスト教のメタファーとも言われている作品ですが、仏教徒の私からすると「いや、理解はできるけどちょっと意味がわからない」となる作品です。
そして個人的にこの映画で一番の衝撃は、ラストのラスト!
クレジットと共に流れる、スキータ・デイヴィスの「The End of The World」。
私が子どもの頃、我家は車移動がメインだったのですが、その車中で流れていた洋楽の中でも、私が強烈に好きだった歌。父親セレクトだったんだと思いますが、とにかくこの曲のメロディが私の琴線を刺激して(そして今はノスタルジーまでオンされてるから)、聞くだけで涙が出るほど好きな一曲なのです。
なので、「理解不能なカオスな映画だったけど、これはこれでいい映画なのかも」という錯覚に陥りました。
ちょっといい作品かも、と思ったのはやっぱり錯覚だったのか、それとも本当に名作なのか確かめたくて観直してみたけど、やっぱりよく分かりませんでした。
とりあえず、ハビエル・バルデムとジェニファー・ローレンスが夫婦役、ってのがまず意味不明なのよ。
登場人物の名前が誰も出てこない、ってのも不気味なのよね。この映画。