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おいしいものから生まれる小さなストーリー

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「おいしいもの」から想像した小さなストーリー(小説)&エッセイ集です。
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#おいしいものから生まれる小さなストーリー

おいしいものから生まれる小さなストーリー(小説&エッセイ)

『おいしいものから生まれる小さなストーリー』は、実際にあるお菓子等を物語の種として、そこ…

エッセイ『豊島屋の鳩サブレ―』

 鎌倉市民でも神奈川県民でもない自分だけれど、鳩サブレ―にはなぜだか子どものころから親し…

小説『のりこさんとみつこさん』

******  のりこさんは今日、半休をとって、みつこさんとふたりで鎌倉にやってきました…

エッセイ『ユーハイムのバウムクーヘン』

 いまでこそ、いろんなメーカーのバウムクーヘンを知るようになったけれど、子供のころから馴…

小説『年輪はやさしく甘く包まれて』

******  子どものころからいつも、家に帰るとまず聞こえてくるのはピアノの音楽だった…

小説『羊羹と犬と梅の花』

おいしいものから生まれる小さなストーリー〈番外編〉をお届けします。 以前投稿した『羊羹と…

エッセイ『資生堂パーラーの花椿ビスケット』

 花椿ビスケットの美しい缶を見ると、胸がときめく。  それは子どもの頃、祖母の鏡台にあった薄紫色の化粧水の瓶を見たときに感じた微かなときめきと、どこか似ているような気がする。  なかみはでも、もちろん化粧品ではなく、ビスケットなのだから当然ビスケットが入っているのだけれど、最初、その中身であるビスケットは化粧を施したように飾り付けがしてあったり、色鮮やかだったりと、そんなものを勝手に想像していたのだけれど、知れば中身はとてもシンプルなビスケットただ一種類で、その上品なたたず

小説『思い出はビスケット缶のなかに』

*****  銀座の街を父とふたりで歩いている。  秋晴れの空の下、よそ行きのスーツで決…

エッセイ『船橋屋のくず餅』

 はじめてくず餅を食べたとき、不思議な食べ物だなあと思った。  乳白色のこんにゃくみたい…

小説『あの夏の恋』

*****  あの夏、榊くんはしょっちゅう我が家を訪れては、兄と二人でゲームに興じていた…

エッセイ『銀座ウエストのリーフパイ』

 銀座ウエストのリーフパイの印象をもし尋ねられたならば、「清楚なお菓子」と答えるかもしれ…

小説『しあわせな音』

******  鳥のさえずりが聞こえてくる。  丸めた毛布のうえでまどろんでいたマロンは…

エッセイ『巴裡 小川軒のレイズン・ウィッチ』

 レイズン・ウィッチというお菓子をはじめて食べたとき、ちょっと苦手だな、と感じたのは、今…

小説『贈り物』

******  カシくんの漢字は「樫」くんだけれど、私のなかでカシくんの漢字は「菓子」くんに変換される。カシくんはだって、甘くて、優しくて、私を夢中にさせるものだから。私はいま、カシくんに恋をしている。  知り合ったのは、去年の秋頃だった。    私が所属するおやつ研究部というサークルに、途中入部してきたのがカシくんだった。背が高くて、色白で、ほんわかしていて、いかにも人の良さそうなカシくんは、実際に話してみると本当に良い人で、なんだか一緒にいると心地が良くて、一目惚れで