母の言うことは話半分で聞くといい
なんて言ったら怒られそうだけれど。
ちょっと思い出した事がある。
私は昔、ピアノを習っていた。お隣さん家にピアノがあり、そこのお父さんと一緒に弾かせてもらった兄が「僕もピアノ、弾けるようになりたい」と言った事が始まりだった。
兄の弾く姿を見て、自然と「私も習いたい」となったそうだ。
卓上の楽譜を読む為の勉強を怠った事もあり(当時から面倒くさいものが苦手)未だにちゃんと楽譜が読めない私。でもピアノはそれなりに弾ける。
短大時代にピアノの授業があり(保育士、幼稚園教諭課程)ピアノ講師から「あなた…楽譜が読めないの?これまでどうやってピアノを弾いて来たの?」とホラーのような顔で言われたこともある。
同じく、ピアノ歴が短いながらも私よりピアノを愛し、ちゃんと読んで、弾くことが出来るパートナーも言う。「絶対音感でもないし、ただのメンドクサイ奴…」
そう、私はいつも、先生の弾く曲を耳コピして弾いていた。楽譜をなんとなくは読めるので記憶が微妙な箇所は「確か、こんな感じ」という雰囲気戦法でやっていたのだ。楽譜を見て弾かないから「あれ、今、どこ弾いてたんだっけ」とか迷子にもなる。
ま、いいのだ。話が逸れたが、今回は母の話。
小学校の時は、友人に誘われ連弾に挑戦したりした。一台のピアノを二人で弾くやつ。その曲を練習する為に、兄に相手役をお願いした事もあった。
そんな時、母は言った。
「兄妹で連弾するなんて、お母さんの夢が叶ったわ」
え?6年位習い続けて、その時初めて聞いたけど…いま、聞いても本当かなぁ…と思う。彼女はリップサービスの天才な所がある。
***
もう一つのエピソード。
私の雛人形は、お雛様とお内裏様が座って並ぶ2体のみのもの。親王飾り、または内裏雛というらしいですね。
カラーリングがお雛様界では珍しいであろう、パステル調。割とコンパクトサイズ。二人が優しいお顔をしているし、長く垂らした髪に小さな水色のリボンがいっぱい付いていたりして、かわいい。
母は、私によく「このお雛様は、あなたが外国暮らしになっても持っていけるように買ったのよ」と話した。
…もしかしたらおまじないを掛けられていたのかもしれない。
ある年、トロントにある日系会館で「ひな祭り」が行われる、という事で初めて足を運んだ。そこで豪華絢爛!という言葉が相応しい、段飾りを拝見した。
「女の子のための人形」と説明書きを読んだパートナーが「いつか買ってあげるね」と言ったので「いや、実家にあるよ、私の」と話した。
日本に住む両親とのグループラインでは、いつも父から「今年もお雛様飾ったよ~」と写真付きで、お知らせが届く。私は、そこに写ったカラフルなお菓子の方に目が虜になる。花より団子とは、このことだ。
さて、その時にふと思い出し「私のお雛様、いつかこっちにお招きしなきゃだね。お母さんが”海外でも飾れるように”って言ってたの、本当になったよね」とコメントすると
父から
「あれは嘘だよ。お母さんよく言ってたけど、お店では”洋室にも馴染みやすい”って売られてただけ。」
と衝撃な裏話が。
え?マジ???今の今まで信じてたけど。
そして母は「でも同じようなものじゃん?」と言って来た。
え???洋室と海外?同じじゃなくない?
という。
母の言う事は話半分くらいで聞いとけ、というのがうちの家訓。すごい盛りたがるし。でも憎み切れない愛されキャラ。
ちなみに、母の雛人形はこけしが二体みたいな、ユニークなもの(文字で書くとイマイチだが、おしゃれ)うちでは母のものは玄関に、私のものはリビングのテレビの横か、和室のなんちゃって床の間に飾ってもらっている。
雛人形、そりゃあ七段飾りよりは運びやすいけれど、台座等を含め箱に収まると結構なボリューム。カナダにやって来るのはいつになることやら。皿うどんや麺つゆ、柿の種などのおせんべい等をスーツケースに山盛り詰め込みたい胃袋とのせめぎ合いになること間違いなしだな…花より団子…桜餅食べたい。