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人生なんて、ホームステイくらいのつもりでいい
Amazon Primeを解約して3ヶ月ほど経った。
クレジットカードの特典で数ヶ月間プライム会員になってみたのだけれど、あんまりメリットを感じられなかったから継続はしなかった、というだけのことだ。
だって、Amazonはよく使うけど、お急ぎ便にしなくても翌々日くらいには荷物届くし、結局2,000円以上で送料無料だし、映画を家で見ることはほとんどないし、音楽はSpotifyで足りてるし。
ちなみにSpotifyならLINEモバイルのSNS音楽データフリーで通信量カウントされずに使えるし。
だから解約後も全く不都合なかったのだけれど、数日前にテレビで流れてきたあるCMに、思わず
「うそーーー!」
と声をあげてしまった。
2/11から『HOMESTAY』というAmazonオリジナル映画が配信開始されたという。
この原作が、なんと……
カラフル!!!
もう、衝撃のあまりテレビを2度見したよね……
そして速攻ググッたよね……
生まれて初めての「好きな作家」
やっぱり、正真正銘、森絵都さんの『カラフル』が原作の映画だと分かった。
しかも、Amazon primeでしか観られない、と。
まじかよ……。
森絵都さんは、私が小学校~中学校あたりでどハマりしていた作家さんである。
当時私は、読みたい本を背表紙で選んでいた。
図書館でも、書店でも、本棚に並ぶ背表紙をズラ~~~っと眺めていって、ピン!と来たものを手に取るスタイル。
そして表紙を眺めて、紙の質感や手触り、字体などが気に入ったものを持って帰る、という具合だ。
本のタイトルと、装丁からくるインスピレーションだけで選ぶ本たちは、自分にとって必要だった、ああ読んでよかった、と思えるものが多くて、やっぱり偶然は必然だなと思ったのを覚えている。
そんな中で出会ったのが、『カラフル』という本だった。
今見ても思う。
まず字体が良いよね~。
ざっくり説明すると、前世で重大な罪を犯したという魂が、抽選に当たりましたと言われて下界へ戻され、死んだ少年の体を借りて修行する、という設定から始まる物語。
何とも突飛で空想的な設定にも関わらず、一息で読んでしまうほどのめり込ませる面白さがある1冊だった。
これは森絵都作品全体に言えることだけど、どんな設定でもやけにリアリティがあって、細かい描写が感情移入を誘ってくるし、ちゃんと面白い。
それでいて、伝えたいメッセージがちゃんと見えてきて、哲学的な深さを持っているところが魅力的だ。
中高生を主人公にした作品が多いから、彼らになりきった自分に問いを突きつけられる感じが堪らなくて、当時の私は夢中になった。
のちに映画化もされた『DIVE!!』や、デビュー作の『リズム』など、インスピレーションで手に取った本の中に森絵都作品が結構あって、しかも読んでみるとどれもお気に入りになる作品ばかりで、私はこの人の書く物語が好きなんだなあ、と自覚したのだった。
実を言うと、小学校の高学年になるまで読書ってあんまり興味がなくて。
だから、生まれて初めて自覚した「好きな作家」に心が踊る。
あーーー。
お気に入りポイントについて詳しく語りたいけれど、そしたらネタバレになっちゃう……。
読んだことない人にはぜひ読んでみて欲しいし、ああ、もどかしい~!笑
本の世界を教えてくれた司書さんの存在
そもそも、私が本の世界に足を踏み入れたのは小学4年生くらいの時。
私が通っていた小学校には、本校舎と新校舎があった。
本校舎には4年生・5年生・6年生の教室があって、そこから渡り廊下みたいなところをズンズン歩いていくと、2年生・3年生の教室がある新校舎にたどり着く。
そして1年生は、渡り廊下の途中にポツンと建ってるプレハブみたいな教室だった。
(ちょっと表現が極端すぎるかもしれないけど)
だから、本校舎と新校舎それぞれに図書館があって、蔵書も高学年向けと低学年向けに分かれていた。
低学年の頃は、校庭のジャングルジムや鉄棒が楽しかったり、竹馬の大ブームが起こって休み時間のたび我先に!と竹馬置き場に駆け込んだり、わりとアクティブに過ごしていたから図書館はどうしても縁遠かった。
本や物語は、国語の教科書や道徳の副教材を読み漁るくらいには好きだったはずだけど、図書館へ行くのが面倒だったのだと思う。
配られた貸し出しカードも、1年で2~3冊とかしか埋まらなかった。笑
それが4年生になり、本校舎に移ったきっかけで高学年図書館に足を運んでみたら、面白かったのだ。
低学年図書館の倍くらいの広さでかなり蔵書が多かったこともあるけれど、何より、その年から図書館専任の学校司書さんが配属されるというビッグニュースが。
司書さんが入ったことで配架が一新され、ちゃんと予算を取ってもらって新しい本も入るようになった。
相談するとオススメの本を教えてくれるし、雑談の相手もしてくれる。
司書さんが不在の時にもコミュニケーションが取れるように、交換ノートのようなものまで設置され、そこに書き込むと後でちゃんと返事くれるのが嬉しかった。
クラスの居心地が悪かった時期もあり、私は図書館へ通うように。
特に、5年生あたりで社会課題を題材にしたノンフィクションの児童書にハマり、司書さんに「社会福祉犬」のシリーズをリクエストしたことは鮮明に覚えている。
盲導犬とか、介助犬とか、そういう類の物語だ。
10冊以上あるようなシリーズだったから、リクエストしても通らないだろうなあ、とダメ元だったのだけれど、普段から雑談を聞いてくれていた司書さんが私の想いを汲んでくれ、予算を割いてくれたのだった。
そうして読書好きになった私は、立候補して図書委員になり、低学年図書館へ出張して下級生向けに読み聞かせをしたりするまでになっていた。
余談だが、図書委員の前に放送委員を経験していた私は、マンガ日本昔ばなしのテープを流すくらいしか選択肢がなかった給食タイムの放送にずっと疑問を持っていた。
図書委員になってから、給食タイムに私が放送室へ行って最新の本をマイクで読み聞かせする、というコラボ企画を思いついて先生に提案したところ、実現させてもらったことがある。
食べ損なった給食は、その後のお掃除タイムに放送室で食べていいことになり、掃除をサボれるという特典付きだった。笑
20年ぶりに読んだ「カラフル」
読書は好きになったけれど、いかんせん読むスピードが遅い私。
残念なことに、社会人になってあまり読書の時間を取れなくなっている。
たまに読むのも実用書や自己啓発系ばかりになってしまって、今回久しぶりに小説を、しかも児童書を借りてきた。
絵本はあそびこむのイベントで読み聞かせする用によく借りるけれど。
というのも、偶然遊びに行った友人宅にAmazonのFire TVスティックがあり、おかげで映画『HOMESTAY』を観ることができたのだ!!
遠い記憶の中の『カラフル』を思い浮かべながら映画を見て、罪を犯した魂が下界で修行する、という基本的な設定は貫かれていたし、ストーリーの大筋というか、衝撃ポイントみたいなところは共通しているような気がした。
けれど、全体的にすごく今の時代に合わせたストーリーになっていて、これはこれでいい作品だなと感じた。
そして、原作を読み直したくなった。
原作でも、魂が修行のために死んだ人の体を借りることは「ホームステイ」と表現されている。
案内人としてヒントをくれる「天使」がいるのだが、下界で生きることへの不安を訴える主人公に対して
「ホームステイだと思えばいいのです」
と答える天使の言葉が、すごく深いなあと改めて思った。
小学生の私がそこに気付いていたかどうか分からないけれど、
──後先なんて深刻に考えず、一時的なホームステイ、仮住まいくらいのつもりで生きればいいんじゃない?
という森絵都さんからのメッセージだと、今の私は感じた。
自分の人生100年に責任を持たなきゃいけないと思って道を選ぶのは、結構しんどい。
特に、想像もつかない将来のことを無理に想像しながら、受験やら就職やらを選ばなければいけない年頃の「こども以上おとな未満」にとっては、一筋の光になるようなメッセージではないだろうか。
29歳の私も、同じだなあ。
後先考えて尻込みするよりも、無責任なくらい、思いついたまま挑戦できる自分でありたいと思った。
紫波町図書館で借りてきた『カラフル』は明日返すので、読んだことがない人はぜひ、借りて読んでみてください◎