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【墨絵本】線のたび

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埋もれていたスケッチブックを発掘したことから、思いつきで始まった物語。 墨絵本。
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#天

線のたび(7)

線のたび(7)

宙の子は、今から向かおうとしている、
遥か下に観える碧色らしき何処かから、真っ直ぐに昇ってくるモノに驚いた。

な、なんだろう…。

向かってくるモノは、深く濃い暗いような、
重たい、真っ黒な塊のようにみえた。
宙の子は、動きを止めて、じっと、それが
勢いよく昇ってくるのをじっと眺めていた。

それが近づいてくると、真っ黒ではなくて、
なにか、たくさんの色が織り混ざっていることがわかった。

そし

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線のたび(6)

線のたび(6)

落とした何かを探しに降りてきた事を
思い出した宙の子は、ぼんやりと何かを思いながら、スルスルと下へ下へと向かって伸びて行った。

仄かに、みどり色が見える場所に。
明るく見えて、なんとなく薄暗くも見えてきたあの場所に。

なんだったかなぁ、落としたモノ…。
さっき出会った子とおしゃべりしてたら、すっかり忘れちゃったなぁ…。

ま、そのうち思い出すかもしれないから、
いいかな。
今は、見えてきたたあ

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線のたび(2)

線のたび(2)

宙の子は言いました。

「こんにちは。はじめまして。」

天の子は言いました。「はじめまして。こんにちは。
 ねぇ、あなたはどこに行くの?」

「僕かい?
  この雲の下にさ、碧色に包まれた
  素敵な場所があるんだって。
  とってもキレイな、みどりいろの。 
  君、知ってるかい?」

「うん。
  知ってる。
  私、そこから来たの…。」

「へぇ! そうなんだ。
  どんなところかなぁって

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