国内旅行がいいじゃない
24年間、私は一度も海外に行ったことがない。ただし私が海外に行くチャンスは、これまでに三度あった。
一度目は1,2歳の頃(覚えてないけど)。当時両親と私の3人で、ハワイへ家族旅行に行く計画をしていた(らしい)。私用のかわいい水着も買ってもらった(らしい)。ところがさあ行くぞ、となった矢先に父に仕事が入り、夢のハワイ旅行は幻となった。
二度目は高校の修学旅行。うちの高校は毎年、修学旅行先はグアムと決まっていた。夏休みまでにパスポートを取り、どでかいスーツケースも買い、南国でこんがり焼ける覚悟もしていたところに、とあるニュースが飛び込んできた。
某北の国が、ミサイルをグアムに飛ばそうとしているという。教師陣の苦渋の決断の末、私たちの行先はグアムから沖縄へと変わった。せっかく取ったパスポートはただの身分証明書となり、結局一度も使われることなく去年の夏に期限が切れた。恨むべし某北の国。(沖縄も楽しかったです)
そして三度目は、新婚旅行。ところが私の夫は身体の事情により、海外に行けない。私も海外にこだわりがあるわけでは全くないし、新婚旅行だからって別に海外に行く必要はないよね、というわけで1週間かけて北陸をめぐることにした。
それはもう素晴らしい旅だった。夫の車に乗り、7日間かけて福井、石川、富山を回った。雨か曇りの多い北陸で、奇跡的に晴れ続きの天気を引き当てたのもよかった。北陸は私の第2の故郷でもあるので、学生時代に行きたくて行けなかった場所にも行けたし、現地にいる友人にも会えた。
何を隠そう、カニ漁解禁を待ってやってきた私たち。念願叶ってカニを食べることができた夜には「今夜死ぬんちゃうか……」と気が遠くなったり、あわら温泉のお湯が良すぎて「やっぱり死ぬかもしれん……」と人生最後の極楽を噛み締めたりもした。もちろん死ななかった。
かつて北陸に住んでいたくせに、私は北陸の良さを半分も知らなかった。そして日本という国はすごいんだなと、月並みながらも強い感想を抱いた。温泉に浸かりながら、兼六園を歩きながら、日本海の景観を眺めながら。
海外に憧れる気持ちはわかる。日本にはないものを求めたくなるのもわかる。だけどそれ以前に、私は自分の国のことを知り尽くせているのだろうか? 日本の素晴らしさを知らないまま、外に飛び出してもいいのだろうか。そうすればむしろ、日本にも海外にもろくに触れられずに終わるんじゃないだろうか。
だって日本の片隅の小さな町一つ取っても、この上ない魅力が詰まっているのだ。それを知らずに海外に飛んでしまうのは、もったいない。私は日本をもっと深くまで、とことん知らねばならない。一生をかけて、味わい尽くさねばならない。それは日本に生まれた、日本人としての宿命だと思う。
旅の記録は私の庭(しずかなインターネット)に放ちました。以下、ご興味ある方がいらっしゃれば。