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熱に浮かされながら

3回目の副反応は急激に現れて、解熱剤を飲んだ途端しおしおと衰退していった。

気がつけば、5月も終盤を迎えようとしている。いろんなことが起きて、いろんな場所に行って、いろんな体験をした月だった。何かが進んだかと言われれば進んだような気がするし、大して変化がなかったかと言われてもそんな気がしてしまう。


母に、新しい恋人の話をした。「まうちゃんはのぼせ上がりやすいからなあ……」と、半信半疑というか、諦観というか、心配そうな目を向けられてしまった。この人がいい、という感覚を他者と共有するのは難しい、し、私には前科があるので致し方ないのだけれど。でも、さすがに見る目は鍛えられたつもりだよ。

母の結婚生活は、おそらく本当の幸せからはかけ離れている。だからこそ、娘には相手をしっかり見極めてほしいのだろう。自分のような人生を歩ませたくないから。そして唯一の望みであった子どもの幸せによって、自分自身の人生も報われるから。

そんな母によって、私も少しは冷静な心を持つことができたと思う。彼に対する感情に変化はないけれど、もう私は子どもではない、ということを自覚させられたというか。勢いに乗ることも大事だけれど、せめて頭の片隅に、慎重で冷静な自分を置いておかなければと改めて思った。


未来がどうなるかなんてわからない。今あるものでしか物事は判断できない。私たちにできることは、想像しかない。

誰を好きになったときでも、私は少なからずその人との未来を想像してきた。理想的に、しかし一方で現実的に。ここまで障壁があってもなぜだか明るい未来を想像できてしまう人は、やはり他にはいない気がする。

好きという感情だけではどうにもならない、ということはとっくに学んだ。大切なのは、その感情が失われても共に生きる努力ができる相手かどうか。そしてその覚悟が二人でできるかどうか、だと思う。

どんなに焼きたてでも、パンはそのうち熱を失う。ふわふわにやわらかかった生地も固まり、放っておけばおくほどどんどんだめになっていく。できたてだけを愛するのか、冷めても美味しいねと笑いあえるのか。


まあ、こんなこと一生に一度あるかないかだと思うから、できればあったかいうちに味わえるだけ味わっておきたい。どんなに温めなおすことができても、焼きたての美味しさは焼きたてのときにしか味わえないから。

だからもう少しだけ、この熱に浸らせて。



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皐月まう
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