倫理資本主義の時代
新しい資本主義の話で話題になっていて、本屋にも山積みだったので買ってみました〜
それほどじっくり検討しなくても、たとえ両者の利益が同額でも善社のほうが悪社より良い会社だと誰もが考える。これは私たちが利益は善行によって、またお互いを尊重することによって生み出されるほうが好ましいと考えていることを示す、きわめてシンプルな思考実験
「倫理資本主義」という新たな概念を提唱する。経済的利益は道徳的に優れた行為の結果として得られる、またそうあるべきだという考え方
倫理学とは道徳的信念や道徳的事実を研究対象とする哲学の一分野。道徳的信念とは価値観である。何かをしようとしている人(行為主体)に、普遍的に共有できるルールに基づいて「何をすべきか」「何を避けるべきか」という問いへの答えを示す
一般的に「資本主義」は、経済の本質的特徴を表す言葉だ。経済の人門書や「資本主義」の伝統的な定義からは、資本主義の条件としての三つが浮かび上がる
・生産手段の私有
・自由契約
・自由市場
主流派経済学は、それはダイヤモンドのほうが限界効用が大きいためだと説明する(だから「限界効用理論」と呼ばれる)
限界効用とは、ある財を追加で一単位消費することで得られる満足度のこと。通常、水は世界中に豊富に存在するため限界効用が小さい。それに対してダイヤモンドは希少であり限界効用が大きい。総効用の大きさではなく限界効用の大きさによって価格が決まるとするのが限界効用理論
社会とは、相手の存在に合わせて態度を調整する二人以上の行為者による取引の集合体として最大のもの。広義の社会はあらゆる取引の集合体だが、それを正しく計算することは誰にもできない
「エコ・ソーシャル・リベラリム」
倫理資本主義という新しい概念を紹介するのに加えて、倫理資本主義を包含する倫理的・政治的な価値の枠組みを提唱する
「倫理資本主義」とは道徳的に正しい行為によって利益を得ることができる、またそうすべきであるという考え方
ゲオルク・ウィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルも、自由であるとは「私たちである(私)であり、(私)である私たち」の一部となることだと語っている
カール・マルクスを引き合いに出しながら、資本主義の終馬は近い、今回その原因は何らかの歴史のメカニズムではなく、自然そのものが資本主義には超えられない限界を設定しているからだ、と主張する
資本主義は経済の成長や人口の増加は際限なく可能であるという危険な自己破壊的妄想の上に成り立っており、創造、破壊、再生というサイクルが持続不可能になるまで地球上のあらゆる物質資源を消費し尽くすと想定する
私が「倫理資本主義」という言葉を使うのは近代の市場社会の良い部分、人間を解放する部分などさまざまな成果を強調するため、そして資本主義は植民地主義的、搾取的、収奪的、破壊的、反自然だとして全面的に拒絶する昨今の風潮によって、私たちに資本主義の欠陥を修復するためには経済システムを抜本的に改革しなければならないという思い込みが生じるのを防ぐため
マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、そして特にイーロン・マスクは、未来志向のシナリオを道徳的に敏感な消費者という文脈で実現しようとしたことで、とほうもない資本と富を生み出すことができた
具体的提案とは、すべての会社に倫理部門の設置を義務づけるというものだ。倫理部門を率いるのは最高哲学責任者(CPO)で、その職責は人文科学や社会科学などから学際的に人材を集め、事業に関して道徳的進歩につながるよつな意見を出したり、企業文化そのものが未来志向の社会的協業に適した最先端の状態にあるか確認したりすること
財の自由な交換と個人間の相互利害調整による剰余価値生産という経済構造の諸要素に、倫理的洞察を統合した考えを「倫理資本主義」と呼ぶ
自由であるとはさまざまな選択肢から選べることであり、そうした選択肢のほとんどは他者が提供する。厳密な意味での反社会的、あるいは前社会的状態では、私たちは選択をしないし、できない
ヨハイ・ベンクラー
「私たちはロボットや利己的なケダモノではなく、合理的計算や自己利益に優先する道徳律を持つ道徳的生き物である」
私が今行っている分析レベルでは、新しい啓蒙とは洗練された楽観主義へのコミットメントと考えればいいだろう。楽観主義とは「そうとは思えないものの、私たちは可能性のあるなかで最良の世界に住んでいる」というゴットフリート・ウィルヘルム・ライプニッツの考え
AIの持つソシオテクノロジーという性質を理解しなければ、適切に規制したり、剰余価値生産に活用することはできないと考える。AIは正確には自律的システムではなく、人間が重要な位置を占める、より大きな社会的総和に組み込まれている
子どもの脳は発達途上にあり、神経構造のなかのリンクをつないだり、つなぎ直したりする柔軟性が高い。要は子どもたのほうが大多数の大人よりはるかにオープンマインド
「ソシオテクノロジー」とは、AIシステム自体はいかなる意味においてもインテリジェントではない、ということを意味する。人間が使うことで初めてAIはインテリジェントに「なる」
AIが社会に本質的変化をもたらすのはこのため
人間が自由な動物であること、すなわち倫理的に適切な自己決定ができる動物であることを踏まえると、私たちのあらゆる活動やデータには価値判断があふれていることになる。だから次世代のAI倫理を産業界に持ち込むことで、AIから真の利益を得ることが可能になる
新しい資本主義の考え方、倫理資本主義について詳しく書かれていて、今後のAI活用について資本主義の参考になる書籍です。今までの大量生産大量消費の資本主義から道徳的考えを持って豊かにしてゆく考え方がとても参考になる1冊でおすすめです