だから僕たちは、組織を変えていける
斉藤さんの渾身の新作が出たので、気になって読んでみました。チーム・組織に関するノウハウがたくさん詰まった書籍です。
50年周期の景気サイクル「コンドラチェフの波」
「産業革命」は「人の手足の代わりになる機械」が起こした革命。18世紀後半から150年にあたり、3つの長期波動「鉄道の時代」「鉄鋼の時代」「自動車の時代」で構成される
1946年に誕生した電子計算機ENIACは、10桁の加算計算を毎秒5000回実行できる。当時としては驚異的な性能を持つマシンで、メディアは「巨大頭脳(Giant Brain)」と名づけて報道した
IMFによると2020年の経済成長率は▲3.5%となる。世界金融危機が起きた2009年の▲0.1%を大きく上回る。生き方のパラダイムシフト「ライフシフト」が起きた
計画は「実行されるべきもの」でなく「絶え間ない環境変化を知覚する、学習のアンテナ」を捉え直すこと。「予算の達成」よりも「予算の差異からの学び」に注目すること
組織成立の3条件
1.相互の意思を伝達できる人々がおり
2.それらの人々は行為で貢献しようとする意欲を持って
3.共通の目的の達成を目指す
シェアド・リーダーシップ
「自走する組織」における、分散型リーダーシップの有効性。楽曲ごとにリーダーを置くが、固定させない。常に楽曲に最適な人がリーダーとなり、他のメンバーがフォロワーになる仕組み。自然発生的なリーダーを想定
理想の組織
結果を…人を評価する基準ではなく、学習する機会と捉える組織
現実を…過剰に警戒する対象ではなく、共感する機会と捉える組織
仕事を…義務ではなく、自己成長と価値創造の機会と捉える組織
成功循環モデル
1.関係の質 対話からはじめる。素直に話し合う場をつくり、信頼関係を築く
2.思考の質 前向きな気持ちになり、いいアイデアが生まれる
3.行動の質 一人ひとりが自律的に行動し、問題がおきたら助けあう
4.結果の質 自然にパフォーマンスが高まり、成果がでる
5.関係の質 組織へ帰属意識が高まり、さらに結束が深まる
組織を変えるリーダー像
サーバント型・リーダーシップ
「学習する組織」で求められるのは、メンバーを支援し、コラボレーションを促し、組織が目指す成果に導く「サーバント型・リーダーシップ」である
オーセンティック・リーダーシップ
「共感する組織」で求められるのは、正直に率直に信念を貫き、社員、顧客、社会と共感する関係性をつくる「オーセンティック・リーダーシップ」である
シェアド・リーダーシップ
「自走する組織」で求められるのは、リーダーを固定せず、適材適所で、自然発生的にリーダーとフォロワーを循環させる「シェアド・リーダーシップ」である
「学習する組織」
志を育成する力 自己マスタリー、共有ビジョン
複雑性を理解する力 システム思考
共創的に対話する力 メンタルモデル、チーム学習
3つをバランスよく伸ばしていくことが重要
ネイティブ・アメリカンの対話
彼らは夜、焚き火を囲んでいろいろなことを話しあう。長老はみんなに尊敬されているが、長老の意見が重んじられるわけではない。その場にいる人が順番に話し、誰かが話しているときは、その話が終わるまで割り込まない。いつのまにか始まって、自然と終わる。
集団的知性(Collective Intelligence)の発見
Googleは、大半が同じメンバーで構成されている2つのチームの活動結果から、個人生産の合計とチーム生産性は相関関係が少なく、チーム生産性の向上のためには「集団的知性がいかに生まれるか」という視点が重要
5つのチーム成功因子
1.心理的安全性
2.相互信頼
3.構造と明確さ
4.仕事の意味
5.インパクト
デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)
何かに集中しておらず、ぼんやりしている時に活性化する脳の精神回路。散歩、お風呂、トイレ、人との雑談をしている時、DMNは活性化し、脳に取り入られた情報を任意に繋ぐ役割を持つ。イノベーションの創出
ナラティブ
他者への認識を「われとなんじ」に切り替えたら、相互に理解しあうプロセスに進もう。人はみな、自らが主人公となり、自分の人生を精一杯生きている。自らの経験に照らして、物事を判断し、行動する。一人ひとりの頭の中にあるストーリーや思考の仕組みを「ナラティブ」という
「典型的な3タイプ」
1.性格が悪い人 相手に対して攻撃的、反抗的な態度をとる人
2.なまけ者 労力を出しおしむ、一生懸命やらない人
3.場を暗くする人 ネガティブで愚痴や文句ばかり言っている人
いずれのタイプも、チームに同じぐらい悪影響を与える。30〜40%も生産性が低下する
組織の学習能力が求められている知識社会において「人は変わるもの、失敗は学ぶもの」という視点が欠けた懲罰は、組織にとって失うものが多い施策といえる
エドモンドソンが提唱するリーダーの行動
・直接話のできる、親しみやすい人になる
・現在持っている知識の限界を認める
・自分もよく間違うことを積極的に示す
・参加を促す
・失敗は学習する機会であることを強調する
・具体的な言葉を使う
・境界(規範)を設け、その意味を伝える
リーダーに任命してはいけない人物
・人の強みよりも、人の弱みに目を向ける者
・何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者
・真摯さよりも頭の良さを重視する者
・部下に自分の地位を脅かされると脅威を感じる者
・自らの仕事に高い水準を設定しない者
「星の王子さま」サン=テグジュペリの名言
船を作りたかったら、人に木を集めてくるように促したり、作業や任務を割り振ったりはせず、果てしなく続く広大な海を慕うことを教えよ
デシ 動機付けの6段階
1.無動機づけ「したくない」
言われたからしかたなくする。言われないと行わない
2.外的調整「しかたない」
報酬を得るため、もしくは罰をさけるために仕事をする
3.取り入れ的調整「しなくちゃ」
周囲の評価や競争心から、言われた通りに仕事をしている
4.同一化的調整「すべき」
仕事に価値を感じて、楽しくはないが自ら仕事をしている
5.統合的調整「しよう」
仕事の意味が腹落ちしており、積極的に仕事をしている
6.内発的動機付け「したい」
仕事そのものが好きで、好奇心から自ら進んで仕事をしている
エイミー・レズネスキーは、人間には3つの仕事観があると考えた。義務としての「ジョブ」、出世の道具としての「キャリア」、使命感に基づく「コーリング(天職)」
人間はさまざまな環境の中で、自分自身に「適応」ないし「順応」させながら成長していく。「適応(adapted)」とは自分のパーソナリティが外部とバランスを保っていること。
人間の脳の処理容量を毎秒110ビット程度と想定し、「心理的エネルギー」と表現した。フロー体験とは、心理的エネルギーのほぼすべてを目の前の活動に没入し、時間を忘れて熱中している状態のこと。
「信用するのではなく、信頼するのだ。信頼とは、裏付けも担保もなく相手を信じることである」心理学者アルフレッド・アドラーの言葉
オープン・クエスチョンの中でもWHYで尋ねる問いは「なぜできなかったんだ」「なぜそうなんだ」と相手に責任を迫る質問になりがちなので気をつける。
指示待ち状況が生まれる典型的パターン
1.能力や知識の不足 専門能力や知識の不足により業務を完結できない
2.仕事観の違い 仕事は与えられるものという仕事観を持つ
3.エンゲージメントの喪失 組織や仕事への愛着が薄れている
4.リーダー側の抱え込み この場合は、メンバーの問題ではない
キーガンの大人の知性の3つの役割
1.環境順応型知性 「忠実なプレイヤー」として、環境や状況に順応しながらも、指示を待ち、指示に依存してしまう
2.自己主導型知性 「自立するリーダー」として、自分なりの羅針盤と視点をもって課題設定を行い、自律的に問題を解決していける
3.自己変容型知性 「学習するリーダー」としてメタ認知的な思考を持ち、複数の視点と矛盾を受け入れ、問題を発見できる
組織を変えるリーダー像
1.サーバント・リーダーシップ
「学習する組織」で求められるのは、メンバーを支援し、コラボレーションを促し、組織が目指す成果に導く「サーバント・リーダーシップ」である
2.オーセンティック・リーダーシップ
「共感する組織」で求められるのは、正直に率直に信念を貫き、社員、顧客、社会と共感する関係性をつくる「オーセンティック・リーダーシップ」である
3.シェアド・リーダーシップ
「自走する組織」で求められるのは、リーダーを固定せず、適材適所で、自然発生的にリーダーとフォロワーを循環させる「シェアド・リーダーシップ」である
知識と現実の世界は異なる
客体の複雑性 ビジネスに関わる多様な人々や外部の環境が、極めて複雑で、かつ常に揺れ動くために、ひとつとして同じシーンがあらわれないから。
主体性エラー 頭で理論を知ると「なるほど、そういうことか!」と納得してしまい、自分が行動できると誤解してしまう。スポーツでは、頭の中にある理想的な動きと、現実の身体の動きを同一にするために、気の遠くなるような練習を重ねる。ビジネスも同じ。
「WHYは仲間を連れてきてくれる」
なぜ採用を改革するのか?なぜビジョンの策定が必要なのか?これがうまくいくとどうなるのか?を伝えただけ。そこに共感した人が自発的に協力してくれた。
斉藤さんの学びノウハウとなった、組織論やリーダーシップ論が惜しみなく書かれていて、最高にタメになる1冊で、リーダーシップや組織マネジメントを行う人だけでなく、フォロワーの人にでも、とても参考になり必読でオススメです!