中学生も知ってて損はない「WHY型思考」の活用法
5W1H
これをビジネスシーンにおける基本的なコミュニケーションフレームワークとして覚えている方も多いでしょう。さらに、この6つの要素には基本的に正しい順番があると教わったことを忠実に守っているという方も多いのでは。
「When:いつ」「Where:どこで」「Who:誰が」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」
例)昨日、学校で、先生が、5W1Hを、考え方に必要だから、この順番で覚えるように、と言いました。
日本の教育環境は長きに渡り、知識の暗記に基づいた設問に対する正確な回答を求める正解主義に依存していました。ですから、「なぜ、この順番で覚えることが正しいのか」ということに疑問をもたない、いわゆる「WHAT型」思考が主流になりやすかったとされています。
WHYが起点となるべきマーケティングでも、残念ですが、WHAT型に忠実に則った説明をしているサイトも多いのは事実です。
そもそも「WHAT型」思考って何?
「24時間、働けますか?」という広告コピーに何の疑問も持たず、長時間労働をいとわず、休日返上で働くことが美徳とされた時代。そして、日本社会では、組織や集団の一員としての振る舞いや効率性が求められるため、「型」に沿った思考「WHAT型」が奨励される傾向がありました。
WHAT型思考とは、物事を進める際や問題解決をする際に、「何が重要か」「何をすべきか」を明確にすることを重視する思考方法です。このタイプの思考は、行動の具体的な方向性や必要な要素を整理するのには役立ちます。
「WHAT型」思考が悪いと言っているのでは決してありません。しかし、現代社会の特徴と照らし合わせた際に浮き彫りになる問題点があります。
1)WHY型思考の欠如による動機の弱さ
WHAT型思考では「何をするか」にフォーカスするため、行動の理由や意義(WHY)を深く掘り下げることが疎かになる場合があります。
問題点:WHYが不明確なまま行動に移すと、行動が短期的な目標達成に終始し、長期的な成長や持続可能性を損なう可能性がある。
例:「とにかく結果を出す」という姿勢が、社員のモチベーション低下や仕事の目的喪失につながる。
2)複雑な問題への対応が難しい
現代社会は、テクノロジーやグローバル化により、問題の複雑性が増しています。WHAT型思考は「具体的な行動」を重視するため、複雑な課題や曖昧な問題に直面した際に十分な分析や深い洞察が欠ける可能性があります。
例: 環境問題や社会課題のように、複数の要因が絡み合う課題に対して「何をすればいいか」だけを考えると、本質的な解決に至らない。
3)目的と手段の混同
WHAT型思考は、「具体的に何をするか」を優先するため、手段が目的化しやすい傾向があります。
問題点:本来の目標(ゴール)を見失い、効率的な手段を追い求めるだけで、成果が伴わない可能性。
例:数字だけを追い求める業務で、顧客満足度やブランド価値の低下を招く。
4)柔軟性の欠如
現代社会では変化が激しく、予測不能な事態が日常的に起こります。しかし、WHAT型思考は計画立案や行動を重視するため、予測外の事態や途中の変更に柔軟に対応する力が弱い場合があります。
例:一度計画を立てると、それに固執して改善や軌道修正が遅れる。
5)感情や人間関係の軽視
WHAT型思考は、行動やタスクにフォーカスするため、人間関係や感情的な側面が軽視される傾向があります。
問題点:組織内での人間関係やチームの協力を軽視すると、心理的安全性が低下し、成果にも悪影響を及ぼす。
例:「結果を出せばよい」という考えが強いと、社員が精神的に追い詰められ、離職率が高まる。
では、「WHY型」思考ってなに?
WHY型思考とは、物事を考える際に「なぜ」を起点にする思考法を指します。この思考スタイルは、自分の行動や選択、目標に対して根本的な理由や目的を問い直すことで、より深い理解や納得感を得ることを目的としています。ですので、マーケティングにおいても「WHY」をスタート地点とするのです。以下がWHY型思考の特徴となります。
1)目的志向
何かをする際、「これをなぜやるのか?」という目的や意義を明確にすることを重視します。これにより、行動の動機や価値を理解しやすくなります。
2)本質的な問い
「何をするか(WHAT)」や「どうやるか(HOW)」ではなく、まず「なぜ(WHY)」を問いかけることで、表面的な解決策ではなく、本質的な課題を探ろうとします。
3)動機やビジョンの重視
WHY型思考では、行動の背後にあるビジョンや価値観を重視します。これにより、他者に対しても行動や意見の説得力が増します。
WHY型思考が重要な理由
目的や意義を明確にできる WHY型思考を使うと、「なぜ、存在するのか」「なぜ、必要なのか」を深く掘り下げることができます。これにより、単なる機能や価格競争ではなく、商品が提供する本質的な価値を明確にすることができます。
例:
・「このスマホは安くて性能が良いです(WHAT)」
・「このスマホは、ユーザーの生活をより便利で効率的にするためにデザインされています(WHY)」
WHYを示すことで、顧客に共感や納得を生み出しやすくなります。
差別化の基盤を作る WHY型思考は、競合との差別化を可能にします。単に「何を売るか(WHAT)」だけを考えていると、似たような製品やサービスが市場に溢れる結果となり、価格競争に巻き込まれます。しかし、WHY型の思考を持つことで、その商品やサービスの存在意義を際立たせることができます。
例:
Appleは「優れたデザインや高機能」を売りにするのではなく、「人々の創造性を解放する」というWHYを中心にブランドを構築しています。商品そのものの説明よりも「なぜ商品を開発・販売するのか」。このWHYが、顧客の共感を呼び、忠誠心を生み出しています。
顧客との感情的なつながりを構築する WHYは、顧客の心に訴えるメッセージを作る際に欠かせません。「なぜその商品が必要か」を伝えることで、顧客の感情的なニーズや価値観にアプローチすることができます。
例:
・WHAT:「軽くて履きやすい靴です」
・WHY:「自由に行動したいあなたの毎日をサポートするために考えました」
WHYを語ることで、単なる製品説明ではなく、顧客のライフスタイルに結びついた訴求が可能になります。
長期的なブランド価値を育む WHY型思考に基づいてブランドの基盤を作ると、単発的なセールスではなく、長期的な顧客関係を構築することができます。顧客は商品の表面的な特徴ではなく、そのブランドが持つ価値観やストーリーに共感して購入を続けるようになります。
WHY型思考を実践する方法
1)「なぜ」を問い続ける
例えば、「これをする目的は?」→「その目的を達成することで何が変わるのか?」と掘り下げます。
2)根本的な理由を明確化する
自分や組織の「存在意義」や「価値観」に立ち返る習慣を持ちます。
また、共感を得るための伝え方を考える際には、サイモン・オリバー・シネックの著書「Start With Why(WHYから始めよ)」のゴールデンサークル理論を参考にしてみるのも良いでしょう。
WHY:企業のミッション、ビジョン、バリューを起点にして、
HOW:USP(ユニークセリングプロポジション)を明確に打ち出し、
WHAT:商品・サービスの内容そのものを紹介する。
ポジティブに使用することが重要
なぜ(WHY)を明確に定義したうえで、何をするか(WHAT)、そして、どうやるか(HOW)を検討し、それに付随する期間、場所、適任者を決定していく。WHY型思考を起点にしていくことで得られるメリットについてはご理解いただけましたでしょうか。
しかし、「なぜ?」や「そもそも論」はネガティブな方向で使用してしまうと、思考や議論の停滞、さらには、建設的な意見交換よりも相手の意見を否定するための手段になってしまうこともあります。方向性を見失ったり、前提が曖昧な場合に用いるといったポジティブに活用することが重要ですね。
最後まで、読んでいただき、ありがとうございました!