BizDevは戦略プランナーではなくボクサーなのでリングに上がりパンチを撃て〜2025年の自分への自戒〜
自己紹介
ダイニーで決済・金融領域のBizDevを担当している、matsu-takです。
趣味はマラソン、好きな洋服は革ジャン、好きな飲み物はしょうが湯、好きなHUNTER×HUNTERのキャラクター(というか持ち技)はフィンクスです。3歳双子の父です。浜松町オフィスから芝公園駅まで走って(Google Mapだと所用19分のところ)7分で三田線ホームまでたどり着いたのに、結局電車に乗れず、保育園のお迎え定時に間に合わなかった事があります。
キャリア経歴や仕事の価値観については、PRチームのkanonさんに素晴らしいインタビューnoteを書いていただきましたので、今回は割愛します。
このアドベントカレンダーでは「2024年のダイニーと2025年のダイニーについて」がテーマだったかと思います。一見フォーマットを守っていると見せかけて、クセが強めな私のBizDevへのこだわりについて、好き放題書かせていただきます。
2024年を振り返って、こんなコトに注力した
今年の4月にダイニーに入社してからのメインミッションは、「決済事業の立ち上げ」でした。最初はCEO室メンバーとしてアライアンスパートナーとの契約周りやマーケティング・セールス・Ops・PR等の準備をしました。そして、9月の情報解禁以降は新生ファイナンス事業本部のリーダーとして決済事業:ダイニーキャッシュレスのグロース施策をやってみたり、将来の方向性を仲間と話し合って決めたり、みたいな仕事をしています。
その中で、決済事業を短期間で勢いよく立ち上げるために、BizDevとして「決める」「チームワーク」「空気作り」の3点を強く意識しました。ユルめな文調で書きますが、これができていなかったら、事業の立ち上がりはもっとずっと遅かったんじゃないか、と真剣に思っています。
①決める:思い切った意思決定を高速で積み重ねた
ローンチのタイミングでダイニー初の記者会見をAdyenさまと合同で実施しました。各メディアさまにもありがたいことに掲載いただけました。結果、いいスタートダッシュをきることができました。AdyenさまのPR・マーケチームにも話を持ちかけたところ、大変ありがたい事に快く受け入れてくれました。幸い記者会見当日は多くのメディア様がいらして下さり、Newspicksさまにもキャッシュレス特集の記事で取り上げていただけました。結果的に大成功だったと思います。
そして、決済サービスの最重要要素:プライシングです。Adyenさまと緻密な条件のすり合わせを重ね、ダイニー側での販促費・広告宣伝費・決済端末のキッティングや発送などOps費用も含めた万里の長城並みの重厚長大シミュレーションを経て、先行投資を許容範囲のPayback periodで回収できるプライス設定をしました。加えて、集客のフックを作るためにVisa Mastercardを期間限定で1.98%に下げるキャンペーンも設定しました。幸い、決めたプライスによって想定以上の話題性を呼び、立ち上げ集客目標を達成し、SNSでも飲食業界の方からありがたいコメントをいただけました。とりわけ、飲食店の方からありがとう、と言われたのは何より「プライシング成功の証跡」と言えると思っています。
本noteを読んでいただいているビジネス強者の中には「2.48%とかプライシング微妙じゃね?」「事業計画とか予算とかどうせろくに立ててないでしょ?」「飲食店でPaypay使えないとかないわー。準備不足では?」「外資と提携をアピールしてるの自己満じゃね?ひっそり気づかれないようにリリースすればよかったのでは?」など色んな心のツッコミがある方もいるでしょう。
ですが、意思決定をしないままに「無限タブ分析スプレッドシート w/ 外資金融式美モデル」や「無限すり合わせスライド w/ 外資コンサル式美チャート」や「週4定例MTG構造化議事録 feat. 参加者毎回8~10名」を量産しながら時間を食いつぶしている暇もお金も、スタートアップにはないのです。大事な意思決定こそ、脳から血が出るくらい考えながらも、あえて爆速で行う必要があります。大事なのはすり合わせの過程ではなく、事業のアウトカムです。
②チームワーク:社内外の仲間にコラボを意識的に持ちかけた
決済事業の立ち上げに当たって、メインチームとPJチームをそれぞれ分けた位置付けで組成する事にしました。立ち上げ後の運用・グロースも継続的に関わり続けていくメインチームはサービスの開発を担うエンジニアと運用を担うOpsメンバーから成ります。主に立ち上げタイミングのブーストを担っていただくPJチームはマーケティング・PR・デザインメンバーから組成しました。
前者メインチームのスコープ・進捗に関しては、いわゆるウォーターフォールチャートで管理し、定例MTGを設定してBiz<>エンジニア<>Ops間でタスク連携する動きを重視しました。ここはTechリードのkadotaさんが優秀すぎてシステム基盤の準備はやる事が決まっていたので、Adyenさまとの折衝や諸々の分析を踏まえて決めたBiz方針を私からチームにお伝えし、それを元に開発アクションに微修正(kadotaさんやOps立ち上げPMのhasegawaさんからは「どこが “微”修正だよ!」とツッコミを食らいそうですが)を加える進め方をしました。要所要所では、疲れているチームメイトにファミマのレッドブル割引クーポン付きレシートを差し入れるなどの気遣いも意識しました。(※優しいですね。小ネタです。笑)
一方のPJチームの組成・進行は、概ね私が全体進行・個々のMTGおよびタスク設計・主たる意思決定まで責任を担いました。マーケティングは前職時代にタッグを組んだエキスパートを業務委託としてお招きし、PRはonegiさん・oharaさんを早々に巻き込み、デザインチームからも早々に一人をアサインしていただき(絶対必要だからお願いします!と懇願)ました。4月1日に入社してから速攻で動き、4月中旬くらいにはこの体制が出来上がっていました。また、AdyeさまのPRチームとも5月にはMTGをセットし、9月の情報公開に向けて早すぎるくらいのタイミングで巻き込みました。
ダラダラと書きましたが、自分は一人で膨大なタスクを管理するのが苦手な一方で、多くの人を爆速で巻き込んで素早く体制を作る動き方は得意なのでそれを活かす事ができました。今思うと自分は「わーわー」と騒いでいただけで何もしていなかった気がしております。みんな、特にTechリードのkadotaさんとOpsリードのhasegawaさん、ありがとう。
③空気作り:全社のモメンタムを意識した
決済は満を持して立ち上げる新規事業だったので、とにかく「モメンタム」を意識しました。
例えば、サービス名である「ダイニーキャッシュレス」も、PRチームで候補を5案に絞った上で、モメンタム醸成のために全社投票を実施した上で議論し、意思決定をしました。
投票と並行で、ブランディング観点において、ダイニーはさまざまな領域で複数プロダクトを展開していくことを考え、ダイニー〇〇で展開することが決まり、『ダイニーキャッシュレス』と名付けられました。(私イチオシの「ダイニー置くペイ」は却下されました)
また、Adyenさまとの合同記者会見やテスト運用開始など、事業立ち上げに関連するイベントがあった際には、少し大袈裟なくらい社内を盛り上げるようなプレゼンを納会などの機会を利用して繰り返しました。
ITの会社で新規事業を立ち上げる場合は、売ってくれる営業チームはもちろん、連携開発を担うプロダクトチーム、物流や審査・登録業務を担うオペレーションチームなど、全社が関わります。そうした中で立ち上げの事業チームだけが盛り上がっても、売れないし開発も滞るしオペレーションも回らない事になりかねません。だからこそ、全社メンバーが決済事業を自分ごととして捉えてもらう状態が必須であり、その状態に持っていくための努力をするのがBizDevとして大事だと思っています。「せっかく事業立ち上げ頑張ったのにあんまり社内の協力が得られなかった。。。」というのは他責の言い訳です。ステークホルダーに協力してもらうために頑張るのはBizDevとして当然の責務です。
もちろん、ダイニーにはとにかくアツいメンバーが揃っている、というのが一番のポイントなんですけどね。
2025年の自分へ、強めの叱咤激励メッセージ
前提:無限の事業選択肢が広がっている
資金調達を経て、ダイニーの目の前には数えきれないほどの事業成長の選択肢が広がっています。現在は居酒屋業態がPOSの中心顧客ですが、より多くの業態にもPOSを提供するに向けた準備が着々と進んでおり、海外展開のビジョン・機会もあり、多くの事業領域への参入も計画されています。
私が担当しているファイナンス事業領域に絞ってみても、見方によっては、まだ決済しかサービスをリリースできておらず、多くの事業参入が待たれています。例えば飲食店から業者への仕入れ・支払い領域や、飲食店から従業員への給与支払い領域、さらには飲食店への融資をする銀行領域もリーチしたい領域です。これらの参入事業候補に「いつまではやっちゃダメ」なんて制約はありません。別に、今すぐに取り組み始めてもいいのです。
だからこそ、not 戦略プランナー but BizDevを意識したい
ダイニーで事業開発をする上で「怖いな」と思っている事があります。それは「いつまでも楽しく戦略策定していられる」という事です。
元々私はコンサルティングファームで働いていた事もあり、上記の「無限の選択肢が広がっている」中から “イシュー”を特定し、中長期戦略を策定する行いには、少なからずロマンを感じてしまいます。「戦略参謀になった気分」でKPIツリーを作ったり、海外のデスクトップリサーチ(市場規模とか)をしたり、各事業領域の「既存プレイヤーポジショニング分析」をしたり。。。こんな感じで全然3ヶ月、6ヶ月、1年を過ごせてしまいます。おそらくそれでも分析や「戦略策定」はやりきれないでしょう。「maoさん、もっと深いインサイトを得ないと参入の意思決定は危険です」なんて意気揚々と進言して悦に入る自分が容易に想像できます。せっかくスピードに乗っている全社にとんでもないブレーキをかけているとも気づかずに。。。
もちろん、上記のようなリサーチ・分析業務は基礎インプットとして当然どこかでやらなければいけないでしょう。でも、BizDevとして一番大事なのは「顧客は何に困って/欲しがっていてダイニーとしていかにそれを解決するか」「ダイニーの長期ビジョンからバックキャストして今やるべきは何か」の2つの問いに真正面から答えて動き出す事であり、そこの強いメッセージ打ち出しが無いままに「戦略策定」を “精緻化”し続けるのは、BizDevとしては犯罪だと思っています。強い自戒を込めて。
BizDevはボクサーであり、セコンドや解説者ではない。ホワイトボードやスプレッドシートと対話するな!顧客と対話し、意思決定し、仲間の共感を集めるんだ!
BizDevの仕事は「事業インパクトを生み出す」事です。
それを「壁を壊す」事に例えると、やらないといけない事は以下の3つと言えます:
壁の表面のうちコアとなる一点を見極め、自ら強く重いパンチを撃つ事
1で手応えを感じたら、仲間全員のパンチをその一点に集める事
壁が壊れるまで何度もパンチを撃つ回転数を上げる事
はい、「何言ってるんだ?こいつ。。。」となりましたね。クセ強めなメタファーすみませんmm
まず一点目ですが、BizDevは初動の前に「強い事業仮説を作る事」が肝です。例えば飲食店であれば「ライバルの多い都心にある個店の焼肉屋にとって、新規の集客はコストが高いので、一度来店したお客様に対して販促をする事でリピーターを増やしたいのではないか?」みたいな感じです。こうした具体性の高い仮説、すなわち「コアとなる一点」を見極めたら、BizDev自らMockを作って飲食店オーナーに売りに行く、すなわち自分でパンチを撃つのです。この「自ら作って売りに行く」イメージができるか、が素養としてめちゃくちゃ重要だと思っていて、「壁の分析」をずっとやっているだけでは前に進みません。
自分で売ってみて、潜在顧客からの引き、すなわち手応えを感じたら、続いて二点目として「チームの向き先・熱量を揃える」フェーズに移ります。当たり前ですが、BizDevが作ったMockプロダクト、及び自らによる商談リソースだけでは事業になりません。エンジニア・デザイナー・Opsマネージャー・セールスなどの仲間を集めて、手応えを感じたサービスを作り上げて売るのです。この時に、BizDevが全員の意識と熱量を1で手応えを感じた一点に集中させられると、驚くべきスピードで思ってもみなかった素晴らしいアウトカムが生まれます。モメンタムは勝手に生まれません。BizDevが作るのです。
それでも、最初に開発して売り始めたものが完璧である確率は低いでしょう。そんな時はプロダクトや売り方に改善を加えて再チャレンジするのです。でも、BizDevの独りよがりで「次はこうして下さい」「ダメでしたか、次はこうして下さい」と鬼畜ロボットのように唱え続けていても、誰もそんな話を聞きたいとは思えません。だから「外してごめん!けどこのポイントはお客様に喜んでもらえた!みんなで再チャレンジしよう!」と次のチャレンジに向けてチームを鼓舞し、具体的なネクスト方針を打ち出すのです。ここでは「次にパンチを入れる点を決めつつ」「もう一度チームの共通モメンタムを作り直す」が必要であり、かつ難しいステップです。
なんとなくスベった気がしてきましたが、無理やり「パンチで壁を壊す」メタファーを引っ張ります。引き続き言いたい事は、BizDevは「ボクサー」でなければならない、です。
自分が元々コンサル業界にいたからかもしれませんが、なんとなく「イシューツリーを作る」とか「WHO -WHATを定義する」とか「マーケット分析・ポジショニングマップを作る」とか「精緻な事業モデル(神エクセル)を作りCAC-LTV-Paybackを設計する」みたいな「戦略策定」が神格化というか、スキルとして重視されすぎている気がしています。
ですが、これらは所詮「BizDevにとって呼吸のようなもの」だと思うんです。
呼吸ができなければ死んでしまうので、確かにこれらは必須スキルではあります。
ですが、BizDevが目指すのは「パンチで壁を破壊する事」です。パンチを撃つ手順としては、
①呼吸を整えて大きく息を吸い込み
②一点に狙いを定めて
③拳を撃ち出す
ですので「戦略策定=呼吸をする」=①だけでは目的を達成できないんですね。「事業仮説を作った上で自ら顧客に潜り込み手応えを掴んでくる」=②と「仲間を巻き込み事業を組成・展開する」=③までがお仕事です。
色んなビジネス書籍を読んだりキャリアの中でコンサルや企画職の経験を積んだ上で、ボクシングで言う「セコンド(ボクサーのサポートをする)」や「解説者(パンチの撃ち方に詳しかったり次の予測をしたりする)」のプロとしてBizDevとしてチームに参画するケースは数多あると思うのですが、①で止まる「セコンドや解説者」と②と③が本番である「ボクサー=BizDev」は似て非なる役割です。
例えば決済事業において、上記の③までやり切って、決済サービスの手数料を2.48%・キャンペーン手数料1.98%でリリースすると何が起きるか?そうです、某巨大メガベンチャーや財閥系金融プレイヤーが我々をベンチマークして同じ手数料に揃えてきた上で、有名広告代理店を起用し、大人気のイケメン・美女をキャンペーンキャラクターに据えて、莫大なマーケティング投資を仕掛けてくるでしょう。また、営業活動をする中で何度となく手痛い失注をしてしまう事や、自分たちのサービスがSNSでネガティブコメントされる事もあるでしょう。また、自分の熱量が思うようにメンバーに伝わらず、チームの中で空回りしてしまう事もあるでしょう。もしくは、シンプルに「これだ!」と思った事業仮説がどすベリしてがっかりする事も日常茶飯事です。「ボクサー」役は怖い、痛い、そして叩かれる。
こうした痛みや恐怖から目を逸らしたいなら、意思決定を避けてずっと「戦略策定」ワークをしていればよいのでしょう。でも、それでは事業インパクトを作る事はできません。ダイニーで言うと「”飲食”をもっと楽しくおもしろく。」そして「すべての人の"飲食"インフラになる。」に近づけません。だから空調の効いたデスクやホワイトボード上の「戦略策定」に粘着していてはダメなんですよ。「顧客に入り込む」「チームのモメンタムを作る」から逃げちゃいけないんです。
エリート然として戦略策定ワークに留まっていたい気持ちは分かる。カッコつけてエリートっぽいスキルや最新の分析手法を披露したい気持ちも分かる、というかある。けど、それだけではどこまで行っても「セコンド」や「解説者」の立ち回りになってしまう。そうではなくて「ボクサー」としてリングに立ち続けていたい。自分がオーナーシップを持って意思決定を行い、仲間を巻き込み、「批判や指摘をする側」から「批判や指摘をされる側」に回りましょうよ。そこからが本番です!
※このタイトルは「誰に向かって言ってんだ」と思いますよね?これ、繰り返しですが、基本的には自分自身への言い聞かせの独り言です。ご笑覧ください。
おわりに
非常にクセの強い独り言をつらつらと書き連ねましたが、顧客にDeep Diveして仲間と一丸で頑張るのが好きな方でしたら、ダイニーのBizDevはめちゃくちゃフィットすると思いますし、文字通り世界を股にかけて人生をかけた一世一代のビジネスバトルを経験できると思います。「我こそはボクサーである」という泥と汗にまみれた戦闘民族のあなた、ダイニーで一緒にどデカい壁に特大の風穴をあけましょう。
こんなクセ強ポエム筆者と話したい物好きなんているのか?というダウトしかありませんが、カジュアル面談のお申し込み、お待ちしております笑
以上、締切直前の勢いで「謎メタファー特級呪物ポエム」を生成し散らかした、matsu-takでした。
注1:イシューから始めよ、バーバラミントは年一回は読み返すほど大好きな本でして、考え方の基本として、とても大事に思っています
注2:全文を通して死ぬほど誤解を生みそうな表現をしていますが、本noteの主題は「戦略策定」をディスりたいものではなく「戦略策定に寄った行動スタンスや思考の癖があると、顧客へのディープダイブや仲間の巻き込み、仮説をもとにした超早期PoCが基本となるダイニーのBizDevカルチャーとフィットしないかも」です。