男性のメイク、あなたはどう思う?
女性同士で食事を楽しむ「女子会」というキーワードが2008年に出現して瞬く間に広がり、その後「肉食女子」や「草食男子」という言葉が次々に生まれたことで、今までの女性と男性の概念が少しずつ変化し始めました。
それらのキーワードが一世を風靡したのち、2015年に生まれた「ジェンダーレス男子」という言葉は、「メイクをする男性」や「美容意識の高い男性」を肯定し始め、近年のD2Cブームの到来とともに『メンズコスメ』というカテゴリが一気に盛り上がりを見せました。
そんな中、ふと、
「昔から男性でも美容に気を遣う人がいたのでは?」
「男性がメイクするのが当たり前になったのはいつから?」
「なぜ男性の美容やメイクが当たり前になったの?」
と疑問を持つようになりました。
ということで、独断と偏見にはなりますが、『男性と美容の歴史』を勝手に紐解いてみたいと思いますので、少しお付き合い頂けますと幸いです。
■男性の美意識はいつ生まれた?
前提として、昔から美意識は男女共に持ち合わせているものですが、「男性はこうあるべきだ」「女性はこうあるべきだ」という固定概念の力学が強く働き、男性が美容に興味を持つことや、口に出せる雰囲気がない時代は長く続いてきました。
その概念は時を経て少しずつ変化し、日本に「メイクアップアーティスト 」という職業が生まれます。この職業が世の中に生まれ、日本で活躍するようになったのはTVがカラー化した1960年代と言われており、1980年代になると事務所やサロンなどが次々に誕生。ビジネスとして一定の市場を作るようになりました。
この流れの中で、男性のメイクアップアーティストも誕生しはじめ、SHU UEMURAで有名な植村秀氏や、資生堂のトップヘアメイクアップアーティストである計良(けら)宏文氏、最近では有名女優のメイクを手がけるなどして有名な河北裕介氏や、簡単にマネできる”ササメイク”で有名な佐々木一憲氏など、多くの男性メイクアップアーティストが活躍しています。
ただ、あくまで彼らがメイクを施す対象の多くは女性であり、彼らの活躍が男性の美意識に直結してるのか、と言われると、二つ返事で「はい」とは言い難いのが正直なところでした。
■男性が意識してきた美意識
それでは、男性が意識してきた美意識の原点はどこにあるのでしょうか?そう急に問われると考えてしまいますが、やはり分かりやすいのが『ヘアスタイル』だと思います。元来、「理容室(顔そりや刈込といった施術によって容姿を整えるための場所)」と「美容室(カラーリングやパーマの施術を通して容姿を美しくするための場所)」として分かれおり、男性は理容室に行き、女性は美容室に行く、というイメージがありました。
それが昭和に入り、徐々に男性も身なりに気を遣える時代になると、男性が美容室に行く風潮も生まれ始め、徐々に男女両方の顧客を獲得可能な美容室が増加しました。その後、1990年後半には「カリスマ美容師」が一大ブームとなり、2000年には木村拓哉さん主演の「ビューティフルライフ 」が放送され、美容師という職業が一気に注目される時代が訪れました。
さて、メイクアップアーティストの活躍、そしてカリスマ美容師のブームによる男性の美容室通いの流れは分かりましたが、それで男性がメイクをするようになったのか、と問われると、ここでも「はい」とは言い難い。では、男性が結局メイクをするようになったきっかけはどこにあるのでしょうか?
■男性がメイクをするようになった理由
引っ張るだけ引っ張って恐縮ですが、今まで述べてきた時代を経て、徐々に男性の美意識は育っていきます。男性は、「自分をよく見せたい」「おしゃれになりたい」という内発的な動機付けから、美容室に行ったり、おしゃれな服を着用するようになってきました。その流れを経て、自ずと「自分の顔も少しでもよく見せたい」という意識が生まれました。それではなぜ、そのような意識は生まれたのでしょうか?
これにはいくつかの要因があると考えており、あくまで個人的な考えですが記載しておきます。ここではメンズメイクに積極的なのは若年層(10〜20代)という前提でまとめておきます。
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①SNSの普及
最も大きな要因としてあげられるのが、SNSやYouTubeの影響です。現代の若者は、育ってきた環境で当たり前のようにスマホに触れてきた、いわゆる”SNSネイティブ世代”です。承認欲求や自己肯定感も強く、自分のことを発信したり、自撮りする文化が当たり前の世代です。スマホ片手にSNSを開けば、自撮りをした友達や、推しのアイドルがフィードやストーリーに流れ続ける。YouTubeを見れば、TVでは到底見ることのないような破天荒な企画がYouTubeで流れ、それが自分の好きな時間に観ることができる。そんな日常の中で、等身大の自分と比べて「自分もこうなりたい」「今の自分をもっとこう見せたい」という思いが出るのは当然のことです。その中で、人気の男性YouTuberやインフルエンサーが、企画の1つで自身のルーティーンやスキンケアを紹介するのが当たり前になり、それを見てスキンケアを覚えたり、実際にメイクをして友人にその様子を共有して、何を見て知ったかをリアルな口コミでまた共有し・・・というようなサイクルは、男性がメイクをするきっかけの1つになっていきました。
②韓国トレンド
男性だけに限りませんが、現代の10〜20代の若者文化に大きな影響を与えているのが『韓国カルチャー』です。冬のソナタを始めとする韓流ドラマが話題となった第1次韓流ブーム、少女時代やKARA、東方神起などのK-POPスターが人気を集めた第2次韓流ブームに続き、現在では第3次韓流ブームが起きている言われています。それは過去のように、映画や音楽だけに限らず、ファッションやメイク、食文化まで多岐に渡ります。この爆発的な広がりは、先ほどお伝えしたSNSによるものに他なりません。現在、爆発的な人気を誇るBTSはもちろん、JO1なども韓国の流れを組んだ男性グループです。それらが現代の若者の推し文化のもとで加速し、SNSでさらに拡散。美容大国である韓国の男性たちは、当然のようにメイクをしているため、「男性=メイクが当たり前」という概念が、SNSを通じて若者たちの中に知らずのうちに浸透していきました。余談ではありますが、韓国では女性用化粧品に男性のKOLを起用するのが当たり前になっています。日本ではジャニーズが一部の化粧品メーカーの広告モデルに起用されるに留まってますが、今後はより加速すると考えています。
③ジェンダーレス文化
3つ目として挙げられるのが、ジェンダーレスによる影響です。残念なことに、日本は男女格差が大きい国の1つとして知られています。その一方、現代の若者の意識では、男性らしさや女性らしさの前に、「自分らしさ」を大事にしたい、という意識が根底にあります。グローバルで見ても、ジェンダーレスの問題はもちろん、現代の若者であるZ世代(1995〜2012年生まれ)は、社会課題に対して問題意識を感じている割合が、他の世代よりも高いと言われています。育ってきた環境の中で、「自分らしさ」の表現方法として、男性用の洋服を女性が着用したり、女性用のコスメを男性が使用したりと、男性と女性の垣根は徐々になくなってきました。それは、意識の中に自ずと根付き、「スキンケアやメイクをしている男性」に対して、「別に違和感を感じない」「逆に好感が持てる」という女性が多くなってきていることからも実証できます。まだまだ日本全体を観ると男女格差は大きな問題ですが、こうした若者の文化から、少しずつ改善していくべきだと考えています。
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このように、男性の美容意識の高まりは今に始まったことではなく、様々な時代背景やツールの広がり、諸外国による文化の影響によって、少しずつ醸成されてきました。世の中には美容男子やメイク男子に関する意識調査はたくさん出ているので、ぜひ気になった方は調べてみると興味深いと思います。
予定以上に長くなってしまいましたが、また男性×美容意識については定期的に更新していきたいと思います。
長文にお付き合い頂き誠にありがとうございました!