【エッセイ】休職ニート、若干の徳を積む
適応障害で休職した。最初の一か月間は、メンタル面でも体調面でも本当に狂っていた。
狂っている中でも何かやらねば……という思いのみが強くなっていく。
その中で正気を保つためによし!徳を積むか!と唐突に思いついた。
この時点で既に狂っているが、この行動のおかげでメンタルの安定を少しずつ取り戻していった……と思う。
と、いうことで休職ニートが行った本当に微々たる善行を以下に記す。
①轢かれそうになっている虫を移動させる
やることがなく、家に引きこもっていると実家の親に白い目で見られる。
そのため、ときおり散歩に出かけるようになった。
田舎に住んでいるので、散歩中によく虫を見かける。
明らかに踏みつぶされたんだな……という虫の死骸を見かけることも多かった。
なんだかかわいそうだったので明らかに踏まれそうな位置にいる虫は移動させることを始めた。
ナナフシ、カミキリムシ、なんだかよくわからないミニマムな虫……いろんな虫を移動させた。
おそらく私も無意識に踏みつぶしている虫がいるかもしれない。特に車で移動しているとパアン!という音とともに何かがぶつかることもある。
この行動はそれに対する懺悔の意味も含んでいる。ほぼ自己満足だが、移動させた彼らが元気にどこかに飛んでいくのを見るとやってよかったな……という思いが湧く。
最近はこのアクティビティにフリーランスの友人が合流してきた。
しかし、その友人が最近昆虫標本作りを始めてしまったので、私たちは虫にとって生と死の化身のような存在になってしまった。
ちなみに毒があると分かっている虫に関してのみは触らない。これに関しては自身の健康の方が優先である。毒虫の皆様も人間の手が届かない場所で健康に生きてほしい。
②干からびそうなミミズを土に埋める
田舎道を散歩していると、道路に迷い込んだミミズがのたうち回っていることがある。
もう間に合わない干からびたミミズもよく落ちている。ジャーキーのような色に干からびたそれは、道路の真ん中でOの字を作っている。
そのような哀れなOを作らないために、まだ間に合いそうなミミズは脇道の土のある場所に移動させている。
ミミズは直で触るとねっちょりしている。納豆を食べている時に間違えて指に納豆がついた時くらいねっちょりしている。
指をねっちょりさせたまま散歩するのは嫌なので手頃な枝、枝がない場合は石を使ってミミズを土に逃している。
ミミズの方が私より働き者だ。生きているだけでその身体で土地を肥沃に満たしていく。
生きているだけでえらい、この言葉はミミズにピッタリだ。今日も私の代わりに働いてくれと、湿った土に逃している。
……ということで最近やっていた微々たる善行を記してみた。
この善行がめぐりめぐって自分のためになりますように……と思って今日も果てしなく田舎道を散歩しに行く。
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