【白の手帖】5頁「息」
1度も11月のカレンダーを捲ることなく
10月だった僕は12月になった。
世界を観た。狭い。
そして広い。
なにもしない時間だって間違いなく生きていて、
本当になにもしていないことなんて、
本当は無い。
眠っていても心臓は動いているし、夢だって見る。
一昨日は、初めて自分が死ぬ夢を見た。
いつも顔を合わせている職場の人に気付かれず、
なぜか苦手な人が僕の死を喜んでいて、
憎しみは死んだ後にも沸くものなのかなと思ったり。
ただ、中には僕の存在に気付いてくれる人もいて、
死後の世界の手続きをあれこれ説明してくれた。
夢ならではの、めちゃくちゃな世界観。
死んだ僕は、死んだことに対してのショックはさほどなくて、どちらかと言うと周りの人に気付かれないことの方がずっと寂しかった。
気付いてくれた人も居たけれど、明らかに僕たちの目の前に一線が引かれた感覚を、僕はしっかりと浴びてしまった。
目を覚ましたとき、寂しさだけが残っていた。
僕は、生きていても同じだと思った。
存在とは、その他による認識だと思った。
ここに居ようが、居まいが。
形があろうが、なかろうが。
僕とは、つまりは世界だ。
僕が生きている限り、みんな生きているし
僕が死んでしまったら、みんな死ぬ。
途方もなく広い世界は、やはり恐ろしい程に狭い。
12月だって、いつかは死ぬ。
やってこなかった11月だって、
きっと僕は生きていたし、
その全てが本当だったと思いたい。
僕は、花が咲くのを待っている。