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私が勤務している会社がISO30414の組織認証を取得しました。
取得に向けた活動をスタートしたのは私がISO30414のリードコンサルタント資格を取得した2022年12月でしたので、足掛け3年、実質的な活動期間としては約2年かがりの取り組みでした。
※ISO30414リードコンサルタント資格については以前取得した際に記事にしていますので、ご興味ある方はこちらをご参照ください。

日本におけるISO30414の位置づけ

「人的資本経営」という言葉がすっかりトレンドワードを通り越して、もはや人事戦略の中にこの言葉自体を入れていない企業の方が珍しくなるほど、ここ数年での浸透、定着はかなり進んだ印象です。
そうした中で、ISO30414については人的資本開示のグローバルな基準(ガイドライン)ではあるもののまだまだ様子見又はそれほど意識はしていない企業も多いかなと思います。
取得企業はグローバルで22社、日本で16社という事実からも日本における今のISO30414の位置づけを表しているとも言えますが (日本だけが突出している点はのちほど触れています)、とはいえ人材戦略や人事関連の取り組みを包括的にかつ効果的に進めていく上で、グローバルな基準に基づいた自社の人的資本経営の現在地を把握することの意味はそれなりにあるとも感じていますし、取り組みによって得られた成果や課題もたくさんありましたので、今回はISO30414の認定取得を目指す企業/組織に関係する方々に対して、取得のキモとなることや難所になりそうなポイントをまとめてみました。
 
ちなみに、ISO30414リードコンサルタント資格の保有者は日本で1000人ほどいるようで、日本の人的資本経営の盛り上がりとあわせてかなりの勢いで保有者が増加していますが、資格保有者の内、自分が所属する組織が認証取得をした方はまだまだ少ないと思いますので、「リードコンサルタント資格保有者×自社取得実績」という、ある意味理論と実践の両面から実際の取り組みを通じて得られた知見をご紹介します。
※自社がISO30414の取得支援サービスを展開しているため、あくまでもポイントのみの紹介となる点はご容赦ください。
 
やや長くなるので、以下のポイントを数回に分けてご紹介していきます。

<ISO30414認証取得のポイント>
1.    取得目的の設定 →今回はココ
2.    推進体制の整備
3.    認証取得時期の見極め
4.    人的資本の情報開示媒体(ヒューマンキャピタルレポート)の位置づけ
5.    経営との連携

取得目的の設定

まずはこうした取り組みを進める上で、何を目的にどういう状態を目指すのかを定めるのは当然のことですが、トップや経営から「認証取得を目指すべし」というオーダーがあった場合は、何らかの狙いや意図が想像できるのでわかりやすいと思います。

一方で、HRとして「なんとなく関心はあるけど何を目的に、どういう進め方をすれば良いのか」をボトムアップ的に検討されている方は、ここを明確に定めることは意外と難しいのではないでしょうか。
特にISO30414の場合は、前述したとおり、認証取得企業がまだ少なく、他社事例も少ないため、現時点では取得のメリットを見出しづらいのが現状です。
そのため、自社文脈に照らした期待効果を軸に検討する方がより現実的かなと感じました。おそらく、取得を目指そうと議論している時点では取得できるかどうかの可能性はクリアになっていないことが多いと思いますので、まずは取り組み開始の宣言をして、その方向感で進ます(本当に取得を目指すかどうかは、現状把握した後に改めて報告します)という社内の合意形成を早めにとることが必要です。

なお、「人的資本(情報の)開示自体が目的」ということもアリだとは思いますが、このISO30414の本質的な意味合いは、対外開示だけではなく、社内へのレポーティングも含んでいるので、人的資本強化や人材戦略の包括的/網羅的な実行・推進することがこうした取り組みを進める本質的な意味だと私は理解しています。

なぜ日本だけ盛り上がっているのか

冒頭に触れましたが、「グローバルで22社目、日本で16社目」という点に「ん?」と違和感を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
文字通り、取得企業の多くは日本企業なのでここには何の嘘・偽りはないのですが、なぜ日本企業だけが突出していて欧米企業の取得企業が少ない理由としては、ざっくり以下の要因があるのかなとは思っています。(あまり詳しく深堀って調べたわけではないので浅い洞察です)
 
・アメリカの場合
 証券取引委員会(SEC)が上場企業に対し、人的資本に関する情報開示を 
 義務化する規則を導入しており、既に一定程度の情報開示が求められて
 いるため、改めてこうした認証を取得する必要性やメリットが企業側には
 生まれにくい。
・ヨーロッパの場合
 
個人データ保護に関するGDPR(一般データ保護規則)で、かなり厳格な
 データ保護規制をしているため、情報取得の取り扱いが管理を行ってお
 り、ISO30414のような新たな規格の導入の必要性を感じていない企業が
 多い。

日本の場合は、女性管理職比率等の一部の項目が有価証券報告書へ記載義務化されている他、内閣官房が「人的資本可視化指針」を定め、人的資本の開示の考え方や指標等を定めています。それぞれで重複している指標、していない指標があるので、私なりに以下のように比較表としてまとめてみました。
人的資本開示の取り組みを進める上で参加にして頂ければと思います。

筆者が作成

次回は、ISO30414認証取得のポイントの2つ目と3つ目の
・ 推進体制の整備
・認証取得時期の見極め

についてご紹介する予定です。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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