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「概念化」を使ってテーマの全体像を把握する

【ポイント】

  • 具体的なことをこまごまと議論したところで問題の本質は見えてこない。

  • 大切なのは、参加者全員が大まかに全体像を共有すること。

  • 概念化では「どこに向かって概念化するのか」がとりわけ大切。


「これじゃ、うまくいきそうもないな」

議論を聞いていた私は、直観的にそう感じました。度重なる議論もむなしく、まとまった結論は結局、尻切れトンボだったからです。
当時の私には、なぜそうなったのかがわかりませんでした。アドバイスのしようもなかったのです。
その理由が何となくわかり始めたのはしばらく経ってからでした。そして今では、理由が腹落ちしています。

「具体的なことをこまごまと議論したところで、問題の本質は見えてこない」

うまくいかない議論では、参加者がそれぞれの守備範囲で、それぞれの体験や問題意識に基づいて発言します。テーマはひとつなのに、見ているポイントが違うのです。だから話がまとまらない。

大切なのは、参加者全員が大まかに全体像を共有することです。

そうすれば、全体像が羅針盤となり、参加者には問題の本質が見えはじめます。ところが、全体像を把握するのは簡単ではありません。このカギを握るのが「概念化」であり、このブログのテーマです。

「概念化」という言葉には、あまり耳なじみがないかもしれません。そもそも概念とは「ある事物の大まかな意味内容」のことです。したがって、「概念化」とは「具体的な事象(=目の前に繰り広げられているリアルな世界)を大まかにとらえる」という意味になるのですが、この「大まかに」がなかなかの曲者です。「大まかに」といってもどういう方向でとらえればいいのか、その方向性は様々だからです。

つまり、概念化では「どこに向かって概念化するのか」がとりわけ大切なわけです。

では、私たちは概念化が向かう方向をどうやって決めればいいのでしょうか。
答えは「目的」、つまり訴えたいことや実現したいことです。「生み出したい価値」と言ってもいいかもしれません。

間違えないでほしいのは順番です。概念化したから目的が定まるのではありません。目的があっての概念化なのです。目的が明らかでなければ概念化は不可能です。概念化は本質を見極めるための手段なのですが、目的無く浮かび上がった概念から本質を見極めることはできません。

例を挙げて、理解を深めていただくことにしましょう。
このときの議論のテーマは「どうやって原価を下げるか」でした。

A氏  「サプライヤーを競争させて、購入価格を下げさせよう」
B氏  「もうやっていますよ。限界です」
C氏  「社内でやることを増やして外注費を減らしましょう」
A氏  「そもそも駆動ユニットが高すぎなのではないか」
B氏  「全体の中で駆動ユニットが占める原価はわずかなものです」

  「なぜ原価低減が必要なのですか」
A氏 「今のままでは他社に競り負けてしまうのですよ」
  「では、原価低減ではなく、他社に競り勝つことをテーマに議論しましょう」

私たちは競争要因を列挙し、それを他社との比較で整理しました。これを眺めながら「自分たちが選ばれる理由」について激論を交わしました。それぞれに思いはありましたが、比較表という土俵の上に立てば、相手の意見や食い違いのポイントが浮かび上がってきました。

C氏  「結局のところ、原価低減は必要なわけですね」
A氏  「そうだね。お客様は、まずは価格を見るからね」
B氏  「でも、価格勝負する必要はないということですね」
A氏  「そうそう、価格が理由で振るい落とされなければいいのだから」
C氏  「それくらいなら、試験方法を工夫すればなんとかできそうです」
A氏  「よし、ではそれでいこう」

この例では、目的は当初の想定の「原価低減」ではなく「自分たちが選ばれること」でした。この目的に向かって「競争要因ごとの他社との比較表」をまとめた作業が概念化にあたります。
比較表が共通の土俵となって参加者の腹落ちにつながったわけです。


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