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ボトムアップが効かないなら「仮説」を立てて動かしてみる

【ポイント】

  • 「情報がないから」とあきらめるのではなく、そんな時こそ「仮説」を立ててみよう。

  • 仮説を「当てにならない」と一蹴していたのでは、ビジネスで直面する「正解のない問題」を解くことはできない。

  • 仮説は想像力。想像してストーリーを練り上げるうちに、さっぱり見えていなかったことが徐々に見え始める。そこからブレイクスルーのアイディアが生まれることだってある。


物事が前に進まない理由を聞くと、たいていのひとから「情報がないから」という答えが戻ってきます。
だからと言って、情報収集の目途が立っているわけではありません。情報を集めることに辟易し、途中で投げ出してしまっているのです。あるいは、必死に集めた情報からは何の結論も出せなかったのかもしれません。そんなとき、私はこう言います。

「ある程度の情報と経験があるなら、まずは仮説を立ててみませんか?」

素人集団ならいざ知らず経験がある人ならば、ある程度の予測は立てられる筈です。チームのメンバーがそれぞれ違う角度から物事を眺めて立てた予測を持ち寄って議論すれば、ソコソコ精度の高い仮説を立てられるでしょう。
仮説を「当てにならない」と忌み嫌う人もいます。しかし、そもそもチャレンジングな仕事に、確実性を期待するのは無理です。

仮説を立てるには想像力が欠かせません。

例えば提案活動であれば、

「こんなとき、お客様なら何を期待するだろうか」
「競合他社はきっとこう考えるはずだ」

と、お客様が抱える課題や競合他社の出方など、あれこれイメージしてみるしかないのです。

悩んで立ち止まっているくらいなら、間違っていてもいいと割り切ってまずは仮説を立て、仮説をベースにストーリーを組み立てましょう。ストーリーを練り上げるうちに、関係者の納得感を生むポイントが見えてくるはずです。そこからブレイクスルーのアイディアが生まれることだってあります。

ひとつ注意を。
希望や気合を仮説と称して「できます」「やります」を繰り返す人もいます。そんな人は「Why(どうして)」を説明できません。「仮説」をベースに組み立てた場合にはロジックがありますが、単なる希望や気合でやれるといっている場合にはそれがありません。
このパターンが一番厄介なので、これらの違いを見抜く目を養いましょう。「Why」をキーワードに、納得がいくまで仮説について議論してください。

例を挙げて、理解を深めていただくことにしましょう。

私たちはターゲットセグメント(狙うべき市場の領域)の絞り込みに向け、議論を重ねていました。状況は「無いものねだり」に陥っており、硬直していました。

A氏 「顧客の期待は変化しているよ」
B氏 「でも、だからと言って方針を転換するにはリスクが大きすぎる」
A氏 「今のままでは、遅かれ早かれ、価格競争に巻きもまれるだけです」
C氏 「X社の出方しだいでは、今の延長上で新商品を開発したところで、売れやしませんよ」
B氏 「いつも君たちは変化を主張するが、これまでだってそうはならなかったじゃないか」

こんな状況が数週間も続いていました。ベンダーを使った市場調査からも、ありきたり情報しか出てきませんでした。

私は、仮説を立てようと提案しました。

結果的にその仮説が間違えていたとしても、そこでの議論は決して無駄にはならないと考えたからです。新商品で戦うなら、大切なのはタイミングです。

「X社はどう出ると思いますが? X社の戦略部門になったつもりで考えてください」

私の呼びかけに応えてA氏、B氏、C氏の3名はX社に関する手持ちの情報を改めて振り返り、ひとつの答えを導き出しました。

「X社は性能を2割向上し価格を据え置いた新商品を来年には市場投入するだろう」
「しかも、7割程度の価格の廉価版を、コスパを武器に市場投入する可能性が高い」

この仮説に立った場合、今の延長線上で商品開発するのはリスクが大きすぎると私たちは考えました。仮説に疑問を投げかける経営陣もいましたが、結果的には、まったく新しいコンセプトで勝負することで事業部の意見は一致しました。

翌年もその翌年も、X社が廉価版を世に出すことはありませんでした。しかし、業界4位のY社が価格破壊を進めたことで、市場は高級志向と価格志向に二極化されました。私たちの新コンセプトは若者の間で徐々に支持を広げ、他社の廉価版とは一線を隔す立ち位置を維持し続けました。


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