【感想】書籍『答え合わせ』と『漫才過剰考察』
12/5(木)にM-1グランプリ2024決勝進出者が発表され、今年も着々とお笑いファンに年の瀬が迫ってきた。
ところで、ここ2年はそれに合わせるかのように毎年11月にM-1に関する本が出版されている。
2022年は『笑い神 M-1、その純情と狂気』
2023年は『M-1はじめました。』
たまたま2冊ともnoteに感想を書いていました。
令和ロマンくるまが
と言っている中で本まで読まねばならないとは本当にお笑いファン受難の時代である。
しかも2024年は2冊も出版された。
1冊目はNON STYLE石田明の著書『答え合わせ』
ニッポン放送の『岡村隆史のオールナイトニッポン』および『ナインティナインのオールナイトニッポン』でM-1答え合わせと称した企画で漫才論を語ってきたノンスタ石田
最近ではABCの公式番組である『M-1ラジオ』の初回MCも務めている。
本書の立ち位置としてはナイツ塙が2019年に出した『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』に近いと思う。
これのノンスタ石田版みたいな。
もしくは、かもめんたる岩崎う大の『偽りなきコントの世界』のノンスタ石田版か。
これもnoteに感想書いてたw
2冊目は先ほど引用もした、M-1グランプリ2023王者の令和ロマンの髙比良くるまの著書『漫才過剰考察』
辰巳出版のWebマガジン『コレカラ』での連載を加筆・修正した一冊。
ただし、連載をまとめて書籍化といっても
とのことw
で、例によってこの2冊を並べて読んだらまぁ面白い!
(厳密にはここまでに挙げた他の4冊、特にナイツ塙の『言い訳』も合わせて読むとより一層面白い)
まずは両者とも偶然にも(むしろ必然?)漫才を分類するところから話が始まる。
しゃべくり漫才
漫才コント
コント漫才
システム漫才
共闘型漫才
コント漫才の文脈で2人とも和牛を絶賛しているのが興味深い。
ちなみに石田が「漫才コント」と「コント漫才」を明確に区別している一方で(私が見落としていなければ)くるまは少なくとも書籍内においてはその2つを厳密には区別していない。
しかし、くるまは2016年大会の最終決戦について書く中で
とコントのタイプを細分化している。
分類基準の違いといえば、M-1の歴史をどう区切るかにも両者のスタンスの違いが見えて面白かった。
石田は2010年以前と2015年以降のいわゆる新旧M-1で区切るオーソドックスな分け方。
ただし、ここに「(M-1が無かった期間に開催されていた)THE MANZAIがM-1を変えた」という視点を持ち込んでいるのが新鮮。
ともすると「THE MANZAIがイマイチだったからM-1が復活した」という文脈で歴史から軽視されがちなTHE MANZAIに新たな角度から光を当てている。
一方くるまは2015年のM-1再開時に荒削りな若手の大会から技術競争に切り替わったことは認めつつも、より本質的な変化は霜降り明星が優勝した2018年という説を提唱。
その詳細となる「あるある」と「ないない」の話も面白かった(ぜひ読んでお確かめを)
でも石田もくるまも「漫才の多様化」が新生M-1では加速しているという点で見解が一致しているのがまた凄いなと。
『漫才過剰考察』の寄席の章と『言い訳』や『答え合わせ』は漫才の技術論という点で非常に似通っている。
まぁ『答え合わせ』には石田がくるまにアドバイスした話も載っているので継承という意味では必然なのかもしれない。
しかしながら、やはり『漫才過剰考察』のハイライトはナイツ塙もノンスタ石田も完全には逃れられなかった東西でのお笑い分類に南と北を持ち込んだ部分だと思う。
正直なところくるまの提唱する説・論が本当に正しいのかは分からない(仮に令和ロマンがM-1を連覇してもそれとこれとは話が別)
ただ、緻密な分析だろうとトンデモ理論だろうとあそこまで突き詰めて組み立ててくれるとあれはあれでもはや一つのエンタメ。
お見事。
ぜひ本書を手に取ってその目で確かめてみてほしい。
個人的には円城塔のSF小説を読んでるときのような高揚感があったw
今年のM-1決勝は12/22(日)
塙や石田が「どうやって優勝するか?」を突き詰めていたのに対して、くるまは「どうやって最高の決勝にするか?」に最大の関心があるらしい(巻末の霜降り明星・粗品との対談でも明言)
その目標に向けて宣言通り前年度王者として今年も決勝の舞台に帰ってきた令和ロマン。
『漫才過剰考察』で述べていた未来予測は当たるのだろうか?
新たなM-1の見方を提供してもらった感覚。
あとは『答え合わせ』で共闘型の漫才師として繰り返し言及されていた真空ジェシカは4年連続ストレート決勝進出の偉業だし、トム・ブラウンやダイタクといったラストイヤー組については『漫才過剰考察』にこんな記述が。
いやはや今年の決勝も楽しみ。