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【感想】劇場長編アニメ『グリッドマン ユニバース』
グリッドマン ユニバース:SSSS.GRIDMANとSSSS.DYNAZENONのクロスオーバー映画。アニメ制作はスタジオTRIGGER。押井守や今敏にオマージュ捧げつつも特撮アニメとしてファンサービス全開。原作世代なのでもうずっと最高だった。あの人の特別出演には5歳だった自分が35歳になった年月を感じて涙。
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) March 25, 2023
円谷プロ創立30周年記念作品として1993年4月から翌94年1月まで放送された特撮テレビシリーズ『電光超人グリッドマン』
僕はこの放送をリアルタイムで観ており(放送開始当時は5歳で、オープニング曲の「BABY DON DON」という歌詞を「ぐりっどまん!でんびどんどん♪」と歌っていたと母の証言)30年経った今でも本シリーズに対しては感情・主観でしか語れないことはご容赦頂きたいw
コンピュータの中にある異世界(インターネットのようなもの?作中にもネットワークの概念は登場)でヒーローが怪獣と戦うというのがストーリーの概要。
今これだけ聞くと「いわゆるサイバーパンクに特撮を合わせたみたいな?」となるが、当時の日本のパソコン普及率はわずか10%程度。
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ちなみにYahoo! JAPANのサービス開始が1996年4月で、Internet ExplorerはWindows 95に同梱なので95年11月が初登場。
海の向こうのアメリカでYahooが設立されたのが94年1月。
Googleの設立は98年9月。
93年のAppleは業績がかなり苦しい頃でジョブズが復帰するのは97年。
Amazonのサービス開始が95年7月。
Facebook(現Meta)はまだ影も形もない。
93年4月とはそういう時代であった。
SF作品の歴史で見ても、押井守による劇場長編アニメ『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が95年11月。
ちなみに士郎正宗の原作漫画は89年が初出。
そこに多大な影響を与えたとされるウィリアム・ギブスン著の小説『ニューロマンサー』は84年。
つまり小説や漫画ではインターネット(のようなもの)を扱った作品は出てきていたが、映像作品、それも邦画に限ればほぼ皆無という時代だったと思う。
ましてや毎週土曜日の夕方に地上波テレビで放送される番組なら尚更。
そんなわけで(?)子供たちの心は掴んだものの、歴史上は「早すぎた名作」という褒めてるのかイジってるのかよく分からない評価が定着している『電光超人グリッドマン』
放送終了後も漫画連載という形でメディアミックス展開は行なわれたが、放送時ほどには盛り上がらず続編も実現しなかった。
ところが25年経った2018年に突如『SSSS.GRIDMAN』というアニメになって帰ってくるのだから人生何が起きるか分からない。
まさか幼稚園のときリアルタイムで毎週見ていたグリッドマンが三十代になったらアニメで帰ってきてくれるとは。この作品は客観的には評価できないな。ただ一言、最高だよ! #SSSS_GRIDMAN
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) October 7, 2018
SSSS.GRIDMAN(12/22):伝説の特撮ドラマ『グリッドマン』のアニメ版も遂に最終回。当時は斬新だった世界観も今は時代が追い付いた。メタ的に怪獣を扱う脚本や唐突に風景が挿入される独特なカット割など語りたい点は多々あるのだが、あの演出でもう泣いてしまい全て吹き飛んだwただ一言、ありがとう!
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) December 23, 2018
さらに3年後にはユニバース構想を見据えた『SSSS.DYNAZENON』がスタート。
SSSS.DYNAZENON(4/2):円谷プロ×スタジオTRIGGERによる新作アニメ。昨日放送の第1話がAmazonプライムで見逃し配信中。どうやら同じ座組みだった『SSSS.GRIDMAN』に続くユニバース構想の第2弾作品らしい。今回は怪獣vs.巨大ロボットという潔い構図の特撮SFアニメになるのかな? https://t.co/UUyEvm6nl0
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) April 3, 2021
そして満を持して両作品がクロスオーバーしたのが今作『グリッドマン ユニバース』
まず、大前提として本作は単体の映画としては正直やや破綻気味というかファン向けに振り切った内容になっている。
よって本作だけ観て楽しめるか?は個人的には微妙かなと思う。
原作の『電光超人グリッドマン』は物語には直接的には絡んでこないが、少なくとも『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』は観ておいた方が良い。
どうしても時間が無いなら(そこまで無理して観なくていいと思うけどw)GRIDMANの方がより必須かなぁ。
一応GRIDMANの世界にDYNAZENONの面々がゲスト出演的な構造ではあるので。
物語の始まりは学園祭の準備期間。
この「学園祭の準備をしていたはずが世界が何やらおかしなことになる」という導入で押井守の出世作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を想起w
一応ここでクラス演劇の台本という形で『SSSS.GRIDMAN』のあらすじが説明される。
単にナレーションベースの退屈な説明シーンにしなかった点は好感。
とはいえかなり省略されてたけどw
ちなみに『SSSS.DYNAZENON』のあらすじ説明は自らツッコミを入れていたように簡素化しすぎギャグで処理w
ここからMCUやアカデミー賞の追い風も受けながら内海の「最近のシリーズでは常識」というメタ台詞(正確な文言は失念)も挟んでのマルチバース設定。
ただ、この設定がまた曲者w
グリッドマンが生み出した無数の宇宙があり、それが重なり合って干渉してるらしいのだが、そもそもこの劇中世界は新条アカネが創ったわけで…とか考え出すと分かったような分からないようなw
宇宙がグリッドマンの形に収束してるってのはどういうこっちゃ!?
ただ、僕はこれでいいと思う。
これでこそグリッドマンだ。
だって93年当時5歳の自分も「ねっとわーく?こんぴゅーたーういるす?」みたいな状態だったはずだから。
それでも前衛的な設定を吹き飛ばす熱量があの作品にはあった。
それを感じられれば十分どころかお釣りが来る。
あと、タイトルが「これまでのシリーズをユニバース展開しますよ〜」という作品外の話かと思わせて本当にグリッドマンと宇宙の話だったという意表の突き方はお見事。
世界の違和感に裕太が気付くシーンで廊下がグニャグニャになるのは今敏監督の『パプリカ』っぽかった。
クリストファー・ノーランの『インセプション』にも似たカットがあった名シーン。
このマルチバース設定を使って全キャラクターを一箇所に集めるというファン感涙の展開。
もうアガるしかないw
クライマックスに向かうに連れて参戦メンバーがどんどん増えて合体もしまくっていよいよ何が何だかわからない過剰な足し算作劇になるのだけど、もうね、それでいいんですよw
だってカッコいいじゃないですかw
公式サイト掲載のコメントで俳優の濱田龍臣が言っていることが死ぬほど的を射ている。
一人前のラーメンを頼んだら大盛りになってトッピング全部乗せになってチャーハンと餃子10個が付いてきた!というくらいボリュ一ム満点の映画でした!
ちなみに彼は『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』の演技も素晴らしかったです。
ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー:前作がスマッシュヒットを飛ばしたアクション映画の続編。監督・脚本は坂元裕二…ではなく阪元裕吾が続投。ギャグ多めのユルい会話劇(作品の世界観には合ってる)からのアクションの緩急!w銀行は空間的制約が面白かったし、クライマックスの格闘はただただ圧巻。
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) March 25, 2023
最も泣けたのはバイク乗り青年の一言。
ギリちょんセーフだね。
30年という年月の流れを感じました。
どう聴いてもプロ声優の中で彼だけ棒読みなのがまた良いんですよ。
「あぁ…そうだよね。でもありがとう」って。
特撮アニメとでも呼ぶべき独特の映像も本作のアニメ制作を手がけたスタジオTRIGGERの作風と合致している。
特に『プロメア』で顕著だったが、見得を切る歌舞伎のようなカット構図と台詞回し。
変身・合体した姿をバチっと止めて映したり必殺技の名前を叫びながら攻撃する特撮のノリと非常にマッチ。
『POP LIFE: The Podcast』で豊田圭美が「トリガー節」と呼んでいる作風。
19分30秒頃から。
最後に、本作が描いたテーマについて。
人間は虚構を信じることが出来る唯一の生き物。
非常に印象的な台詞。
ストーリー上はそもそも『SSSS.GRIDMAN』の劇中世界は新条アカネが創り出したものだという設定を受けてこの台詞が登場するわけだが、自分は奇しくも今のインターネットをキャプチャーした台詞だと思った。
フェイクニュースと陰謀論
メタバース
ChatGPT
ポジティブなものからネガティブなものまで現在のネット上には虚構が溢れている。
フィクションとしての虚構を信じて楽しめるのが人間であるのと同時に、様々な虚構に騙されてしまうのもまた人間。
インターネットが普及する前に放送された“早すぎた名作”が、30年経ってポストトゥルースという言葉すらもはや新語ではなくなりWeb3なんて言葉がバズワード化してる時代に文字通りアップデートされて帰ってきたという事実に感無量である。