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【論文メモ26】上司に対する支援が部下にも伝わり業績にも影響する(上司のPOSの影響)

 論文のタイトルが、いいなあと思う。
上司だって心の支えが必要である。それが、上司のサポーティブな気持ちになってその流れがどんどん広がっていく。良い組織の条件のような気がする。


取り上げる論文

タイトル :When Supervisors Feel Supported: Relationships With Subordinates’ Perceived Supervisor Support, Perceived Organizational Support, and Performance
 (上司が支援を感じたとき:部下の上司支援認知、組織支援認知、そして業績との関係)

著者名: Linda Rhoades Shanock & Robert Eisenberger
ジャーナル:Journal of Applied Psychology, 91(3), 689–695
発行年:2006年

概要

本研究では、上司が感じる組織支援認知(POS)と部下が感じる上司支援認知(PSS)、組織支援認知(POS)、および業績(職務内業績と職務外業績)との関係を調査した。POSの高い上司は部下に対して支援的な行動をとる傾向があり、その結果、部下のPSSが向上する。さらに、PSSは部下のPOS、職務内業績、職務外業績に正の影響を及ぼすことが確認された。これらの結果は、上司が感じる組織からの支援が部下に伝播し、最終的に部下の業績に貢献することを示唆している。

関連する理論・概念

・組織支援認知 (POS): 組織が従業員の貢献を評価し幸福を気遣う程度の認識
・上司支援認知 (PSS): 部下が上司の支援的行動をどの程度感じているか
・社会的交換理論: 従業員と組織の相互支援的関係を説明する理論

POS、PSS関連の論文では、以前に以下の論文を取り上げたことがある。

変数

(a) 説明変数: 上司の組織支援認知 (POS)
(b) 調整変数: 上司の支援的行動
(c) 媒介変数: 部下の上司支援認知 (PSS)
(d) 成果変数:   部下の組織支援認知 (POS)、部下の職務内業績、部下の職務外業績

方法 

・サンプル
  アメリカ北東部の大手家電販売チェーンの従業員248名とその上司71名を対象
データ収集:
  部下はPOSおよびPSSを測定するアンケートを、上司は部下の業績を評価するアンケートを記入
測定ツール:
  POSとPSSは7点リッカート尺度で測定。業績は職務内(4項目)および職務外(7項目)で評価

わかったこと

主要な結果
上司のPOSは、部下のPSSを介して間接的に部下のPOS、職務内業績、および職務外業績に影響を与える。
・上司が感じる組織の支援が、階層的に下位へと伝播し、部下の業績向上につながることを示唆。
組織支援理論の拡張
・組織支援理論(POS理論)は、従業員の努力や組織貢献に対する動機付けを説明してきたが、本研究はその範囲を拡張し、上司の支援行動が部下に与える影響を強調。
・POS理論に基づき、上司が組織の支援を感じることで、「部下への支援的行動」を通じてその感謝を表すという新たな行動メカニズムを提示。
実務的意義
・組織は、上司が組織の支援を感じられるような環境を整えることで、結果的に部下の業績向上を促進できる可能性がある。
具体例: 上司に対して研修や昇進の機会を提供し、自律性や発言権を高める施策が挙げられる。
トリクルダウン効果
・本研究は、トリクルダウンモデル(上司の経験が部下に影響する階層的効果)の観点を補強している。
・Masterson (2001)やTepper & Taylor (2003)の研究と一致し、上司が組織から公平で支援的な扱いを受けた場合、それを部下への支援的行動として表現することが示された。

感想

 ほぼ感想を冒頭に書いてしまったが、このようなトリクルダウンの仕組みを調べてみようと思った着眼点がすごいなあと思う。
 上司だって支援が必要。それが部下への支援を通じて業績向上にもつながる。科学的に示されたというのが素晴らしい。
 
 

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